4 ストーカー被害にあったと言われた次男ですが? ②
フェルナンドにそっくりな少年と、全身に淡く光を纏った、女神様と呼びたくなるような綺麗な女性が登場したら、マリアンナは血相を変えて逃げだした。
ふぅ、いなくなって助かった。
癇癪、わがまま、息子ノルンに対しての暴言。使用人への魔法攻撃、屋敷の破壊行為、私と父にはアルマリンを殺せと何度も訴えてきた。
マリアンナはやりたい放題で暴れまくった。
魔法でいつ攻撃してくるか分からない状態だったので、屋敷の中でも常に帯剣していた。
「あらあら。 良く耐えましたね」
ふわりと笑みを浮かべた後、心が落ちつくような、癒されるような、声まで素敵で自然と足元にひざまずきたくなる佇まいの女性。ディーテと名乗った美しい女性は周囲を見渡すと、タクトを振るように人差し指を動かした。すると、マリアンナによって半壊された屋敷をあっという間に修復して、怪我人も治った。
顔色を悪くしてヨロヨロとこちらに歩いてきた父が、突然私の足元でうずくまり、子供のように泣きだした。泣き声がうおんうおんと少々おかしい。
何があったかはわからないが、今起きたこの摩訶不思議な現象に、父は驚かないのか? 私はとても驚いたし、猛烈に感動していた。国に頼ってもどうせ援助は期待できない。貧乏脳筋辺境伯で全ての修繕費が捻出できるかかなり不安だったが元通りになった。怪我人も元気になった。何よりディーテ様の指の動きはとても美しかった。できればもう少し余韻に浸っていたい気分だったのに、涙と鼻水でボロボロの顔で俺を見上げてくる父。酷すぎる。嗚咽で何を言っているのかも聞き取れない。
「ふふ。 謝罪は後です。 ハイヤーさんに情報を送りますね」
ディーテ様はふわっと俺の前に飛んできて、人差し指で俺のおでこに触れた。
「 !!!っ 」
うわっ。 うおーっ。うげぇーっ。
次々にとんでもない情報が流れてきた。
まずディーテ様は本当に女神様だった。
マリアンナの父の現陛下の実兄アルベルト様と女神ディーテ様の息子がまさかのフェルナンド。
ディーテ様がアルベルト様にできる限りの加護を与えていたので、アルベルト様はどこにいるかは分からないが生きているはず。
ディーテ様は魔力の多い現陛下一家(陛下と闇魔法が得意な王妃に4人の子供が力を合わせた)に封印されていた。フェルナンドとアルマリンによって助け出された。
フェルナンドはマリアンナの闇魔法で操られていた。本当は子供だったのに、マリアンナが自分に侍らせるには幼すぎたので、無理やり成人した姿にされ、マリアンナと国から奴隷扱いされていた。
フェルナンドを除けば、マリアンナの魔力量は誰よりも上だったので、魅了が発動でき支配できた。
マリアンナに好意を持った者は魅了の影響が出やすいのだが、マリアンナの性格はとても捻くれていたので、第一印象が良くなかった者も多かった。ハイヤーもマリアンナの魅了の影響を受けていない。マリアンナの実の息子ノルンも母から相手にされていなかったので、当然良い印象があるはずもなく、全く影響を受けていなかった。
隣国の件は私が知ってしまっても良いのか?と思うほどにゴタゴタしていた。
父を王にする為に、弟王子ファミリーは一丸となった。特に子供達の団結力は凄く、力を合わせて兄王子である伯父や伯父を支える者達を容赦なく蹴落とした。その家族や親戚も2度と立ち上がれないほど惨く、残酷に。その上、最も邪魔な存在であった伯父と相思相愛の女神様を封印してしまうというかつて無い暴挙に出た。
今は陛下の子供達それぞれが成人し、今度は兄弟姉妹で王位を巡り、バチバチと派手に争っている。
マリアンナは魅了に味をしめて、魔法が使えないこの国の人間を自分の支配下に、いや奴隷にしようとしていたのかもしれない。
アルマリンは、私の父とマリアンナの子供だった。
だから父はあんなに泣いていたのか。
うーむ、何とも言えない気分だ。
とにかく1度もマリアンナに手を出さなかった私は間違っていなかったのだろ。偉いぞ、私。
父と兄と穴兄弟にならなくて本当に良かった。と、しておこう。
私の娘? 父の子供だから妹? アルマリンは産まれたばかりだが、女神ディーテ様とフェルナンドとは意思疎通がとれる?
前世の記憶がある?
はぁ???
これから、王宮に行ってこい?
え? 女神様もご一緒してくださる?
すぐに用意致しますっ!!
向かった王宮ですぐ、女神様のご指摘で我が脳筋辺境伯への予算をちょろまかす不正をしていた貴族が5人捕まった。
陛下から謝罪され、辺境伯へ30年分の予算をその場で用意してもらった。マリアンナの件もその場で手紙を書き隣国へ送ってくれた。女神様に修繕してもらったから大丈夫だと伝えたが、屋敷の修繕費も隣国へ請求して支払わせると言ってもらえた。女神様もご自分が直す前の屋敷の状態を陛下へ楽しそうに伝えていた。
私の知らない所で、王宮に文官として働いていた子爵家の次女のご令嬢が、長い間辺境伯領の為に王宮で戦っていた事を女神様に教えてもらい、ご令嬢に何度も頭を下げ感謝を伝えた。
彼女は辺境伯領へ度々足を運び、現状を記録していたそうだが、解決後も記録の為に辺境伯領へ来てくれた。
私が彼女を騎士団や領民達に英雄として話をしていたので辺境伯領で有名になり、もてはやされるのを避けた彼女はコソコソと記録をとるようになってしまった。
そんな彼女を探すのが私の楽しみになった。
マリアンナと離縁してから、彼女と再婚することになったのは自然な流れだった。
見つけだした時は、ガリガリで弱り果てていた隣国の王族アルベルト様は、女神様の献身的な看病と愛で今では元気になり、女神様と共に我が領で幸せに暮らしている。魔法の師匠としてノルンを立派な魔法剣士に育ててくださり、有事の際には率先して前線に立って檄を飛ばしてくださる、とても頼りになる存在だ。アルベルト様に忠誠を誓っていて、弟ファミリー達にとんでもない目にあわされた中で、なんとか生き残った隣国の貴族達も我が領へ移住して、徐々にだが笑顔を取り戻しつつある。
妹ではなく、娘として育てたアルマリンと、アルマリンにめちゃくちゃ執着しているフェルナンドに、英雄の我が妻。そして騎士として専念できるようになった騎士団員達。
魔法が使える者達に英雄に女神様。脳筋辺境伯領は、皆が移住したい領へと発展していった。
良かったね、ハイヤー。




