3 ストーカー被害にあったと言われた次男ですが? ①
長くなったので①と②にします。
今思えば、母と兄が乗っていた馬車の事故も故意だったのだろうか・・・。
母は、男しかいない俺達脳筋家族の、血の気が多い奴らばかりの脳筋領地の頭脳であり、華だった。
国から辺境伯騎士団への予算が少なく、騎士団員の肩書きだけでは食べていけない状態だった。平時、幹部の者達は我が家の執事や料理人として働いている。隊長クラスの者や、貴族の身分を持つ次男・三男でさえも、生家から移住してきてくれて、皆がそれぞれにこの領地に家を建てた。そして自主練や週に2度の全体練習をこなしながらも、畑を耕し、商売をしなければ生きていけない苛酷な環境だった。
それなのにいつだって有事の際は、辺境伯騎士団員としての顔に切り替え、すばやく屋敷に駆けつけ、状況を把握し、鍬を離して剣を持ち、弓を構え、乱れず一致団結していた。
皆には感謝しかない。
現状を理解してくれない国の中枢には呆れるばかりだ。
そんな理不尽な世の中で生きるスペアの俺だが、金はないが、他の騎士団員より恵まれた環境の中で、弱いわけにはいかず必死に鍛錬をした。
母は兄に対して、剣を振り回すだけでは当主になれないと口うるさく、俺から見てもかなり厳しい教育を行っていた。そうした母に鍛え上げられた兄は、学園に通う頃には智と武を兼ね備えた立派な次期辺境伯当主へと成長し、胸を張って王都へ旅立った。
兄を見送ると、母は俺にもスパルタ教育を始めた。
「兄を見てきたのだから勝手は分かるわね? 10年かけた教育をノイバーが卒業して帰ってくるまでに同じように仕上げるわよ?」
短い鞭をぱちんぱちんとしならせながらニヤリと笑う母は、かつての辺境の華、皆の太陽、可憐な妖精などという肩書きはどこにもなかった。
兄を不安にさせるより、見えない場でそれなりに私を仕上げておきたかった母の優しさだったのだろう。
兄を押し退けてまで当主になるつもりもなかった私も、母の判断に納得し、励んだ。
そうして兄が学園を卒業するまでに終わらせた。
「やっぱりハイヤーの方が早かったわね・・・。しかも7年も捲いたわ」
「ん?何ですか?」
「ふふ。 良く頑張ったと言ったのよ、さすが私の息子ね!」
「うわっ! ぐぇっ!」
頭をワシャワシャされた後に、ぎゅうぎゅうに抱きしめられた。
そんな母と兄が事故死してしまい、葬式を終え、喪が明ける、明けぬ関係無しに、マリアンナと私が結婚することになった。
出会った頃からマリアンナには良い印象はなかったが、マリアンナ本人の希望であること、父がマリアンナを守る為だと、妙に必死だったから承諾した。
兄の子ノルンを長男として育てた事に関しても、何も思う事はない。本当に我が子だと思ってる。たまに他人に言われて、あ、そういえば私でなく兄の子供だったと思い出すくらいだ。それくらいお互いに父、息子として違和感なく馴染んでる。
だが、これから産まれてこようとしているアルマリンに関しては違和感だらけだ。
なぜなら私とマリアンナは閨の関係になったことが1度もないからだ。
何度かマリアンナから誘われた事はあったが、正直に言うと兄が抱いたマリアンナに対して、そういう雰囲気に気持ちを持っていくことがどうしてもできなかった。それに息子ノルンの事を思うと私達の間に子供は必要ないのではないか?と考えてしまうのだ。現にノルンは賢く、立派に育っている。
逆に懸念点がある。魔法が使えるマリアンナが、息子ノルンに対して魔法を教える様子が全くみられないことだ。というか、そもそも息子に関心を持っていないのだ。
私は魔法についてお手上げ状態だ。
兄が亡くなってから、屋敷によく来るようになったフェルナンドに相談するしかなかった。この男に対しても良い印象はなかったが、話をしてみると見た目に反してしっかりとしていたし、ノルンに魔法を教え、騎士団員の指導も自ら買って出てくれた。
とにかく惚れた相手を間違えた哀れな男だった。
マリアンナが出産間近なると、私は不安でしかなかった。
周囲は私とマリアンナの子供だと思って、第2子の誕生を心待ちにしているだろうが、こちらはモヤモヤした気持ちのままだった。
そうして産まれてきた子供はマリアンナにそっくりな女の子。瓜二つすぎて、誰の種の要素もなかった・・・。
マリアンナに誰との子だ?と聞くのも面倒だ。
もう私の子で通すしかないだろう・・・。
そう決心して腕に抱こうとしたら、アルマリンの魔法で屋敷の外まで飛ばされた上に、フェルナンドと共に消えてしまった・・・。
理不尽すぎる・・・。
あなたも哀れだ、ハイヤーさん




