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転生賢者はひきこもる  作者: 春市
二章 地霊編

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第十八話 「助け」

 いま、私たちは「荒ぶる森」といわれる魔境を進んでいる。魔法師曰く、この森には異形の魔力がこもっているらしい。そして森にはなんともいえない濛気が漂っている。数十歩先の木々さえ見えない。


 我々の目的は二つ。この森に住まうと昔から伝えられる賢者に会い...そして...


 「それにしても、森の賢者なんてホントにいるんすか~?」

 若い騎士が言った。


 「うーん、さっきの村じゃもう、何年も見てないって言ってたけどな。」

 先輩の騎士が返す。


 「いや、賢者様は必ずいるよ、この霧が証拠さ。通常、こんな深い霧なんてそうそうでるはずがない。」

 と魔法師。


 「まあダメ元できたんだ、会えなくても仕方ない。」


 「今は武闘派の七聖(しちせい)は北部の奥地、剣聖は国外。これ以上彼らの帰りを待っていたら、国が滅んでしまう...。」


 「だからといってねえ...ランド。」


 「そんな何年も前の噂を本気にするのはねえ...」

 「いや..きっといるはずだ。きっと...」


 若い騎士が何か言いかけた。

 

そのとき、濛気が一瞬にして晴れ、視界があらわになる。白んでいた木々がその一本一本の姿をあらわにする。


 どこからともなく、


 「何者であるか?私はこの森を守護する者...」


 威風ある老人の声がした。姿は見えないが...。身震いをする。いいや、きっと武者震いだ...そう言い聞かせるんだ。


 「私はランド=フォールズ!王国の代表として、あなた、『森の賢者』殿に助けを乞いに来た。」


 沈黙が両者に走る。


 「...断る。王国に力を貸すような義理はない。」

 

 (そりゃそうだ。彼にそんな義理はない。だが...)


 「そこをなんとか!このままでは国は滅んでしまいます!」


 (国が滅ぶような羽目になったのは完全に国の油断にすぎない。だけど...)


 「東の山地に魔獣王『地霊』が現れました。やつを倒せるのはあなたしかいない。」

 ですから...  そこから先は声にもでなかった。


 「......断る。」


 依然返事は変わらない...。


 「では...しかたありません...」

 「せめて...デアフリンガーの死に場所に案内をしてもらえませんか?」


 「...デアフリンガー?」


 (反問してきた?)

 (彼はまさか王国の英雄を知らないのか?あれはもう80年は前の、歴史の教科書に載るような人物だぞ。彼がいくつかは知らないけれど...エドゥアルド=デアフリンガーを知らない人間がまだ王国にいたのか...。いや、いかん。人をそんなことで判断しては...。)


 ランドは問うた。


 「赤髪の騎士です...ご存じないですか?」

 彼は何も言わない。

 しばらく、考え込んでいたのか...


 「...思い出した。分かった、案内しよう。」


 そして、「とうっ!」と自前の効果音をひっさげて。

 何者かが頭上から飛び降りてきた。


 「ふーん。お前らあ、墓参りに来たのか?...感心ものだなあ。」

 いきなり高い声がする。さっきのじいさんとはまるで違う。


 可愛らしい少女の声だった。


 そして目の前に立っているのは容姿端麗な少女だった。古ぼけたフード付きのローブに、杖を大事そーうに抱えている。


 「え!あなたが...『森の賢者』!?」


 全員一斉に驚嘆の声をあげた。

 え~?

 みんなポカーンっと呆けた顔をしている。

 「え、え?じゃあ...さっきのじいさんの声って君が出してたのか?」

 若い騎士が尋ねた。


 「あ~そうだよ。『変声魔法』っていってね。」

 ...なんだかめんどくさそうな態度だな...。


 「それより、デアフリンガーの死に場所?あんな辺鄙なところへ行きたがるなんて、よほどの死にたがりだね。」


 「そんなに危険なんですか?」


 「うん。あんたの取り巻きが百人いても敵わないかな。」

 

 「そりゃあ、まずいですね。」


 「まあ、あんたらに死なれて、夜しか眠れなくなっても、かまわないけど...案内する以上は私が護衛しよう。」


 「じゃあ、よろしくお願いします...」


 ん、手をつきだされた。なんだ?


 「握手だよ。短い時間だけど、仲良くできるようにね。」


 彼女の故郷の習慣なのかなぁ?

 不思議ながらも、その小さい手と、握手を交わした。


 その人肌は、少し、温かかった。



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