↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/8

第二章:前書き

時は秋の水のように、ゆっくりと流れていった。




この見知らぬ木の部屋で目を覚ましてから、すでに二週間以上が過ぎていた。


アルベールの痩せこけた体は徐々に回復し、私は壁に手をつかずとも廊下を歩けるようになった。


両腕はまだ細いままだったが、震えずに物を掴めるようになっている。


貪るような食事の成果はようやく現れ始め、毎朝、洗面の水桶に映る青白い顔には、うっすらと血の気が戻ってきていた。




だが、体が回復したからといって、心まで満たされるわけではない。




私は退屈していた。




猛烈に、退屈だった。




テレビもなければ、携帯もない。インターネットもない。


この世界における唯一の娯楽は、どうやら他人と会話することらしい。


しかし、私はもう誰のためにも生きないと決めたのだ。


見知らぬ他人と愛想よく振る舞うことは、優先順位の第一位には入っていなかった。




――私には本が必要だった。




そう思いついたのは、ある朝、天井の木目を眺めながら、気が狂う前にこの梁の木目を数え終えられるだろうか、と考えていた時のことだ。


前世では、どんなに仕事が忙しくても、寝る前に何かを読む習慣があった。


ネットニュース。電子版の新聞。時にはコンビニで買った安い小説。




しかし、ここでは本は贅沢品だった。




私は家の中を漁り始めた。客間には小さな本棚があった。


私は中毒者がついに薬を見つけたかのように、それに飛びついた。


だが、その喜びは、最初の一冊を棚から引き抜いた途端に消え失せた。




『小麦の収穫量とロウェル領における季節ごとの課税周期の関係について』




三ページ読んだだけで、欠伸が出て、その場で眠り込んでしまいそうになった。


数字の羅列、行政用語、聞いたこともない税金や義務の名前。


それらは見えない壁となって、私の行く手を阻んだ。




次の本。『北方辺境地域における貴族家系の系譜』。


複雑に入り組んだ名前と血縁関係の坩堝だった。




次の本。『農場管理の基本原則』。これも大差なかった。




私はため息をつき、すべてを元の場所に戻した。


たぶん、読み方を一から学び直さなければならないのだ。ここの本は難しすぎる。


前世が現代人の私には、すぐには理解できない概念ばかりだ。




がっかりして、私は再び父の書斎へと足を運んだ。




部屋は相変わらず静かだった。窓からは弱々しい日差しが差し込み、埃の粒が空気中に漂っている。


大きな木の机は部屋の中央にあり、その上には、やはり数冊の古びた本があった。




お目当ての本を見つけるのに、時間はかからなかった。


一番分厚い、擦り切れた革表紙の本が、前と同じ場所に置いてあった。


表紙の大きな文字が、私の前にくっきりと浮かび上がる。




『世界史』




私はそれを手に取った。これだ。この家の中で、私がまともに読める唯一の本。


簡単だからじゃない。他の無味乾燥な行政書とは違い、これは生き生きとした描写と魅力的な筋書きで、まるで物語のように書かれているからだ。




最初に読んだ時は、半信半疑だった。しかし今は、ほかに何もすることがない。


私は自分に言い聞かせた。「ないよりはマシだ」と。




窓際の椅子に腰を下ろし、本を開き、もう一度最初から読み始めた。


今度は疑いの目ではなく、時間を潰す一読者の目で読んだ。


そして認めざるを得なかった。たとえただの作り話だとしても、この内容は本当に面白い。




この世界――いや、正確にはこの本の中の世界――は、遠い遠い昔から存在していた。




最初のページに記された暦によれば、現在は1327年。




紀元前約700年、この世界は一つの巨大な超大陸だった。


世界中のすべての陸地が、途方もなく広大な一つの塊に張り付いていた。


隔てる海も、分かつ大洋もない。あるのは、大きな河、山脈、どこまでも続く森だけだった。




そしてその世界では、様々な種族が入り混じって暮らしていた。


決まった領土もなければ、厳格な国境もない。


彼らは同じ土地で共に生き、資源を分かち合い、時に文化をぶつけ合わせ、時に戦争をした。




本には、四種類ものエルフ種族が記録されていた。




緑のエルフ。彼らは、陽光がわずかな光線しか差し込まない、鬱蒼とした森に住んでいた。


若葉のような淡い緑色の肌を持ち、優れた射手であり、深き森の守護者であると記されていた。




沼のエルフ。彼らはより濃い、湿った苔のような緑色の肌をしていた。


彼らは、空気が重く、大地が常に水に浸かった広大な湿地帯に住んでいた。


森の同胞とは異なり、彼らは待ち伏せによる狩猟と毒薬の達人となることで、過酷な環境に適応した。




氷のエルフ。彼らは雪のように白い肌と、氷のように青い瞳で、凍てつく北の地に住んでいた。


氷を操る力を持つ、強力な魔法使いであると記されている。




そして最後に、ほとんど情報が記されていない、もう一つのエルフ種族。


彼らは、日光が決して届かない、地下深くの岩窟に住んでいた。


誰もその姿を見たことがない。どれほどの数がいるのかもわからない。


彼らはただの未知なるもの、地の底の秘密として言及されているだけだった。




私は別のページをめくった。




竜人。ここが一番面白かった。


彼らは本物の竜ではなく、鱗と角、そして燃えるような目という、竜の特徴を備えた人型の種族だった。


彼らは火山の近くに住み、本によれば、火山があるところには必ず彼らの存在があった。


彼らは火山の火口のすぐ側に都市を築き上げた。それは他のどんな生き物も焼き殺してしまうような灼熱の地だ。


彼らは全種族の中でも最強の戦士であり、ずば抜けた身体能力と、炎への自然耐性を持っていた。




獣人。非常に多様性に富んだ種族だ。


猫、犬、狼、狐、熊――ありとあらゆる動物の特徴を持っていた。


本には、彼らは優れた感覚と驚異的な身体能力を持つ、敏捷な戦士たちだと描かれていた。


彼らは統一された王国を持たず、様々な場所にちらばった無数の部族に分かれて生きていた。




魚人。海の下に住む種族で、複数の異なる血筋が存在した。


本は一章丸ごとを割いて、特に強力な三つの血筋に重点を置いていた。


「海の王」――太陽の光が届く浅い海を支配する者たち。


「深海底」――あらゆるものを押し潰す水圧が支配する、おぞましい深海に住む者たち。


そして「交わり」――複数の血筋の混血であり、その卓越した適応力で知られる者たち。


彼らは互いに連携せず、別々の王国に分かれ、それぞれが異なる海域を占有し、全く異なる特徴と文化を発展させてきた。




私は読み進めた。




オラフ族。ここが、私が最も長く立ち止まった部分だ。


彼らは特別な種族だった――ほぼ不死なのだ。


寿命に限りがなく、殺されでもしない限り、何千年でも、あるいは永遠にでも生きられる。


しかし、その不死の代償は残酷だった。生殖能力がほぼゼロなのだ。


純血のオラフの子供が生まれることは、奇跡に近い。


では混血の子供はどうか? 彼らはたいてい、母親の胎内で死んでしまう。あるいは生きて生まれても、産声を上げた直後に息絶えてしまう。




しかし、歴史にはたった一つの例外が記録されていた。




その子の名はアーサー。


オラフの男と、人間の女の間に生まれた混血児だった。


彼は生き延びた。成長した。


そして、乱立する人類の小部族すべてを統一し、人類初の強大な王国を築き上げた、最初の王となった。




私はしばらく本を閉じ、窓の外を眺めた。


アーサー。アーサー王。思わず笑みがこぼれるほど、聞き覚えのある名前だ。


この本の作者は、アーサー王と円卓の騎士の伝説から着想を得たに違いない。


だが、単なる模倣ではなく、独自の要素を付け加えている――不死の種族、唯一生き残った混血児、人類最初の王。


手の込んだ創世神話だ。




その想像力には、感心せざるを得なかった。




私はさらに読み進めた。




紀元前400年頃、世界は変わり始めた。


巨大な大陸プレートが分裂し始めたのだ。


本はそれを「大分離」という恐るべき大災害として描いていた。


大地は裂け、火山が至る所で噴火した。溶岩が川となって流れ、行く手にあるものすべてを焼き尽くした。


火山の火口で何千年も暮らしてきた竜人でさえ、その凄まじい熱には耐えられなかった。


彼らは都市を捨て、新天地への移住を余儀なくされた。




大移動は200年続いた。すべてが落ち着いた時、超大陸は六つの別々の大陸に引き裂かれ、新たな地理的集合体を形成していた。


分断された大地の間には大洋が生まれた。新たな山脈が隆起した。気候が変わり、生態系が変わり、すべてが変わった。




そして、かつての超大陸の中心――本が「中央大陸」と呼ぶ場所で、特別なことが起きた。




人類が、四方八方から押し寄せたのだ。




本は、実に様々な人類の種族を列挙していた。


北西には、スラヴ、ゲルマン、ロマンスと呼ばれる人々がいた。


南東には、漢、安、蒙古の人々。


南西には、ホモ・サピアとラティ。


そして、本がほんの少し触れただけの、無数の小さな種族たち。


彼らは旧世界のあらゆる場所から中心部へと集まり、巨大な集団を形成した。




それらの名前は、奇妙なほどに聞き覚えがあった。


スラヴ、ゲルマン、ロマンス――それは古代ヨーロッパの民族集団だ。


漢、蒙古――それはアジアの民族だ。


この本の作者は、どうしてそんな名前を知っているんだ?


私は頭を振った。偶然だ。この世界では、きっと全く違う意味なのだろう。




いずれにせよ、本によれば、これらの人類種族は分裂し、それぞれの王国を築いた。


彼らは拡大を始めた。そして、大陸にいた他のすべての種族を虐殺した。


エルフは深い森へと追いやられ、獣人は不毛の地へと追い立てられ、より小さな種族は完全に一掃された。




その戦争の頂点が、最後の戦い――全人類と、竜人とオラフの連合軍との決戦だった。


それは世界の運命を決する戦い。人類が負ければ滅び、勝てば支配者となる。




本はその戦いを、劇的な筆致で描いていた。


巨大な軍隊。強大な魔術師たち。空を舞い、戦場に火を吐く無数の竜。


そして、そのすべての中心で、アーサー王が――この時はすでに老人だったが――敵の連合軍を前に、剣を構えて立っていた。




私はその章の最後のページをめくった。




戦いは終わった。人類の勝利だ。


竜人は遠く離れた火山地帯へと追い返された。


オラフ族はほぼ一掃され、ほんの一握りの個体が世界中で隠れ住むだけとなった。


人類が支配種族となった。


そしてアーサーは、中央大陸全土に広がる、人類初の帝国――人類帝国の、最初の皇帝となった。




私は本を閉じた。


太陽はすでに高く昇り、窓からの日差しが、床板の上に暖かな光の筋を投げかけている。


どれだけ読んでいたのか、見当もつかない。数時間か、午前中ずっとか。




私は立ち上がり、腕を伸ばした。関節がポキポキと鳴る。


読書も仕事と同じくらい疲れるものだ。


だが、少なくとも退屈はしのげた。認めよう、この本は本当に面白かった。


内容は独創的で、論理的で、精巧に組み立てられている。


もしこれが本当にただの娯楽小説なら、出版される価値があるだろう。




書斎を出て、廊下を歩き、裏庭を見下ろす大きな窓の前で足を止めた。


外では、黄金色の日差しが花壇と芝生の上に広がっていた。


風がそよぎ、土と木々の香りを運んでくる。


不思議なくらい、平和な風景だった。




私はそこに立ち、空を見上げ、想像力を自由に羽ばたかせた。




六つの大陸。




大分離の後、六つの大陸が形成され、それぞれが独自の世界となった。


本には、各大陸で様々な種族が国家という統治機構を形成していく過程が、簡単に記されていた。




第一の大陸――人類が支配する地――は、中央大陸。


竜人とオラフの連合軍に勝利した後、アーサー王に率いられた人類は、最初の人類帝国を建国した。


しかし、その帝国は永遠には続かなかった。アーサーの死後、内部対立が芽生え始めた。


帝国内の小さな王国は次第に分離し、独自の統治機構を持つ独立国家を形成していった。


それは封建的な分権モデルであり、各地の領主が自分の土地を統治しながらも、最高位の王に対して緩やかな忠誠を誓うという形だった。




私はふと、アルベールの父ジェラルドも、そんな領主の一人なのではないかと思った。


この家も、この土地も、おそらくはその封建制度の一部なのだろう。




第二の大陸は、エルフの地。


中央大陸から人類に追われた後、エルフの様々な種族は海を渡り、新たな大陸へとたどり着いた。


そこは、人間に邪魔されずに生きていける場所だった。


しかし、それは平和的な移住ではなかった。四つのエルフ種族――緑、沼、氷、そして地下に潜む種族――が、容易に共存できるはずがなかった。


彼らは大陸を四つの領土に分割し、それぞれを長老会議が統治した。


王も帝国もない。ただの緩やかな連合体であり、資源を巡って時に衝突を繰り返した。




私は彼らの生活を想像してみた。


枝と葉で編まれた家々が蛍のように輝く、緑のエルフの樹上都市。


黒い水面が灰色の空を映す、沼のエルフの高床式の村。


風が水晶のように透き通った壁を通り抜ける、氷のエルフの氷の要塞。


そして地下深く、誰も足を踏み入れたことのない、第四の種族の神秘のトンネル。




第三の大陸は、竜人の地。


奴らは最後の戦いに敗れた後、ここへ退却した。


しかし、私が想像したのとは違い、奴らは衰退しなかった。


彼らは新たな王国を築き、竜の王がその頂点に立った。


「龍王」の称号は、世襲ではなく、力によって受け継がれた。


現龍王を打ち負かした竜人こそが、次の王位につくことができるのだ。


残酷だが、彼らなりの公正な統治システムだった。




本が描いていた彼らの都市を私は思い出す。


火山の火口から生えた巨大な黒い塔、灼熱の溶岩が街路を赤く流れる都市。




第四の大陸は、獣人の地。


と言っても、「獣人の地」と言い切ってしまうのは正確ではないかもしれない。


彼らには統一国家がなかった。代わりに、無数の異なる部族に分かれ、それぞれが族長を戴いていた。


部族間の同盟関係は、季節や戦況、利害によって絶えず移り変わった。


それは混沌としているが、生命力に満ち溢れた社会だった。




私は彼らを想像してみた。


闇夜に黄金の瞳を光らせる狼頭の戦士たち。


ピンと立った耳と狡猾な笑みを浮かべた狐の商人たち。


闇を見通す大きな丸い目を持つ梟の呪術師たち。


彼らは皆、国境も共通の法もなく、ただ力と名誉だけが支配する広大な大陸で、共に生きていた。




第五の大陸は、魚人たちの水中世界。


人類が決して触れることのできない世界だ。


「海の王」「深海底」「交わり」という三つの大王國が並立していたが、互いに連携することはなかった。


それぞれの王国には独自の王、独自の法体系、そして全く異なる文化があった。


本は彼らを、全種族の中で最も神秘的な存在だとしていた。


人類が彼らと接触する機会は、ほとんどないからだ。




彼らはどんな姿なんだろうか? 半人半魚か? それとも全く違うのか?


本は何も語っていなかった。おそらく、作者にもわからなかったのだろう。




そして最後に、第六の大陸。この大陸には名前がなかった。


そこは、いかなる種族も住まない不毛の地と記されていた。


あるいは、もし住んでいたとしても、誰も生きて戻って話を伝えた者はいないのだ。


死の大地。未だ解明されぬ謎。




私は窓辺に立ち、どこまでも青い空を見上げた。


白い雲がゆっくりと、あてもなく流れていく。


それは、今の私の頭の中にある考えと、どこか似ていた。




あの物語のすべて――超大陸、大分離、独自の国家機構を持つ六つの大陸――すべてがあまりにも論理的で、詳細で、生々しかった。


もしこれが本当にただの娯楽小説なら、作者は賞を取るべきだ。


でも、もし…




私は頭を振った。違う。簡単に信じるな。


私はこれまでずっと、信じ続けて騙されてきたんだ。これ以上は、騙されてたまるか。




一陣の風が吹き抜け、草と湿った土の匂いを運んできた。


私は深く息を吸い込み、冷たい空気が肺を満たすのを感じた。




この世界が何であれ――


エルフや竜人が実在する本物の異世界であれ、ただのどこかの田舎の遅れた土地であれ――


変わらないことが一つだけある。




――今度こそ、私は自分のために生きる。




私は背を向け、窓と果てしない青空を後にした。


しかし頭の中では、六つの大陸の光景、奇妙な種族たち、人類最初の王の姿が、壮大な映画を観終わった後のように、鮮やかに渦巻いていた。




本当に、よくできたライトノベルだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。