2 ハンサムな男と紹介されたストーカーは俺だが?
世に名を知らしめるなと何度言われてきたことか・・・。
あれこれ仕事を押しつけてくるくせに、派手に活躍してしまうと拷問される。そんな理不尽な世の中で求められてきたものは目立たずに任務を成功させる事のみ。失敗したら待っているのも、もちろん拷問さんなんですわ。
この世界を、この国を何度めちゃくちゃにしてやろうと思ったことか・・・。
親は選べない。
周囲は俺を消したいのに、生まれ持った俺の力が強すぎて誰も俺を殺せない。
そんなクソすぎる人生でたった1つだけ叶えたい願いがあった。それほど身の程知らずな要求ではなかったはずだ。
だが、それすらも認めてもらえなかった。
だから全てに決着をつけて国から出た。
もう顔色をうかがいながら許可を取る必要はないし、地面にへばりついて頭を下げることも2度としない。
自分の願いは自分で叶える事に決めた。
なのに、叶わなかった。
「ねぇフェルナンド。 次は絶対に女の子だと思うの。名前はアルマリンとつけるつもりよ。父や兄になるんじゃなくて、アルマリンの夫になってちょうだい」
デカくなった腹を撫でながら、上目遣いで俺におねだりする女。
俺はガキの頃からお前だけを愛しているんだ。
お前も俺と結ばれたいと願ったはずだろ?
俺はまたフラれた上に、お前が他の男とこさえた、まだ産まれてもいない娘と結婚させられるのか?
「私の魔力が兄達よりも少なかったら、世の中に公表できないあなたの魔力がもっと少なかったら、あなたと問題なく結婚できていたと思うし、なんなら私からプロポーズしていたわ。年の差なんて関係ないし、周囲が反対しても、あなたが成人するまでずっと待っていられたはずだわ」
この女、マジでズルすぎるだろ?
俺の事を愛してると言うくせに、お前じゃない女と結婚しろと言う女。
1度目の旦那が亡くなった時、お前から俺に手を伸ばしてきたよな? 全てを捨てて国から出たのに、土壇場で手を引っ込め、俺じゃない男と再婚した女。
あの時、お前から身を委ねてきたくせに、お前から俺の服に手をかけて誘ってきたくせに、お前の全てが手に入ると歓喜し、俺の興奮が最高潮になった時、笑みを浮かべながら全力で拒んだ女。
今まで受けてきたあまたの拷問のどれよりも、あれはひどい拷問に感じたわ。
もういい加減にしろと本気で思うのは、仕方のないことだよな? お前の自業自得だよな?
俺は怒りでお前にひどいことをしてしまう前に、お前なんか忘れることに決めた。
俺を愛してると言いながら、俺じゃない男と2度も結婚して、それぞれに子供をこさえておきながら、俺に手を伸ばすお前の頭はおかしい。お前のたらればに振り回されるのは、いい加減もううんざりだ。
お前のおねだりを叶えてやるのはこれで最後にする。
お前の望み通り、まだこの世に産まれてもいないアルマリンを愛してやるよ。どんな見た目でも、もし五体不満足で産まれてこようとも、俺の全てをかけて愛してやろう。お前は女だと言っていたが、もし男が産まれてきても必ず俺との婚約にこぎつけてやる。恋愛対象として愛してやる。
どっちの性別で産まれてこようとも、もう俺の決意は変わらない。
無事に産まれたアルマリンは、あの女にそっくりな顔と色でマジでたまげたわ。その上、魔力量は俺やあの女の遙か上だ。
屋敷でいちばん御しやすいグラバー爺さんと話し合いを重ねてきた。だからすんなりと俺と産声を上げたばかりのアルマリンの婚約は成立した。
爺さんがうおんうおんと変な声を出しながら、涙を流していたのは面白かった。
現当主ハイヤーとも何度か話したが、アイツの腹の中は読みづらく、こちらとしては少々やりにくい相手だ。他国と隣接する辺境を守る当主としてハイヤーは最適な人物なのかもしれない。
おっと、そんなことよりもアルマリンだ。
さっき産まれたばかりのくせに、無意識で放つ魔力の威力が凄すぎる。落ちつかせるためには、この屋敷でどうこうできる問題ではない。
アルマリンの泣き声ひとつで近くにいた使用人と産婆が吹っ飛んでいき、俺は慌ててアルマリンを抱えた。そのまま2人で転移しようとした俺に向かって、人攫い野郎と叫んで、剣を抜いたあの女の2番目の旦那ハイヤーも、アルマリンのあくびひとつで吹っ飛んでいった。
こりゃ、アルマリンがくしゃみでもしたら屋敷ごと吹っ飛んでしまいそうだな。はは。
とにかく早急にここから離れる必要があった。最後にあの女の顔を見て転移しようとした時、
娘に対してぽつりと出たあの女の言葉は、
「え・・・。 殺した方がよくない?」
今産んだばかりの娘に向かって魔法で攻撃しようとしてきた。防壁を張って対応する。あー、あっぶね。
「フェルナンド、防壁を解除してこちらにいらっしゃい」
急にどうしたんだ? この女は。
「・・・もうお前のおねだりは叶えないと決めた」
「いいから言うことを聞いてちょうだい! それは危険だわ!」
ただ魔力を制御できないだけだろう? なあ?
腕の中にいるアルマリンを見ると、俺の心臓あたりに手をあててきた。
「やめて! フェルナンドっ、早くそれを殺してっ!」
マリアンナが叫びながら、魔法を放つが防壁がちゃんとガードしてくれている。
「あう」
不思議なことに、アルマリンの手が俺の服を貫通して入り込んできて、心臓を掴まれたような感じがしたと思ったら、黒い玉を取り出した。
急速に頭がクリアになっていく。
「あう?」
「はは。サンキューなアルマリン」
あー、全部思いだした。
行き先は変更だな。喚くあの女には後でたっぷりと復讐してやる。
じゃあな。




