第十六話 「別離」
暗い暗い意識の中......
(スズカ、私は...間違っていないと信じる)
まどろみの中......
(私のこの選択が...君を呪うだろう)
永遠とも思える闇の中...
(それでも、私は君に生きていてほしい、君が私を恨もうと...)
突如、まばゆい光が辺りをさ迷う。
口の中に鉄臭いなにかが流れ込んでくる。むせてしまいそうだが、その元気すらなかった。
お腹が暖かい...
カラン...
そして、また眠りについた...
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「ン...」
目が覚めた。
横に聖杯が落ちている。あのあと、こちらへふっとんできたのかな?
「そうだ!お腹を刺された...はず...」
触ってみる。柔らかくて、しっとりしている。いつも通り、十代の肌といったカンジだ。運動不足は否めないが...
ふと横目をやると、鎧が一体倒れている。腹に大穴をあけて...
「ヴァン!」
焦りがつのる。
「ねえ!目...目はないけど!起きて!!」
「ねえ、ねえってば!!」
反応は、ない。
悲しみの雨が降る。雨雲のように。
「私を見守るって言ったでしょ!!いつでも待ってるって!いつでも!」
しばらく泣きじゃくっていると、騎士たちの遺体が目に入った。
「私が...私のせい...」
いいや、彼らは危険を承知で森へ乗り込んできた。頭をブンブンして考えを振り払った。
それからヴァンの鎧のそばについて...どれくらい経っただろうか。
「グーギュルギュ~」
「お腹減った...」
腹が減っては戦はできない。とりあえず...ヴァンの家の食べにいこう。
夜食はウサギのシチューにした。大鍋でウサギと芋と、そこらに生えてた野草。ミルクはない。でもよっぽどたまにしか食べられない。ご馳走だ。美味しい。やはり疲れた時には食べることだ。
けど...次第にシチューは塩っ気が強くて、食べられなくなって...嗚咽が混じってきて...前が見えなくなってきて...
なんでだろう...こんなに悲しいことがあったっけ。ひい祖父さんが死んだときだって、こんなには悲しくなかったのに...いつも通り、生きていけた。
けど、今...心が壊れる音が聞こえた。
堤防が決壊したんだ、きっと...
洪水が私の顔を覆って...
滴りおちた。
これにて、一章はおしまいです。
二章は王国を舞台にスズカが活躍する予定です。
乞うご期待。




