9 俺のアルマリンは忙しい
俺のアルマリンは、平凡に生きたい、目立ちたくないと昔から言っているが、だからといって何も身につけていないと思ったら大間違いだ。
教養はもちろん、マナーもきちんと習得し、慈善事業にも力を入れている。月に1度、自ら足を運び、寄付を渡しながら管理者との話し合いを毎回必ず行い要望を聞く。その後は子供達に文字や計算を教えている。子供達の状態も良く見ていて、今日は集中力がないと感じると、外へ連れ出して子供達と一緒に駆けずり回って遊ぶ。
領地経営までもしもの為と言って、学び始めた。
え? 俺との時間は?
肩を落としていると、ハイヤーは「やりたいと本人が言うならやらせよう。 俺なんか母にお前も学べと言われるまで兄がいるから大丈夫と思っていたが、今は俺が当主になっているしな」と言われると受け入れるしかない。
領地を見てまわるのに、馬車移動は時間がかかるし、馭者が待ってばかりで大変だからと乗馬も習い、辺境伯の娘なら剣も扱えないと笑われてしまうかもしれないと言って、騎士団に飛び込んで行った。
アルマリンが筋肉ムキムキになっても俺の愛は変わらないと誓えるけど、俺のこと放置しすぎじゃないか?
ハイヤーがまたも落ち込んでいる俺の所へやってきて、
「辺境伯の娘なら剣を扱えたほうがいいと思うだろ? 」と俺の背中をバシバシと叩きながら、自分も騎士団の訓練に参加しにいった。
魔法の訓練は俺の出番だろうとウキウキしていたし、アルマリンも俺に教えを乞うてきた。俺を頼ってきたアルマリンが可愛いすぎて、顔がニヤニヤと緩んでしまいそうになる。手取り足取り丁寧に教えてやろうとしたら、両親からストップがかかった。
「うふふ。 貴方、闇魔法は使えないでしょ」
「闇魔法は希少だからきちんと教えないといけない。私に任せなさい 」
ノルン、ピートも闇魔法の適性はあるがメイン属性ではない。アルマリンは全てが均等に使えてしまう万能型。
「・・・あー、わかったよ。 クソっ」
不貞腐れていると、ベルトリックが近づいてくる。
「フェルナンド様は、アルマリンを諦めた方がいいよ。 彼女には僕の婚約者になってほしいな。可愛いし」
ベルトリックの頭をぺしっとひっぱだく。
「痛っ」
「アルマリンの好みは年上だ。 お前じゃ相手にされないし、お前の母親が許すわけないだろ」
コイツはピートが辺境伯領に来てから半年後にやってきた。
陛下や両親の了承は得たと、手紙も一緒に持ってきた。
王宮の近衛兵達のような型通りの剣術じゃなくて、臨機応変な剣術を求めているそうだ。ガキが生意気なことを言いやがってと思ったが、学ぶ時は真剣だった。
「種馬として出荷される未来より、自分で組織を作って暗躍した方が楽しそうでしょ? ピートも引きずり込むつもり。 フェルナンド様もどう?」
「ふん、お断り」
「だよね~。 でももしもの時は協力してね」
その後、コイツは俺に取引きを持ちかけてきた。
ベルトリックがここにいられるのは最長で3か月。城からここまで馬車で5日はかかる。
訓練は続けたいから、俺の転移で城とここを往復したい。見返りは王宮を含めた王都周辺の情報。
成立すれば早めに帰る。長く滞在すると、ベルトリックと共に来た護衛や侍女はここの情報が得られる時間が長くなり、困るのは辺境伯側。
確かにその通りだ。
契約を成立させた後は、ひと月もしないうちにベルトリックは帰り支度を侍女にするように言った。
「僕に辺境の空気は合わない~。 訓練つら~い! もう王宮に帰りた~い! 」
ベルトリックの下手な演技に、こちら側の人間は皆、笑うのを必死に我慢したが、向こう側の護衛や侍女は、
「ホコリっぽいし、魔物は出るし、ロクな所ではありませんでしたね。ベルトリック様、賢明な判断です、さっさと帰りましょう」
顔をしかめ、もてなした礼はひと言もなく、帰って行った。
「あの腹黒なガキ王子、お前と婚約したいなんてふざけたことを言ってたぞ。アレはお前の好み?」
アルマリンを膝に乗せ、アルマリンの髪を指にクルクル絡ませながら聞いてみた。
「うーん、失礼だけど絶対イヤ。 信用できない人はムリ」
即答で拒否してくれたことにホッとした。
「っていうか俺と婚約してるしな」
「でもフェル、若返ったからなぁ・・・ふぁ、眠い・・」
俺に体を預けてくるアルマリンが可愛い。
信頼されてるよな?
生まれた時からずっと一緒にいるからかスキンシップは嫌がらないし、俺と2人でいる時はご令嬢モードにはならない自然体のアルマリン。
ハードスケジュールでも、夜は俺との時間を必ず作ってくれる優しいアルマリン。寝落ちしたアルマリンを抱き上げベットに運び、髪をなで、頬におでこにキスをする。1度寝るとちゃんとした睡眠時間をとるまで絶対に起きない無防備なアルマリン。
あー、早く結婚したい。
早く成人してくれ、アルマリン。




