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【5000PV感謝】フリーダム・フロント   作者: ボナンザ・ソバイユ
日本選抜

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59/72

第59話 準決勝②

 白いシュトゥルム・ファルコンは、街路の端で、静止したままだった。

 

『……あれ? 迅選手、まだ動きません!?』

『どうしたんでしょう。いつもの開幕ダッシュが、ない……』

 

 迅の意識は、ほんの一瞬だけ、別の場所にあった。

 まだ完成しない、新しい機体のこと。それが、頭の隅に引っかかっていた。

 

(……いや、今は、目の前の試合だ)

 

 迅が、我に返り、スラスターに火を入れる。

 だが、その時には、もう、遅かった。

 

 さくせすTは、迅が呆けていた数秒の間に、すでに動き終えていた。

 市街地のあちこちに、小さな構造物が、設置されている。

 

『なんだ、あれは!? さくせすT選手、何かを大量に設置していますッ!!』

 

 迅が街路を駆け抜けようとした、その瞬間。

 設置された構造物の一つ――小さな「駅」のような建物から、わらわらと、人型のユニットが湧き出した。

 スーツ姿の、サラリーマン風の小型ユニット。それぞれが、銃を持ち、周囲のビルへ走り込み、窓から銃口を突き出す。

 

『――T(ターミナル)・ステーション』

 

 さくせすTの声が、響いた。

 

 ビルの窓という窓から、一斉に銃撃が放たれた。

 

 ダダダダダッ!!

 

「うわっ……!?」

 

 四方八方から降り注ぐ弾幕。迅は咄嗟にスラスターで回避するが、躱した先のビルからも、別のユニットが撃ってくる。

 

『なんですかこれッ!! ビルの中から、無数の射撃ユニットが湧いてますッ!!』

『私も初めて見ますよ、こんな技……! 建物の中から一斉射撃……街そのものが、敵になってる……!』

 

                ◇

 

 北海道。

 

 Tuckが、缶チューハイを掲げて叫んだ。

 

「出た、ステーション!! あれえぐいんだよなあ、街中が敵になるやつ!」

「さくTのお気に入りだろ、それ」

 

 キリンが、笑いながら酒を呷る。

 

「迅、いきなり囲まれてるぞ。開幕でぼうっとしてたの、完全に裏目だな」

「準備、間に合っちゃったもんな」

 

                ◇

 

 フィールド。

 

 迅は、弾幕の中を高速で駆け抜けていた。だが、躱すことに専念させられ、攻めに転じられない。

 

(……まずいな。完全に、相手のペースだ)

 

 迅は、弾幕の薄い方向へ活路を見出そうとした。

 ビルとビルの間の、狭い路地。そこなら、射線が限られる。

 

 迅は、その路地へ飛び込んだ。

 

 だが。

 

『そこ、行くと思った』

 

 さくせすTの声。

 路地の入口に、T(テリトリー)・セットのバリアが待ち構えていた。迅が飛び込んだ瞬間、出口にも、もう一枚のバリアが展開される。

 挟まれた。

 

 狭い路地で前後を塞がれた迅に、ビルの屋上のユニットが、上空から一斉に撃ち下ろす。

 

 ダダダダッ!!

 

「ぐっ……!」

 

 装甲に、弾が突き刺さる。

 迅は、サーベルでバリアを斬り裂き、強引に路地を脱出した。

 だが、出た先にも、弾幕が待っている。

 

『さくТ選手、迅選手の逃げ場を、最初から限定してたんですよ。安全な方向を作って、そこに飛び込ませる。そして、その先で待ち伏せる。……配置が、本当にうまい』

 

                ◇

 

 控室。

 

「あら、迅ちゃん、押されてるじゃないの」

 

 ラブマクスが、目を丸くした。

 

『……開幕の出遅れが、響いていますね』

 

 周李龍が、画面を見つめる。

 

「迅は、速度で先手を取る選手だ。それを、最初の数秒で逆転された。街を要塞化する時間を、与えてしまった」

 

 しろっぷが、ぽつりと言った。

 

「……迅、やっぱり、変だね」

 

                ◇

 

 フィールド。

 

 迅は、弾幕の合間を縫いながら、徐々に調子を取り戻し始めていた。

 

(……落ち着け。射線には、必ず、隙間がある)

 

 ユニットの射撃のタイミングを読み、リロードの隙を縫っていく。迅の速度が、本来の冴えを取り戻していく。

 ビルの壁を蹴り、空中を駆け、弾幕の網の目をすり抜けて、さくせすT本体へと迫る。

 

『迅選手、立て直したッ!! 弾幕を抜けて、さくТ選手本体に接近ッ!!』

 

 迅のシュトゥルム・ファルコンが、サーベルを構えて、さくせすTに肉薄した。

 

 あと、数メートル。

 

 その時。

 

 さくせすTの口元が、笑った。

 

「……来ると思ってたよ、迅くん」

 

 迅が接近してきた、その地点。

 それは、さくせすTが、最初から、最大の罠を仕込んでいた場所だった。

 

『――T(トルク)・スプリング』

 

 地面に仕込まれていたトラップが、起動した。

 迅の足元から、巨大なエネルギーの杭が、回転しながら突き上がる。

 

「なっ……!?」

 

 高速で接近していた迅は、避けきれなかった。

 突き上がる杭が、シュトゥルム・ファルコンの胴体を、下から打ち上げる。

 

 ドゴォンッ!!

 

 白い機体が、宙に舞った。

 

 無防備に宙へ投げ出された迅へ。

 さくせすTのレグルス・マークIIが、オーバーブーストの青い光を、全身に灯した。

 

 罠は、まだ、終わっていない。

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