少年と古の魔術師
魔術は、
すべてを叶える力ではない。
だからこそ、
人は禁忌へ手を伸ばす。
失ったものを、
もう一度取り戻したい。
その願いは、
時として世界の理さえ揺るがしてしまう。
ちょっと待て。ページを退屈だと思ってめくろうとする前に、ちょっと劇的な間を置いてやる。これから目にすることは、今この瞬間に起きているわけじゃない。そう、違う。お前の限られた人間的な理解力が、この哀れな物語の時系列で混乱しないよう、時間を遡ることにしよう。ちょうど十ヶ月前だ。そう、盤面の絵すらまだ乾いていなかった頃。忠告してやったんだから感謝しろね。観客が僕の輝かしい導入から目を離すのは好きじゃないんだ。
さあ、僕を見ろ。
ここにいたんだよ、僕、龍牙・ドラゴンズベインが。陳腐さの臭いが漂う四つの壁に閉じ込められて。
大きな一族の後継者たちが先祖代々の邸宅を闊歩したり、アカデミー・エンディミオンで自尊心を満たしていたりする中、お前の前にいる僕は、人間社会のど真ん中に隠れて生きるしかなかった。窓からの眺めは美しい魔力の植物園なんかじゃなく、騒がしい通りで、蟻のように職場へと歩いていく平凡な車と人間たちの群れ。なかなかの美的センスだろ?
机の上には普通の人間の進学校の宿題の山が積み重なっていた。初等代数、現代史……凡庸な頭脳のために設計された、馬鹿げた課題ばかり。勉強が嫌いなわけじゃない。むしろ逆だ。同い年の大半より多くの本を読んできた。でも、あんな本じゃない。方程式や歴史上の年代や細胞の構造について書かれたものじゃない。そんなの、何の役にも立たないさ。
本当に重要な本は、ベッドの下の木の箱の中に隠してあった。母さんの知らない箱に。魔術陣と召喚のルーン、秘術的な署名と接続パターン、未知のものを探すために虚空を抜ける道をどう描くかについて書かれた本たちが。
母さんはまともな学生だと思っていた。学校に行って、宿題をして、いつか普通の仕事を人間社会で手にいれるんだろう、って。もしかすると、どこかの時点でそう信じていたのかもしれない。でも、それは父さんが死ぬ前の話だ。
父さんは人間だった。完全に、絶対的に人間だった。魔力なんて一滴も流れていなかった。母さんはマジクス・テラだった。出会い方は最後まで全部話してくれなかったけど、二人は恋に落ちて、世俗と奇跡が混ざり合った結果が僕だ。
父さんが死んだとき、何かが僕の中で砕けた。喪失だけじゃない。試みなかったことへの確信だった。方法さえ知っていれば、できたかもしれないことへの確信。
魔術師は生き物を召喚できる。他の次元の精霊や、遠い地の獣、時には別の時代の存在すら呼び出せる。魔導書に書いてあった。召喚魔術とは目的地までの地図を描くことだ。何かが、あるいは誰かがその道を通ってこちら側へ来られるように、通路を開けること。生きている存在へと道を描けるなら……もう存在しない誰かへの道も、描けないはずがないだろ?
ロジックはシンプルだった。あまりにもシンプルすぎて、かえって怪しいくらい。でも、大海原に浮かぶ板に縋る漂流者みたいに、頭の中がその考えに食らいついて離れなかった。召喚が術式の署名を追跡できるなら、すでに存在している何かと繋がれるなら……父さんにも署名があるはずだ。魔術的じゃないかもしれない、たぶん魂のこだまに過ぎないかもしれない。でも、どこかにあるはずだ。魔力の普遍的な流れの中に、星々の間の虚空に、生きている者には見えなくても、死者がまだ見つけられるどこかに。
その考えが、僕の執念になった。そして執念というのは、描き損じた魔術陣みたいに、必ず予想外の何かで終わるんだ。
「……なんて時間の無駄だ」
とため息交じりに吐き出し、ボールペンを壁めがけて投げた。
「一次方程式を解くために僕の知性を費やすとでも思ってるのかね。外では本物の魔術が待ってるのに。ふん……なんて無邪気な勘違いだろうね」
目的はエンディミオンだった。この数年間、オカルトの本や海賊版の魔導書、歴史記録を貪るように読み漁ってきた。魔力を磨くために。魔術師になりたかった、あの忌々しいアカデミーが目にしたことのない最高の魔術師に。ただ当然ながら、大切な母さんには別の計画があった。というより、恐怖心があり過ぎた。
母さんは、僕のアカデミーへの願望を、学術当局の目から必死に覆い隠してきた。入学時期が近づくたびに、魔術社会の網をかいくぐるための新しい口実を作り出した。全部、言うまでもなく、血の中に引きずるあの名前のせいだ。栄光の、そして忌まわしきドラゴンズベインの一族。
アシュフォードやウィンターフォールみたいに胸を張って歩ける一族と違い、うちの一族は永遠の仮釈放中だ。翼を切られ、特権を剥奪されて。全部、年長者たちが公式記録から抹消したがっている、ずっと昔の「ちょっとした事件」のせいで。
七人の魔術師。ドラゴンズベインの一族の、七人のおかしな天才が星の整列の夜に集まった。他のどの王朝でも、そんな集まりなら記念すべき科学的な前進に終わったはずだ……でもうちのは、古い人間の伝説で実験するのが素晴らしいアイデアだと思ったんだ。結果は? 壮大な守護竜を召喚したわけじゃない。違う。七体の邪悪な竜を顕現させた。人類が作り上げた最も暗い神話から生まれた、黙示録的な獣どもを。当時の都市は灰と血に帰した。公式の歴史では、連合一族の魔術師たちが英雄的な戦いの末に七体の獣を封印したとされている。でもね、行間を読めばすぐに嘘だとわかるさ。一族の内部の噂——母さんが僕が眠っていると思って恐怖に震えながら囁いていたやつ——では、魔術師たちはあの戦争に勝つ力など持っていなかった、と言っている。未知の力が、名もなき異常が、最後の瞬間に介入して七体の邪悪な竜を薙ぎ払い、魔術社会全体を救ったというんだ。でも罪は誰かが被らないといけない。ドラゴンズベインの一族には息苦しい監視が課せられた。召喚者は全員管理下に置かれ、精霊との契約は委員会の承認が必要になり、活動は最低限に制限された。潜在的な犯罪者として、影の中から見張られてきた。
とはいえ、一族の専門性だけは剥奪されなかった。召喚魔術。僕にははっきりとあった。天才的な意図が……それとも狂気か。
「召喚魔術の仕組みは純粋な幾何学的前提に基づいている」
と椅子から立ち上がって部屋の中を歩きながら思考を声に出した。ジェスチャーをしながら、頭の中を整理するために。
「次元を超えた概念的な地図を描き、精霊的な署名を基にして目標を特定し、こちらの次元へ連れてくるための通路を開く。理論さえ完璧なら……精霊や悪魔や元素獣を呼ぶことに限定する理由はどこにある? 死の境界を越えて正確に道を描ければ……死んだ誰かを連れ戻せるはずだろ? 蘇生のための正しい儀式を設計して、魂をその器に引き戻しさえすれば」
その考えが、僕の執念になった。ドラゴンズベインの古い書物の中の、あらゆる隠された本や古文書のかけらを探した。同じ美的な大胆さを持つ誰かの記録を見つけようとして。でも、何もなかった。一言も、かつて召喚術を逆行的な降霊術の橋として使おうと試みた魔術師のページの注釈ひとつも。誰も僕みたいには考えていなかった。自分の理論の中で、完全に孤独だった。
「科学者と学者を名乗っておいて?」
と苦々しく冷笑しながら、自分の手をまじまじと見つめた。
「過去の幽霊にそんなに怯えてて、目の前の白いキャンバスすら見えないんだ。誰も試みた記録がないなら……最初になるのは僕だ。その地図を描くのは僕だ」
魔術師の世界では、監視下に置かれた呪われた一族の龍牙だ。人間の世界では、同い年の連中を魔力の色すら想像できない頭で見下ろす無気力な変わり者だ。父さんの社会には属せない。でも母さんは、血も属している社会から僕を隠している。このくだらない盤面で、僕はいったい何者のつもりだ? 欠陥品の人間か、それとも不完全な魔術師か?
鏡を見るたびに、人間が見えない。未完成のデッサンが見えた。舞台劇の中で役の決まっていないキャラクターが。そのアイデンティティの欠如、自分の存在すら知らない世界から見捨てられた感覚が、僕を不安定にさせた。現実のルールを破りたくなった。ただ、自分の条件を自分で決めると証明するために。
「この世界に僕のために設計された場所がないなら……」
と歯を食いしばって呟きながら、指先で魔力の火花が踊り、宿題の角を焦がした。
「自分でエンディミオンに乗り込む。父さんを取り戻し、禁忌の召喚術を完成させ、あのクソ偽善的な一族どもに龍牙の名前を見せてやる。管理された犯罪者としてじゃなく……生と死の法則を書き直した創造者として」
制服を払い、窓の外を眺めた。人間の街の上に夜が落ちてきていた。
「準備しろよ、アカデミー・エンディミオン。このくだらない茶番の最後の役者が、ようやく舞台を取りに来る。お前の退屈な台本の端役でいる気はない」
変化が欲しかった。人間の歴史の授業や代数の試験なんかを気にするふりに、もう骨の髄まで嫌気が差していた。本当に知性を試されることがしたかった。だから手の届く魔術書、盗み出したメモ書き、魔導書を全部机に引っ張り出した。手法を磨く。頭の中が言う通りに機能する、召喚儀式のための僕自身の手法を。
午後中、創造的なトランスに沈んで、ノートに魔術陣の変形をいくつも設計し、描き直した。線を描いて、ノードを消して、魔力の角度を計算した……。ようやく紙から顔を上げて、苛立たしそうに目をこすったとき、太陽はすでに沈んでいた。夜が訪れ、母さんが仕事から帰ってくるまで時間がなくなっていた。
「……ちっ、邪魔だな」
と呟きながら、魔導書をマットレスの下に急いで押し込み、鉛筆を隠した。これを見たら、また「目立たないようにしろ」っていうあの哀れなドラマを始めるし。痕跡を残さないよう机を片付け、夕食を作りに台所に下りた。また栄光なき一日。でも今日は少なくとも、ついに違う色で描き始めた。
それから少し後、玄関のドアが開いた。母さんが肩を落としてひきずるように入ってきた。あの憎らしい疲れ果てた目をして。魔術師のくせに、血の中に魔力を持つくせに、社会と恐怖が彼女を、死にそうな顔で帰ってくるただの人間の会社員に成り果てさせていた。廊下から眺めた。一秒、一秒だけ、近づいて、この馬鹿げた距離を壊して、感じていること、探していることを話したい気持ちがあった……でも。二人の間の虚空はあまりにも広かった。
「もう寝る」と素っ気なく言って、顔の苛立ちに気づかれる前に背を向けた。返事を待たずに階段を上った。
翌朝、目覚まし時計が処刑の警報みたいに鳴った。つまらない進学校の制服に着替えた。母さんはいつも通りに目が覚める前に仕事へ出ていて、冷めた朝食をテーブルに残していた。家を出て、三ブロック歩き、学校への道と別の道を分ける角に着いたとき、立ち止まった。手の中の鞄を見た。人間の先生が平凡なことを喋るのを座って聞くという考えに、深い嫌悪感が湧いた。
「……もうどうでもいいや」
と吐き出し、鞄を地面に軽蔑たっぷりに放り投げた。踵を返して部屋に戻った。鍵を掛けて、魔術書、魔導書、ノートを全部床に広げた。今日は授業なし。今日は本物の学問に費やす。
鉛筆が紙の上を滑り始め、同心円を描く中で、召喚魔術が何かを分かっていると思い込んでいる馬鹿どもに笑いをこらえられなかった。
普通の人間やアカデミーの凡庸な魔術師たちは、この分野についてひどく歪んだ考えを持っている。これは技術的な芸術だ。高難度と分類された、魔術師の高等技術。ロマンチックな馬鹿の通説とは逆に、召喚者は新しい命を生み出しない。魔術には完全に新しい魂や意識的な存在を生み出す力は一度もなかった。
一度も! 術式がするのは、特定することと、繋げることと、運ぶことと、顕現させること、それだけだ。だから最低限の教養を持つ召喚者なら、「精霊を創り出した」というのは誤りだと知っている。美学的に正確な表現は「呼んだ」だ。召喚術とは根本的に、魔力の流れを通じた空間的・精霊的な接続の術式なのだから。
ノートに召喚術の種類を書き出しながら、壊したい世界のルールに使えるものを評価していった――
精霊召喚は最もありふれた退屈なやつだ。小精霊、魂、守護者、使い魔を呼ぶ。ただの魔術的な小道具。
獣召喚は野生の生き物や魔法的な種族を呼ぶ。自分の個性を保っていて、自動的には従わない。懐柔するか、怯えさせるかする魔力の流れが必要だ。
契約召喚は最も安定した形式で、双方が利益と義務を受け取る魔術的な契約を結ぶ。純粋な双方向取引だ。
時間召喚は術式が続く間だけ存在が現れる。魔術師の魔力が尽きれば、接続は煙のように消えていく。
物質召喚は最も稀で最も費用のかかるやつ。正確な別の場所から物体や生き物を物理的に持ってくること。実際の物理空間を歪めるから工業規模の量のエネルギーを消費する。
「基本的な術式は五段階の直線的な手順に従う」
と独り言を言いながら、円の外縁の線を描いた。術式の署名によって目標を識別する「特定」。エネルギーをその署名に合わせる「同期化」、魔力を持つものだけを召喚するわけじゃなくて存在を同期させる必要がある。空間的・時間的な導管を生成する「開口」。身体的または精霊的な一時的な体を再構築する「顕現」。そして継続的な流れを維持する「安定化」。流れが切れたら、召喚の電源が落ちる。
鉛筆を空中に投げ上げてキャッチし、設計を見つめた。この魔術の制限は絶対的で、宇宙の法則によって石に刻まれていた――魂を生み出せない。死者を蘇生させられない。記憶を顕現させられる、過去のこだまを顕現させられる……でも本当の意味で誰かに命を吹き返すことはできない。
その規則に目標が反すると分かってた。父さんが平凡な人間で、死んで、その存在が消えたと分かってた。本が不可能だと言っている、分かってた。でも頭が、このいんちき学者たちの限界を受け入れることを拒んでいた。
普通の生物学的な蘇生を求めているわけじゃなかったら? 召喚魔術が特定して顕現させるなら……虚空に散らばった魂の欠片、その本質と記憶を特定して完璧な一時的な器に顕現させる術式を設計するのを、何が妨げる? 術式は存在する。ただエンディミオンの四角い頭の連中が、正しい線を探す勇気がないだけで。
もちろんコストは膨大だろう。強力な召喚術は魂を枯渇させる。魔術の鳥を呼ぶのと竜を呼ぶのは同じじゃない。それに生き物は自分の意志を保っている。契約や紋様が弱ければ、存在は単純に命令を無視するか、喰い殺す。
だから従来の魔術陣は馬鹿げた複雑さで、同心円の層が重なっているんだ。識別、接続、安定化、帰還、防護のルーンが。怯えた魔術師を守る幾何学的な牢獄だ。専門家たちは死なないために動物学や契約や精霊の行動を長年研究する。だから今日、召喚術は停滞した分野だ。大半の魔術師は荷物を運ぶだけの使い魔の召喚を超えない。
「でも、僕、多数派じゃない」と苦い笑みを浮かべながら。
アカデミーの退屈な目録に登録された術式の署名は使わない。忘れ去られた王冠の宝石を使う。
紋様システムによる儀式召喚魔術。全分野の中で最も古く、複雑で、禁じられた技だ。マジクスの故郷の星が滅んだ後、この知識のほとんどは失われた。エンディミオンでは特別な許可なしに教えることが厳しく禁止されている。
消滅した科学だと見なされている。現代の魔術師には探索のための識別子が必要だが、古の師たちは術式の署名を暗記していなかった。
宇宙を読むことを学び、未知へと続く道を描いた。『天は名前を保持する。星は道を保持する。それを知る者は宇宙がすでに知っていることを描く』。なんと美学的な表現だろうか。
鍵は「紋様」と「中央の虚空」にある。ノートを見た。魔術陣の中心は完全に空白だった。ルーンも記号も文字もない。魔力の普遍的な流れである未知の空間、絶対的な虚空を表している。
その虚空の中に、線と曲線と幾何学的なノードの連続を手書きで描いていた。芸術的な絵ではなかった。次元間のベクトル的な方向性だった。線一本ごとに術式の軌道を変えた。交差点ごとに無限の中の探索を変えた。曲線ごとに虚空を越えた目的地を変えた。
古代の魔導書が述べていた「星の比喩」のようなものだ。宇宙には未知の術式の署名が無限にある、それぞれが永遠の夜の一つの星だ。紋様とは、僕の魔力で生み出した目に見えない線でその星を繋ぎ、求めている存在に向けた正確な道を形作ること。
一ミリでも変えれば、全く別の存在に繋がる。そして中心は毎回の直感から一から描かれなければならないため、同じ紋様は二度と使い回せない。各儀式は一度きりの芸術作品だ。
もちろん、高リスクの禁忌魔術に分類されているだけのことはある。軌道に誤りを犯せば、想像を超える何かを引き寄せる可能性がある。登録されたことのない署名が百万もある。
生き物に属するものかどうかさえ分からないものもある。意識的な悪夢かもしれないものも。
そして自分の力を上回る力を持つ敵対的な存在を召喚したら、魔術陣はその牢獄であることをやめ、部屋への全開の扉にだけなる。紋様の汚染も言うまでもない。あまりに強い何かと接触すれば、その署名が放射性の傷跡のように魔術陣に刻み込まれ、将来の試みがいつでも同じ存在に引きずり込まれる。
そして例の忌々しい「術式共鳴の法則」――
「紋様は召喚を保証しない。特定の術式の署名に繋がる可能性を高めるだけだ」とされている。
平たく言えば、二人の魔術師がまったく同じ幾何学的な紋様を描いても、違う結果を得るということだ。
召喚者の魔力、意図、親和性、精神状態も方向の座標として機能するから。術式はお前が何者かを栄養にする。
ベッドに背中を凭れさせ、ノートに描き終えた入り組んだ紋様を見つめた。無限の虚空の中を探していた。未知の光へ向かって、見当違いの道を描いていた。導いてくれるのは、何者であるかを教えてくれる何かを引っ張り出したいという絶望的な必要性だけだった。
「死の危険と学術的な禁止事項にあふれた白いキャンバス……」
と皮肉でお道化た笑いをこぼしながら、指を幾何学的な紋様の上で走らせた。
「完璧すぎる」
エンディミオンの法則なんてどうにでもなれ、宇宙のルールもどうにでもなれ。自分の存在自体が誰も説明できない誤りなら、禁じられた魔術を使って自分自身の答えを見つける。
糸を引いたとき、どの星が答えると決めるか見てやろう。断頭台の刃の上を歩くのと同じだと分かっていても、禁じられた魔術の糸で遊ぶことを止めなかった。危険こそが、無気力な存在に残った唯一の燃料だったから。
壁の時計を見た。正午。腹が恐ろしいほど平凡な音を立てた。だから台所へ引きずるように向かい、素早く何か作ることにした。料理をしながら、ただの雑音のためにテレビをつけた。人間の太陽の下に新しいことは何もない。経済危機、馬鹿げた犯罪、凡庸な政治家。灰色の羊の群れの最高の表現。
座って食べながら、スマホを置いて、一部の魔術師が最近開発した秘密の情報SNSを開いた。大半の一族にとってこのネットワークは忌まわしいものだ。人間への暴露リスクのため、七つの一族によって常に分析と検閲が行われているプロジェクトだ。でも僕にとっては、停滞した社会における唯一の進化の証だった。魔術師は悲しいほど時代遅れだ。現代技術のあらゆる効率を病的に分析するだけで、使い魔や徒歩や飛行で距離を移動する霊的な使者に依存し続けている。遅く、臆病で、硬直している。
画面を指でスライドしていたら、数日前のニュースに行き当たった。首の後ろに悪寒が走った。ほぼ同い年の男子が「黄金の鉄則」を破っていた。七人の賢者たちに即座に捕まり、裁かれた。判決は?
アカデミー・エンディミオンでの強制再教育と、その両親の完全な格下げ。
黄金の鉄則を破ることは、二つの世界の境界を直視することと同じだった。同じ物理空間に共存しながら、激しく反発し合う二つの現実。ニュースは興味深かった、確かに。でも計画とは無関係だ。画面を消して、部屋に戻った。魔術陣に戻らないといけない。紋様を解読しないといけない。
何時間も何時間も絶対的な幾何学的なトランスに沈んだ。消して、計算して、ノードを繋いだ。父さんの魂への道を設計することにそこまで集中していて、時間の感覚を失った。部屋の静寂が外の世界を遮断して……それが失敗だった。
階段の足音が聞こえなかった。母さんが仕事から早く帰ってきていたことに気づかなかった。
部屋のドアが勢いよく開いた。
固まった。
母さんが敷居に立っていた。恐慌と激怒で目を充血させて。腕で書類を覆う前に、床に広がった複雑な禁忌の図形が視界に入ってしまった。
「龍牙、これは何っ!?」
と声が震えた。恐怖で裂けそうな声だった。
「儀式召喚! 紋様神学! 正気なの? 閉じ込められる!」
「触るな!」
と叫んだが、遅かった。
母さんは歇斯底里的な恐慌に駆られて、ノートに飛びかかった。ページを拾い上げ、引き裂き始め、絶望的な激しさで何ヶ月もの理論的な研究を破壊していった。止めようとした、両手を掴もうとした。
声を震わせながら、近づいていると説明しようとした。父さんのため、二人のため、鎖を断ち切るためだと。でも聞こうとしなかった。七人の賢者への恐怖に完全に盲になっていた。
数分で、研究の全てが床に散らばった無用な紙吹雪になった。
ドアを叩きつけて出て行った後、紙の残骸の中に膝をついたまま動けなかった。家という唯一の安全だったはずの場所が、罰の舞台に変わっていた。アイデンティティも、知性も、唯一の目的も、粉砕された。何も制御できないという確信に、深い沈黙の中で凍りついた。
その夜、部屋の天井がコンクリートの板みたいに圧し掛かった。押し殺した泣き声をこぼしながら、胸に燃える鈍い怒りでシーツを握りしめた。もう一度試みたかった、でも恐怖が胃を縛り上げていた。部屋に閉じこもる前に、母さんが明日、専門家の魔術師を連れてきて「話し合い」をさせて魔力を「浄化する」と言ってた。どんな異端審問官を呼ぶのかは知らない。でも恐怖が全てを飲み込んだ。
さっきのニュースの中の自分の姿が見えた。七人の賢者に裁かれ、廃棄物として見られ、エンディミオンの独房に閉じ込められ、魔術と誇りを剥奪される姿が。捨てられることへの恐怖と絶対的な絶望が、理性を完全に消した。
これが最後になるなら、明日縛られに来るなら、黙って負けるつもりはない。今夜、全てを出す。
こっそり階段を下りて家の地下室に向かった。古い箱や埃をかぶった家具を動かし、コンクリートの床を清めた。盗んだチョークと震える手で、外周の円を描いた。ノートはなかったが、記憶が構造を保持していた。中央の虚空に紋様を描き始めた。概念的な「星」をカオティックに繋いでいった。純粋にアドレナリンと痛みに導かれながら。
縁に立ち、両手を伸ばして、魔力を解放した。声が薄暗い地下室に響いた。古い典礼的な術式を唱えながら:
「『天は名を抱く。
星は道を抱く。
道は記憶を抱く。
我は宇宙がすでに知るものを描く。
命じない。強いない。ただ道を示す……我が呼び声に応えよ』!」
魔力の一撃で最後の線を完成させた。
何も起きなかった。
地下室は薄闇のままだった。荒い息と汗が床に落ちる音だけが聞こえた。
怒りと挫折の壊滅的な衝撃が胸を打ちのめした。絶望の中で道をほぼ無作為に描いていた。自分でも何を探しているのかさえ分からないまま。ひざまずき、完全に砕けた。盲目的な怒りで泣きながら、拳でコンクリートを殴った。何かが起きてほしかった。哀れな存在の全ての繊維でそれを望んでいた……。
その瞬間、地下室が輝いた。
チョークの線から青白く冷たい閃光が噴き出した。目を細めながら後退した、光が目を焼くほど眩しくなったとき。温度が一気に下がった。息が水蒸気として凝縮し始め、大気の圧力が肺を凍らせた。
光が散ったとき、息が止まった。
虚空の中心に、背の高い男が顕現しつつあった。肩に落ちる長い銀色の髪がゴシック的な優雅さで揺れていた。その目の静けさと穏やかさは人間を越えたものを感じさせた。どの現代の本にも記録されていない太古の時代の装束を纏い、手には異様なほど長い杖を持っていた。
話そうとした、言葉を形にしようとした。でも喉が乾ききっていた。
男は視線を落として、永遠に感じられる沈黙の中で評価するように僕を見た。やがてその唇が動き、声が大聖堂のこだまのように響いた。
「――封印が破れ、閾が代償を要求する。虚空を越えて地図を描いたのは汝か、少年よ。汝の魔力は騒々しく、時が与える忍耐を欠いておる。語れ、召喚者よ……汝は我に何の目的地を踏み歩かせることを望む?」
地面に凍りついた。その言葉から滲み出る神聖な権威が、縮み込ませた。生まれて初めて、他の存在への本当の恐怖を経験した。
男は円を視線で辿り、涙と、震える手と、すり減ったチョークに気づいた。銀の目が再び冷え冷えとした冷たさで戻ってきた。
「――哀れなことよ」と不動の軽蔑で発音した。
その一言が頭でショートを起こした。恐怖が即座に揮発性の怒りに変わった。
哀れ、だと? 全てを犠牲にした後に?
震える脚で立ち上がり、絶望から声を上げた――
「上から見下ろすな! 連れてきたのは僕だ! お前の千年の頭ですら予見できなかった虚空に、道を描いたのは僕だ! お前が誰かは知らない、でも宇宙が僕の円に投げ込んだなら、仕えるためだ。力が必要だ、答えが必要だ! 誰かに棄てられるつもりはない! このくだらない台本を書き直すのを手伝え!」
男は静かに、うるさいが何となく面白い虫を見るように黙って見ていた。
「――興味深い。火を持っておる。しかし方向を失った火は触れるものを焼くのみ。汝は何をしたか分かっておるか、少年よ? 汝は誰を呼んだか知っておるか?」
「……知らない」
と認めた。恐怖が再び戻ってきた。
しばらく沈黙が続いた。やがてほとんど囁きのような声で言った。
「――我が名はグレインなり。閾の統治者。そして汝、小さき召喚者よ、開けるべきでなかった扉を開けたのだ」
その名前は何も意味しなかった。でも言った方法が、それが見せかけではない重厚さが、想像以上に深い問題の中にいると感じさせた。
何も聞き出す前に、背後で音がした。急いだ足音が階段を下りてきた。そして母さんの声が、尖く恐怖に満ちて。
「龍牙、離れて!」
振り返ると、母さんが地下室の敷居に立ち、杖を手にグレインに向けていた。顔は青白く、目が今まで見たことのない恐怖で輝いていた。
「――お前は誰だ?」
と叫んだ。声が震えていた。
「息子に何をした?」
グレインは答えなかった。同じ侮辱的な静けさで観察するだけだった、母さんの脅威が羽虫と同じくらい取るに足りないかのように。
「母さん、待って」
と言おうとしたが、聞いてもらえなかった。
魔術を放った。グレインに当たるはずの、後退させて守ってくれるはずの光の閃光を。
でも何も起きなかった。
魔術はグレインに触れる前に消えた、労力すら感じさせない見えないバリアに吸収されて。
母さんは固まった。杖をまだ伸ばしたまま、何が起きたか分からないで。
そしてグレインが動いた。歩くのが見えなかった。一瞬そこにいて、次の瞬間母さんの目の前に立ち、杖を振り上げ、打ち下ろそうとしていた。その動きに怒りはなかった。効率だけが。虫を潰すみたいに。
「グレイン、やめろ! 触るな!」と叫んだ。声が裂けた。
止まった。杖が母さんの顔の数センチで凍りついた。こちらを見た。初めて、驚きに近い何かが目に宿った。
「――汝はこの人間の女を庇うのか? 我を先に攻撃したのは彼女ぞ。同じ度合いで応じたに過ぎぬ」
「この人が母さんだ」
と言った。声はほとんど囁きだった。
「お願い……傷つけないで」
グレインは少しの間観察した。それからほとんど気づかない動きで杖を下ろし、一歩引いた。
「――汝の望み通りに」
母さんは地面に倒れた、気を失って。駆け寄り、横に跪いて、息をしているか確かめた。生きていた。ただ気を失っているだけだった。
視線を上げると、グレインはまだそこにいて、あの苛立たしい静けさで観察していた。
「意識を失わせた」
と言った。声が怒りと恐怖で震えた。
「――生きておる」
と、それで十分だと示唆するような口調で答えた。
「そして生かし続けたいなら、注意深く耳を傾けよ」
立ち上がり、向き合った。脚が震えていたが、弱さを見せるつもりはなかった。もう二度と。
「何が望みだ?」
「――汝がしたことを理解させることよ。現代の人間がそれが存在することすら知らぬ世界の間の空間、閾を越えて地図を描いた。開けるべきでなかった扉を開けた。そして今、我はここにおる。召喚された」
「お前を呼んだわけじゃない」
と言った。否定はほとんど自動的だった。
「お前を探していたわけじゃない。探していたのは……」
「――誰を?」
とグレインが聞いた。声に好奇心の一欠けらが宿った。
「誰を探しておった、少年よ?」
真実を言いたかった。父さんを探していると言いたかった。魂を、本質を、術式の署名を探していたと。連れ戻したかった、ほんの一瞬だけでもと。でも言葉が出てこなかった。代わりに出てきたのは――
「……失った誰かだ。逝ってしまった誰か」
グレインはしばらく観察した。それからほとんど穏やかな声で言った――
「――魔術は死者を戻せぬ、少年よ。記憶を顕現させられる。こだまを顕現させられる。しかし真の命を、魂を戻すことは能わぬ」
「分かってる。でも試みないといけなかった。可能かどうか知らないといけなかった」
と言って、声が裂けた。
「――そして今、汝は知った」
グレインが一歩踏み出した。その存在感は圧倒的で、思わず後退しそうになった。
「汝は扉を開けた、そして我が訪れた。求めていた魂ではないが、汝の行為の結果だ。閾とはそういうものよ。常に望みを叶えるわけではない。時には必要なものを与える」
「……必要なもの?」
と苦い笑いが唇から漏れた。
「誰も必要としてない。ただ答えが欲しかっただけだ」
「――そして見つけた」
グレインが一歩の距離で止まった。
「しかし答えは期待していたものではなかった。そして今、汝には二つの選択肢がある。開けた扉を閉じようと試み、これが起きたことを忘れる」
「二番目の選択肢は?」
と恐怖と好奇心が混じり合って聞いた。
グレインが微笑んだ。初めて、その笑みは嘲るものではなかった。……興味深そうなものだった。
「――我の弟子になることよ。才能を持っておるぞ、少年よ。御しきれていない才能だ。導かれなければ、汝自身と汝の周りの全てを滅ぼしかねぬ才能だ」
沈黙の中で言葉を処理した。
「なんでお前が何かを教えたがる?」
グレインは視線を向けた。灰色の目が深みを帯びた。見えないものを見ているかのように。
「――今は……観察しようぞ。注意を引いた、少年よ。汝の大胆さは……尋常ではない」
グレインは視線を逸らし、物の詰まった地下室を調べ始めた。テレビに近づき、電灯を眺め、コンクリートで補強された壁を見た。
「――驚嘆すべきことよ。人間の生活がいかに発展したかが。複雑な道具を全種類持ち……藁と泥の小屋より堅固な隠れ場所まで持っておる」
小屋?
「どの時代から来ているんだ、現代の家を珍しいものに見えさせるほど?」
と聞きながら、文化的な深淵に気づいた。
「本当に何者で、どこから来て、世界についてどれだけ知っている?」
グレインは深い失望の表情でこちらを見つめた。
「――真に嘆かわしきことよ……現代の人間が自らの過去をここまで忘れてしまったとは」
「ちょっと待ってくれ、化石もいいとこ」
と腕を組んで軽蔑たっぷりに返した。
「明確にしておくけど。僕は完全な人間だとは言い切れないさ。
祖先が数百年前に人間と混血した。僕らはマジクス・テラ、地球に住む魔術師の呼び名だ」
初めて、グレインの眉が微かに上がり、本物の驚きを見せた。
「――他の種族が……このプレーンに辿り着き、人間の種と混ざり合ったのか?」
と独り言のように呟いた。情報を処理しながら。
「興味深き。我は汝の言う『マジクス・テラ』の種族については何も知らぬ。我の時代では、人間とその歴史しか知らなかった」
頭の中で回線が交差した。人間しか知らないなら……なぜ魔法の杖を持っている? その技術的な矛盾に導かれ、杖を指差した。
「意味をなさない。人間しか知らないなら、なぜ術式の杖を持って、瞬きもせずに母さんの魔術を無効化できた? あれは高等な実体化魔術と対呪だ」
グレインは沈黙した。自分の杖を見て、こちらを見て、数秒間、その場の空気を凍らせる静かな分析に沈んだ。終わると、穏やかなため息をついた。
「――見えてきた。汝のエネルギーの性質を我のそれと比較して分析した……明確な答えが出る」
「さっさと話して、説明しろ!」
苛立ちを失って要求した。
「――簡単に言えば……我は魔術師、然り。しかし汝の侵略者の種族『マジクス』には属さぬ。我は人間の種族に属する」
「そんなの不可能だ!」
信じられなくて笑い飛ばした。
「人間には我々みたいに魔力を操る生物学的または霊的な能力が一度もなかった! 空の器、平凡な家畜どもだ。遺伝学的にあり得ない」
「――落ち着け、少年よ」
グレインの声がただの本能で黙らせた。
「人間が汝の限られた頭脳では理解しきれぬほど広大な可能性を持つことを。汝と汝の母でさえその潜在能力を持っておる。元の流れから除外されている者など一人もおらぬ」
「……言っている意味が全く分からない」
グレインは銀の目を己の目に固定し、絶対的な厳粛さで夜最後の教えを述べた――
「――古の世において、人間は世の糸を支配した重要な魔術師たちを知り、崇めた。しかし一人だけ際立った者がおった……閾の技と虚空の軍勢を至高の権威をもって治めた一人の人間が。彼こそが人類の歴史における最初の魔術師であった」
心臓が跳ね上がった。その起源の美学的な謎が完全に僕を捉えた。
「……誰が……?」
魅せられながら囁いた。
グレインは杖で地面を一度だけ叩き、家の窓を振動させる鈍いこだまを引き起こした。そして、血を完全に凍りつかせた名前を発音した――
「――ソロモンなり」
――世界の歴史は、
教科書だけが語るものではない。
誰にも知られていない真実。
語られることのなかった始まり。
そして、
一人の少年が足を踏み入れる、
新たな世界。
次回――
エンディミオン
運命の出会いは、
静かに始まろうとしている。




