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隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される  作者: 永久保セツナ


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第11話 若社長とデートの約束!

 前回までのあらすじ。

 社員旅行に社長がついてきた。

 社長はヘヴィーなメタルが好きだった。

 あと女子社員をフッた。


「カードゲーム、あんなにいた女子が来なくなりましたね……」


 喫煙室の常連だった男性社員が寂しそうに独りごちた。

 会議室には男性社員数人と、私と、社長だけ。あんなににぎやかだった会議室はがらんとしている。


「わたくしの歌に引かれたんでしょうね……」


 社長はあの社員旅行から、女子社員に囲まれることがなくなった。

 一応挨拶とか、お土産を持ってきたときに軽く世間話をするくらいはあるが、ガチ恋勢はたしかに少なくなったように感じる。

 多分歌だけじゃなくて、女子社員をフッたあの件もあるんだろうな、と私は思った。

 社長が「こずえさんしか愛せない」「こずえさんに手荒な真似をしたらわたくしが許さない」と発言したことは大きな影響を与えたように思う。

 噂は真実として伝わり、私たちは会社公認のカップルとなっていた。


「まあ、結局は出会い目的でカードゲームをしていた、ということなのでしょう」


 社長は悲しそうに言った。そういえば、喫煙室でカードゲームをしていたときも、「出会い目的でのカードゲームは見過ごせない」と言っていた気がする。

 なんだか、女子社員たちにカードゲームを教えた私が申し訳なくなってしまう。


「しっかし、まさか能登原さんがマジで社長の彼女になってしまうとは……」


 男性社員は未だに信じられないといった様子で言う。


「まあ、喫煙室に連れてきたときから仲いいなとは思ってたけどな」


 別の男性社員がそう返す。


「社長、どうします? 会議室使う意味なくなりましたし、また喫煙室に戻ります?」


「いえ、こずえさんに副流煙を吸わせるのはちょっと」


「ハハッ、大事にされてるなあ、能登原さん」


「か、からかわないでください……」


 男性社員に茶化されて、私は頬を染める。


「そうだ、こないだ言ってたレアカード、見せてよ。たしか『悪魔の証明』と『神殺しのニーチェ』引いたんでしょ?」


「うっそ、マジすか!? ホント能登原さん持ってるなあ」


 男性社員がそう言いながら自らの腕を叩く。「持ってるなあ」というのは強運を持っているという意味だ。

 実際私も運がいいほうだと思う。今、『マジック&サマナーズ』では無料で毎日10枚ずつカードパックが引けるキャンペーンをやっているのだが、結構レアカードが引けた。無課金でも課金勢に対抗できる手札が増えたのは純粋に嬉しい。


「えっ、『神殺しのニーチェ』なんてわたくしも持っていませんよ? ちょっと見せていただいても?」


「あ、はい」


『マジック&サマナーズ』にけっこうな大金をつぎこんでいると噂の社長が持ってないカードがあるなんて意外だ。まあカードパックは現実のカードと同じで運次第なところはある。スマホ版は現物と違ってネットオークションで買えたりはしないし。


「能登原さん、神の指でも持ってるんじゃないの?」


「あ、じゃあ今度からカードパック引く時、能登原さんにスマホタップしてもらおうかな」


「それで外れても文句言わないでくださいよ?」


 もうこのくらいの付き合いになると、私もだいぶ慣れてきて、男性社員に冗談めいたことも言えるようになってきた。


「じゃあそろそろ昼休みも終わるし、解散しますか~」


「お疲れ様でした、また明日」


「能登原さん、明日は日曜日だから会社来ちゃダメだよ」


「あ、そうでした」


 男性社員はハハハと笑いながら去っていった。

 社長と私は並んで廊下を歩く。昼休みを終えると社長が私を総務部まで送ってくれるのはもはや日課となっていた。


「こずえさん、明日はご予定ありますか?」


「社長、会社では名字で呼んでください」


「もういい加減いいと思うんですけどねえ……」


 わたくしたちの仲はもう公認でしょう? と社長が笑う。


「仕事とプライベートの線引きはきっちりしておきたいので」


「わかりました。能登原さん、明日はご予定ありますか?」


 社長は名字で私を呼んで、同じ質問を繰り返す。


「予定……はないですね」


 家でプラモを作ろうと思っていたが、予定ではないな、うん。


「お花見デートとか、いかがでしょうか」


 お花見デート。デート。デートかあ……。

 いかにも恋人っぽい単語を脳内で反復する。


「プライベートでは外に出たがらない社長が珍しいですね」


「ええ、本当は能登原さんを家の中で独占したいのですが、いかんせんわたくしの家の庭に桜はないもので」


 ど、独占って……。

 社長はときどき恥ずかしいことを平気で口にする。


「それに、たまにはふたりで散歩などするのもいいかな、と思いまして。……いかが、でしょうか?」


 社長は小首をかしげて私を見る。

 まあ、断る理由はない。桜は私も見たいと思っていた。それにしても桜は何故あんなにも日本人を惹きつけてやまないのだろうか。


「お弁当、作りますか?」


「作ってくださるんですか?」


 社長がぱあっと目を輝かせる。くっ……可愛い……。

 社長と付き合う前はひたすらかっこいい王子様キャラだと思っていたが、付き合うようになってからはだんだん可愛い側面も見えるようになってきた。


「では、場所と日時はのちほどLIMEでお伝えします。当日お迎えに上がりますね」


 ちょうど総務部の部屋に着いて、社長はそう言い残して去った。

 お弁当かあ、何作ればいいんだろう。やっぱり唐揚げとか卵焼きとかが定番かな。

 最近の私はわりと心身ともに調子が良くて、書類作成もスムーズに進む。

 キーボードを叩きながら、お弁当の献立を考えるのはとても楽しい時間だった。

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