第220話 住所は木ではない
春の初めの朝は、まだ火を落とせない。
炉に薪を一本足して、卓に戻った。窓の外は、まだ半分冬の色をしている。屋根の北側にだけ、薄く白いものが残っている。
「昨日ね」
リゼが、椀を置きながら言った。
「配達の人が、うちの前を三回通ったの」
「三回」
「行って、戻って、また行った。三度目に、家の番号を読んでた。声に出して」
私は、パンをちぎる手を止めた。
「聞いたら、同じ名前の通りが、王都に四つあるんだって」
「……四つ」
「四つ」
リゼは、汁をすくった。
「本人が言ってたの。四つあって、そのうち二つは、同じ区の中にあるって」
同じ区の中に、同じ名前の通りが二つある。それは、名前の付け方が壊れているのではなく、名前を付けた人が別々だった、ということである。別々の時代に、別の人が、同じ名前を良いと思った。それだけのことで、四十年後の配達人が同じ道を三度歩く。
AIエージェント:「観測:王都の所在の呼び名は、少なくとも三つの体系が重なっています」
「三つ」
AIエージェント:「補足:行政の呼び名、配達の呼び名、住民の呼び名です。加えて、術盤の台帳が四つ目を持っています」
「黙れ」
朝から四つ目を数えられると、一日が長くなる。
「ユウ」
リゼが、匙を止めた。この人が考えるときは、匙が止まる。
「住所って、名前じゃなくて、道順なのかも」
私は、少しの間、返事をしなかった。
この人は、いつも、私が十行かけて言うことを一行で言う。今日は、朝食の卓で、今日これから半日かけて説明する予定のものを、先に言った。
「……それで、だいたい合っている」
「合ってるの?」
「困ったことに」
———
術務室の卓に、王国の地図が広げてあった。
端が擦り切れている。何度も畳んで、何度も開いた紙である。王都のあたりだけ、墨の跡が濃い。誰かが何度も指で押さえた跡だった。
「王国所在台帳です」
ネドが言った。術務室の若い術師である。去年入って、今年から自分で一つ持たされた。真面目で、手が速い。速いというのは、この仕事ではだいたい良いことで、たまに悪いことになる。
「王国じゅうの所在を、一つの台帳にまとめます。税、郵便、火の備え、薬院の配り、学び舎の願書、浮遊船の乗り客の届け、それから、急ぎの救けです」
「救け」
マリエが顔を上げた。
「火事のときに、詰所が向かう先よ。いま、詰所は詰所で別の帳面を持っているわ」
「はい。全部で、九つの帳面が、別々に住所を持っています。同じ家が、九回書かれています」
それは、確かに直したくなる。九回書けば、九回ずれる。
「それで」
ネドが、表示盤の前に立った。
「こうまとめます」
王国
領
市
町
丁
番地
「上から下へ、順に細かくなります。どの所在も、この六つに分けられます。分けてしまえば、九つの帳面を一つに束ねられます」
書き終えたネドは、少し誇らしそうだった。
私は、その気持ちが分かる。分かるので、余計に、これから言うことが心苦しい。
「きれいね」
リゼが言った。術務室の見習いとして、記録の卓に座っている。
「きれいに見えるけど、だめなの?」
「きれいに見える所在の形は」
私は言った。
「だいたい、実在の所在に負けます」
ネドが、こちらを見た。
「負ける、というのは」
「あとで」
その日、局の上の人が卓を覗きに来た。地図を見て、表示盤を見て、満足そうに頷いた。
「住所など、領、市、町、丁、番地に分ければよいのだろう」
私は、顔に出さないようにした。出さないようにしたが、たぶん出ていた。
「その一言だけで」
私は言った。
「かなり危ういです」
上の人は、笑って行ってしまった。笑って行ってしまう人は、あとで怒って戻ってくる。経験上、そうなっている。
最悪だ。
———
四日後に、怒って戻ってきた。
二件、同時に来た。
「西門の外の塔です」
ネドが、札を持って走ってきた。声が上ずっている。
「試しの台帳を、配達の仕分けに使ってもらっていました。……十二階の商会宛ての書き付けが、三十五階の商会へ届きました」
「中身は」
「契約の写しです。値の欄まで入っています」
三十五階の商会は、十二階の商会と、同じ商いをしている。そういう塔である。同じ商いの者が、同じ塔の別の階に入っている。
「なぜ届いた」
「試しの台帳が」
ネドは、札を握ったまま言った。
「同じ建物だから、同じ所在だと」
まとめた。
それだけである。塔は一つ、住所は一つ、だから一つにまとめた。丁寧な仕事だった。丁寧に、階を落とした。
「もう一件は」
マリエが言った。マリエの声は、こういうときに一段低くなる。
「南の島です」
リゼが、別の札を持ってきた。
「薬院が、月に一度、船で薬を送っている島。その包みが、別の家に届きました」
「島の名は」
「南方諸島の、外れの小さい島です。戸数が、二十と少し」
「届いた先は」
「同じ所在名の、別の家です」
私は、しばらく黙っていた。
「……その島には、番地が無いのか」
「無いそうです」
リゼが、札を見た。
「島の名と、村の名しかありません。二十軒が、全部、同じ所在名です」
薬の包みは、中身が外から分かる。何の薬かが分かれば、誰が何を抱えているかが分かる。二十軒の村で。
「マリエさん」
「聞かなくていいわ」
マリエは、紙の角を揃えた。
「同じ所在名だから同じ世帯、という処理は、契約術務ではだいたい事故の始まりよ」
———
王都の郵便局は、朝がいちばんうるさい。
人の声より、紙の音の方が大きい。束を叩いて揃える音、袋の口を絞る音、木の棚に札を放る音。ずっと前に、この局の仕分けを直したことがある。あのときは、床に区画の線を引いて、門番を立てた。線は、まだ引いてあった。塗り直されて、色が新しくなっている。
「ああ、あのときの」
奥から出てきたのは、六十近い男だった。背は低い。肩から下げた鞄の革が、下の角だけ白くなっている。
「ウルです。ここで、四十年、袋を担いでいます」
「四十年」
「あなたが線を引いたとき、私は外を回っていました。戻ってきたら床に線があって、何だこれはと思いました」
ウルは、笑わずに言った。この人は、笑わずに冗談を言う型の人らしい。
「それで」
ウルは、仕分けの棚の前へ歩いた。棚は、壁一面にある。一つ一つの枡に、木の札が差してある。
「王国じゅうの所在を、一つの形にまとめると聞きました」
「聞くのが早いですね」
「うちの仕事が変わりますから」
ウルは、棚の枡を一つ指した。札には、数字が七つ並んでいる。
「配達符です。うちが振っています。この七つで、袋が決まります」
「七つも要るんですか」
「はじめの三つが、大きな括りです。領と、市のあたり。……あとの四つが、道の一本ぶんです」
「所在から、振っているんですか」
「いいえ」
ウルは、首を振った。
「道順から振っています」
私は、棚を見た。
「……もう一度、言ってください」
「道順から振っています」
ウルは、同じ調子で繰り返した。
「一人の配達人が、一日で回れる道を一本にして、その一本に数字を付けます。町の境ではありません。領の境でもありません。歩ける順です」
棚の枡には、隣り合った数字が並んでいる。数字は隣でも、指す先は、地図の上では飛んでいた。
「だから、こうなります」
ウルは、二つの札を抜いて、並べた。
「台帳では同じでも、配達では別です。逆に、台帳では別でも、配達では同じ袋に入ります」
その一行が、この仕事の全部だった。
「同じ配達符の町が、二つあると」
「あります。ヴェスタ領のカサ町と、峠の向こうのネラ町。領が違います。市も違います。……はじめの三つが、同じです」
「なぜ」
「間に山があって、山の向こうから回るより、こちらから回った方が近いからです。四十年前に、そう決めました」
それは、正しい。配達としては、完全に正しい。
「配達符から、町を当てられますか」
「当てられません」
ウルは、札を棚へ戻した。
「はじめの三つは、領の名を教えてくれません。教えてくれるのは、どの束に入るか、だけです」
「配達符は、場所の名前ではありません。郵便局の都合です」
———
その日の午後、術務室の卓に、王都の地図と、地方の地図を並べた。
ネドと、リゼと、マリエがいる。ルドーは、講堂の帰りに寄ると言って、まだ来ていない。
「六つの段に分ける、という話でした」
私は、表示盤に、ネドの六段を書き写した。
王国 領 市 町 丁 番地
「これから、この段に入らないものを並べます」
「……全部ですか」
「全部ではありません。半分くらいです」
半分というのは、なぐさめにならない。ネドの顔がそう言っていた。
「一つ目。王都です」
私は、王都の地図を指した。
「王都に、市はありますか」
「……ありません」
「領の下に、いきなり区が来ます。王都市というものは、存在しません。では、市の欄に何を書きますか」
「王都、と」
「では、領の欄は」
「……王都、と」
「二つの段に、同じ字を書くことになります。二つの段に同じ字を書く台帳は、あとで必ず、どちらかを消されます」
リゼが、地図を覗き込んだ。
「二つ目。河港です」
私は、河港の地図を出した。川が二本合流するところに、大きな町がある。王都と並んで術局が置かれている、王国で二番目に大きい町である。
「河港には、区があります」
「じゃあ、王都と同じですね」
ネドが言った。
「違います」
私は、二つの地図を並べた。
「王都の区は、領の下です。河港の区は、市の下です。同じ『区』という字で、上の段が違います」
ネドが、両方の地図を見比べた。
「……同じ名前なのに」
「同じ名前だから、余計に危ういです」
ちょうど、ルドーが入ってきた。外套を脱ぎもせず、表示盤を見た。
「同じ字で書いてあっても、制度の上の役目が違うわけだな」
「はい。所在では、同じ言葉が同じ意味とは限りません」
ルドーは、それだけで理解して、壁際の椅子に座った。この人は、いつも一行で足りる。
———
「三つ目。アマネです」
水路沿いの、古い町である。宿を一軒、私は知っている。
「アマネの周りには、同じ町名が多すぎます。宿の町だった時代に、似た名の町が並んで立ったからです」
「同じ町名が、いくつあるんですか」
「あの領の中に、リタ町が、七つあります」
ネドが、口を開けた。
「それで、どうしているんですか」
「町にたどり着く道筋を、所在名の中に入れています」
私は、表示盤に四行書いた。
アマネ セルタ通 カルド西入 リタ町
アマネ カルド通 セルタ上る リタ町
アマネ トレム通 セルタ東入 リタ町
アマネ セルタ通 トレム東入 リタ町
「この四つは」
私は、指で四つを囲った。
「全部、同じ家です」
部屋が、静かになった。
「同じ場所なのに、違う住所なの?」
リゼが言った。
「違う道順で、同じ場所を指しているんです。どの通りから入るかで、言い方が変わる。どれも間違っていません」
「……住所というより、道案内だな」
ルドーが言った。
「そのとおりです」
私は、四行の下に線を引いた。
「困るのは、この四つを、台帳が別の家として数えることです。一軒の家に、四回税を掛けることもできてしまう。逆に、四つのうち一つだけを正しいと決めて、残り三つを消すこともできる。消された三つの言い方で郵便を出していた人は、その日から、届かなくなります」
———
「四つ目。北三町区です」
王都の地図の、北の端を指した。
「王都の北側は、百年前まで畑でした。増えた人を入れるために、畑を割って町にした。そのとき、名前を付けるのが間に合わなかった」
「間に合わなかった」
「南北を数え、東西を数えて、番号にしました。北へ三つ目だから、北三町区。その中は、東西に丁で割ってあります」
王都 北三町区 西十二丁
「これは、町の名前ですか」
ネドが訊いた。
「町の名前の欄に入れれば、町の名前です。ですが、これは、都そのものを格子として扱った書き方です。基準の線を知らない人には、読めません」
「読めないと、どうなるんですか」
「西十二丁が、西へ十二番目だと分からない人は、西十二丁を、西にある十二という名前の町だと思います。思ったまま、荷を出します」
リゼが、少し笑った。
「わたし、思ってた」
「たいていの人が思っています」
———
「五つ目。研究院の前です」
王都の北の外れ、魔術研究院のあたりである。
「十五年前に、あそこへ道が通りました。道が通ると、人が来ます。人が来ると、家が建ちます。家が建った時点では、まだ町の名前が決まっていませんでした」
「名前が決まる前に、人が住むんですか」
「住みます。人は、名前を待ちません」
私は、表示盤に書いた。
研究院前 第二十三街区
新道北 第五街区
「町の名が決まるまでの、仮の呼び名です。工事の図面の上の呼び名が、そのまま住所になりました」
「それは、いまは直っているんですよね」
「三年前に、正式な町名が付きました」
私は、少し間を置いた。
「誰も、使っていません」
「……え」
「住んでいる人が、第二十三街区と言います。店の看板が、第二十三街区と書いてあります。契約の紙にも、そう書いてある。正式な町名を書くのは、役所の窓口に出す紙だけです」
リゼが、腕を組んだ。
「正式な名前より、仮の名前の方が分かりやすいこともあるんだ」
「よくあります。仮の名は、だいたい、思ったより長生きします」
———
「六つ目」
私は、ウルの言葉をそのまま書いた。
配達符は、配送の道順を短くしたもの
「郵便の配達符は、行政の区分ではありません。配達人が一日で回れる道に振った番号です。町の境とも、領の境とも、一致しません」
「じゃあ、配達符から住所を埋めるのは」
「誤ります。同じ配達符に、別の領の町が入っています」
ネドが、書き付けの手を止めた。
「……あれ、やりました」
「何をですか」
「試しの台帳で、配達符を入れると、町の欄が自動で埋まるようにしました。便利だと思って」
「それが、カサ町とネラ町です」
ネドは、しばらく、自分の手を見ていた。
———
「七つ目。西門の外の塔です」
これが、四日前の一件である。
「あの塔は、階ごとに配達符が違います。十二階と三十五階は、配達の上では、別の町です」
「同じ建物なのに」
「同じ建物です。ですが、階ごとに別の商会が入っていて、階ごとに郵便を受ける部屋があって、階ごとに人が違います。配達人から見れば、別の家が三十五軒、縦に積んであるのと同じです」
ウルが、朝、同じことを言っていた。同じ塔でも、十二階と三十五階は、配達では別の町みたいなものです、と。
「それだけではありません」
私は、塔の絵を、簡単に描いた。四角を縦に積んだだけの絵である。
「人が入る口と、荷が入る口が、違います。人は表の大階段から入ります。荷は裏の荷の入口から入って、荷を上げる仕掛けで上がります。表の住所を書いて荷を出すと、荷は表へ行って、そこから裏へ回されて、半日遅れます」
「入口が、住所に要るんですか」
「要ります。訪ねる人の入口と、荷の入口と、急ぎの救けが入る口は、全部違います」
———
「八つ目。南の島です」
私は、最後の地図を出した。地図と言っても、島の形と、丸が二十と少し描いてあるだけの紙である。
「番地がありません。二十軒が、同じ所在名です」
「それで、どうやって届くんですか」
「家の名で届きます」
私は、ウルから聞いたことを、そのまま言った。
「浜寄りのカイヤの家、坂の上のカイヤの家、というふうに呼びます。カイヤは、島に三軒あります。三軒は、親戚です」
「……配達の人は、それを覚えているんですか」
「覚えています。島に一人しかいません。その人が、四十年やっています」
リゼが、地図の丸を見ていた。
「住所より、人の方が詳しいんだね」
「はい。ああいう地域では、配達人が索引です」
ネドが、顔を上げた。
「それは……危なくないですか。その人が辞めたら」
「危ないです」
私は言った。
「その人の頭の中にしか無いものは、その人が辞めた日に消えます。ですが、それは、台帳を一つにすれば直る、という話ではありません。台帳を一つにしたから、薬が別の家へ行きました」
———
表示盤が、字で埋まった。
六つの段。八つの、段に入らないもの。
「一つ、言っておきます」
私は、表示盤の前に立った。
「いま並べた八つを、例外と呼ばないでください」
ネドが、書き付けから顔を上げた。
「例外ではないんですか」
「例外だと思うと、本体をきれいなまま残して、脇に例外の欄を作ります。例外の欄は、放っておくと必ず増えます。増えて、本体より大きくなります。そのころには、誰も直せません」
「では、何だと」
「別々の体系が、重なっているだけです」
私は、表示盤に、縦に並べて書いた。
行政の体系 税と登録のため
郵便の体系 届けるため
土地台帳の体系 土地を測るため
道案内の体系 行き着くため
暮らしの体系 人がそう呼んでいるため
「五つとも、目的が違います。目的が違うので、境の引き方が違います。違うまま、同じ土地の上に重なっています。……八つの厄介事は、この重なりが見えているだけです」
部屋が、静かだった。
「ユウさん」
ネドが言った。
「わたしの六つの段は、どれになりますか」
「行政の体系です。よく出来ています」
「……でも」
「よく出来た行政の体系です。行政の体系は、行政の仕事しかできません。それで郵便を配ろうとしたから、島の薬が別の家へ行きました」
———
夕方、術務室の窓から、西の空が見えた。
西門の外の塔が、丘の向こうに影で出ている。三年前には無かった影である。王都は古い街並みを残すと決めたので、高いものは壁の外に出た。出た先で、縦に町を積んだ。
卓に残っているのは、二人だけになっていた。ネドは、写しを取りに下へ降りている。マリエは会議、ルドーはとうに帰った。
「ユウ」
リゼが、卓の向こうから言った。
「結局、住所って何なの」
私は、表示盤を見た。八つの厄介事と、五つの体系が、まだ消してない。
「住所は、木じゃない」
私は言った。
「たまに木のふりをする、歴史と行政と配達と暮らしの、絡まった蔦だ」
「蔦……」
「絡まってるものを、まっすぐな棒として扱うと、だいたい折れる」
リゼが、しばらく表示盤を見ていた。
「折れたのが、島の薬だったんだね」
「……そうだ」
人は、まっすぐなものが好きである。まっすぐなものは美しいし、覚えやすいし、人に説明しやすい。だから人類は、絡まったものを見ると、まず、まっすぐにしようとする。そしてだいたい、絡まったまま使っていた人が、先に困る。
階段を上がる音がした。ネドが、写しの束を抱えて戻ってくる。
「明日から、どうするんですか」
「作り直します」
「全部ですか」
「段の数を増やすのではありません」
私は、六つの段の横に、一本、線を引いた。
「住所と呼んでいるものが、そもそも一つではない、というところからやり直します」
ルドーが、外套を取って立ち上がった。出ていく前に、一度だけ表示盤を見た。
「所在名を一つに決めるのは、明日か」
「決めません」
私は答えた。
「決めないことを、決めます」
ルドーは、鼻から息を出した。
「厄介だな」
「はい」
厄介である。厄介だが、四日前に、薬が別の家へ届いた。厄介の方が、まだ安い。
AIエージェント:「観測:本日の表示盤には、所在の呼び名が三十二通り書かれています」
「数えたのか」
AIエージェント:「提案:三十三通り目を作らないことを推奨します」
最悪だ。今日いちばん正しい。




