11 学校
拓とセズラは『薬学』の試験を終え、『医務室』……ではなく、『面談室』へ向かった。
理由は『医務室』は防音ではないけど、『面談室』は情報が漏れないようにするために防音になっているらしい。しそのおかげで、外の音は一切聞こえないから話しやすい。とのことで、『面談室』へ向かった。
『リスペクト』は塾なのだが、一つの少し小さな学校って感じだ。小学一年生から中学三年生まで通える。高校一年から三年までも通えるが、校舎が別になるらしい。
(……にしても遠いな)
『実験室』から『面談室』までの距離は大体徒歩七分。『面談室』は南舎一階の一番東側に対し、『実験室』は北舎二階の一番西側だ。一番遠い場所なのである。
拓は何に話をするかは聞いていないので緊張している。前に行き、拓を先導してくれるセズラはどこか楽しげな顔をしていた。
◇◆◇
「ここだよ」
サインプレートにはやっぱりよくわからない言語で書かれている。多分ここに『実験室』と書かれているんだろう。
セズラはドアを開けて入ってと言わんばかりの笑みを見せた。それに応えるように、拓は中へ入った。
室内は木で、できていて、テーブルが一つ、椅子が四つあった。
拓は入り口から一番遠い席に座ると、セズラはその対面に座った。
「じゃあ、今から、どこの学校に行きたいか決めてもらうよ〜」
「は、はい!」
「さっき言った通り、ヒロくんが行くなら仲良い子と一緒がいいでしょ?」
「そ、そうですね……ネネさんとか、カゼア様あたりだと嬉しいです」
「カゼア様……え、様付けなの?いじめられてない?大丈夫?まさかカゼアくん……いじめる子だとは思ってなかったんだけど……」
「あ、ち、違います!そ、その、け、敬称にした方がいいですよね?か、勝手に読んでるだけなので!決していじめられているわけじゃないので安心してください!」
「そう?ならいいんだけど」
セズラは少し考え込むような顔をした後、またニッコリと微笑んだ。
「じゃあ、さっきも言ったけど、『アイルド学園』か『シャル・イースト校』になるね。『アイルド学園』にはネネさんしかいないからね、頼れる人が少ないかもしれない」
「ね、ネネさんだけでもすごい頼れますよ?」
「んー、それはそうだけど、ほら、一人じゃ厳しいのもあるでしょ?それに、回復専門だから奇襲には弱いんだよね」
ネネは回復しか使えないわけではないが、回復以外はそこまで強くない。攻撃魔法単体で見たらネネは最下位である。回復がずば抜けて上手なため、『リスペクト』の順位が三位である。
「そ、そうですね……だったら、『シャル・イースト校』ですか?」
「そうなるね〜……ただ、ヒロ君には厳しいかもしれないんだよね」
「ど、どうしてですか?」
拓がそう聞くと、セズラはうーんと唸って頭を抱えた。どうやら聞いてはいけなかったのかもしれない。
「うーんとね、編入生にあたり強いかもなぁって。ただ、『リスペクト』メンバーの誰かと行動しとけば難は逃れることはできると思うよ」
セズラは近くにあるホワイトボードにまたよくわからない文字で書く。
「『シャル・イースト校』のトップはここに入塾してる『ユート』くんなんだけど、防御専門でね……攻撃があんまできなくて運動音痴だから一緒に行動してるとちょっと舐められちゃうかもね」
そうして、セズラはその文字に二重線を引いた。多分『ユート』って書いたんだろうな、と勝手に解釈した。
『ユート』ーー『ユート・オルセイン』のことである。『リスペクト』順位二位、防御魔法特化の家系である。『シャル・イースト校』の学力ランキングではトップをとるほど。イリスと仲のいいライバルである。
「『アオラ』さんとかならいいかもなぁ……」
『アオラ』ーー『アオラ・ヤーミズエット』のことである。『リスペクト』順位四位、どれにも特化していず、バランスがいい。『シャル・イースト校』では、五位の実力で、美人で面白いとのことで人気がある。
そして、『リスペクト』順位を言ってくと、一位『イリス・オーラディオ』、二位『ユート・オルセイン』、三位『ネネ・ユーヒリスト』、四位『アオラ・ヤーミズエット』、五位『カゼア・コルセリオン』と、名前だけ聞くと言う点では揃った。トップ五のうちの三人が『シャル・イースト校』である。
「まあ、とにかく、ヒロくんには二つの選択肢をあげるね」
「はい……」
多分、『アイルド学園』か『シャル・イースト校』だろうな、と拓は、目を瞑って想像した。
「『シャル・イースト校』に通うか……そもそも、学校に行かずにここで暮らすか!」
「え……『アイルド学園』は!?」
「ネネさん一人だとちょっと心配だからね、大人数いる『シャル・イースト校』の方がいいかな〜って」
他の色んな学校をそもそも選択肢に入れようとしていない時点で、セズラは拓に『シャル・イースト校』に行ってきて欲しいんだろうな、と思った。
むしろ、拓にとっては『シャル・イースト校』が選択肢にあることが嬉しかった。一番に行きたい学校は?と聞かれたら『シャル・イースト校』と応えると思う。
「じゃ、じゃあ『シャル・イースト校』に通いたいです!」
「おっけー、じゃあ、入学手続きするからちょっと待っててね」
セズラは『面談室』を出て行った。書類を取りに行ったのだろう。
拓は一人になった『面談室』で喜びの舞をしていた。




