表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【5000PV感謝】フリーダム・フロント   作者: ボナンザ・ソバイユ
日本選抜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
55/72

凪VS戦神覇王④

 深化したゴッドブレイカーが、地を蹴った。


 


 15メートルの巨体が、雪の大地を抉りながら突進してくる。だが、それは序の口に過ぎなかった。


 背中から生えた無数の龍頭が、それぞれ独立して、凪に襲いかかってきた。


 


 右から3本。左から2本。頭上から4本。


 


 別々の軌道を描く龍頭の群れが、凪を四方八方から噛み砕こうとする。


 


「っ……!」


 


 凪は、糸で氷柱に飛び移り、龍頭の包囲から逃れた。


 だが、逃げた先に、別の龍頭が待ち構えている。


 


 ガヂンッ!!


 


 間一髪、ピラリスで受けた。衝撃で氷柱が砕け、凪は再び宙へ投げ出される。


 


『凄まじい猛攻ッ!! 無数の龍頭が、凪選手を逃しません!!』


『深化前と、攻撃の手数が桁違いですよ。本体の突進に加えて、龍頭が独立して動く。これ、捌ききるのは……無理がある』


 


 凪は、水場の方向へ目をやった。


 もう一度、水蒸気で熱感知を潰せれば――。


 


 だが、戦神覇王のゴッドブレイカーは、水場との間に巨体を割り込ませていた。


 


『同じ手は、もう食わないよ』


 


 戦神覇王の声は、楽しげだったが、確かな警戒を含んでいた。


 水蒸気の一手を、すでに警戒している。あの水場に、凪を近づけない。


 


(……水を使えない。なら、近接で削るしかない。だが――)


 


 龍頭の一本が、凪の右肩に食らいついた。


 


「ぐっ……!」


 


 外装の装甲が、軋む。


 振りほどこうとした凪に、別の龍頭が胴体を打つ。


 


 ガキィッ!!


 


 アルカナ・オブスキュアの外装が、ひび割れた。


 


 HP6割。5割。


 


 凪は、ピラリスで龍頭の一本を貫き、強引に距離を取った。


 だが、深化したゴッドブレイカーの圧力は、止まらない。


 四裂した顎が、毒霧を撒き、炎で引火させる。範囲の炎が、凪の退路を焼く。


 炎を避ければ龍頭が来る。龍頭を捌けば本体の突進が来る。


 


 穴が、ない。


 


 HP4割。3割5分。


 


『凪選手、削られていきますッ!! 深化したゴッドブレイカー、止まりません!!』


『これは……厳しい。凪選手、ここまで完璧に組み立ててきたのに、深化の物量が、それを全部塗り潰してる』


 


                ◇


 


 北海道。


 


 画面を見ていた真摯なキリンが、缶ビールを置いた。


 


「……これ、凪やばくないか」


 


「あの蛇龍、えぐいなあ」


 


 たっくんが、唸る。


 


「キリン、お前、予選であの凪に勝ったんだろ?」


「いや、あれは運だよ運。ワンパン入っただけ。まともにやってたら、絶対勝てなかった」


 


 キリンは、画面の中の追い詰められたアルカナを見ながら、呟いた。


 


「……でも、あいつ、こんなもんじゃないと思うんだよな。なんか、まだ何か隠してる気がする」


 


                ◇


 


 フィールド。


 


 HP3割。


 


 龍頭の群れが、一斉に凪に襲いかかった。


 凪は、すべてを捌ききれなかった。


 


 右腕の外装が、龍頭に噛み砕かれる。


 左腕が、別の龍頭に潰される。


 


 糸の射出機構が、破壊された。


 


 もう、糸は使えない。


 移動手段を失った凪に、本体の突進が迫る。


 


 ドゴォンッ!!


 


 アルカナ・オブスキュアが、氷の大地に叩きつけられた。


 


 HP1割5分。


 


 外装が、半壊していた。


 あちこちの装甲が剥がれ、ひび割れ、火花を散らしている。


 


 そして。


 


 顔の黒いマスクに、亀裂が走った。


 


 ピシ、と。


 


 マスクが、割れた。


 


 


 その下から、現れたのは。


 


 人の、顔だった。


 


 


 作り物めいた、中性的な美貌。


 表情は、ない。


 ただ、両の目だけが、淡く、きらめいていた。


 


『……え?』


 


 戦神覇王の声が、止まった。


 


『なに、それ。中から、人の顔が……』


 


                ◇


 


 控室。


 


 周李龍が、椅子から腰を浮かせた。


 


「……今、マスクの下に、人の顔が見えた」


 


「えっ、何それ。ロボットじゃないの?」


 


 さくせすTが、目を見開く。


 ラブマクスも、画面に身を乗り出していた。


 


「……まさか」


 


 その中で、しろっぷだけが、動じていなかった。


 


 いつもの気怠げな表情のまま、画面を見つめている。


 


「……やっと出すんだ」


 


 ぽつりと、呟いた。


 


「凪の、本当の姿」


 


                ◇


 


 フィールド。


 


 HP、1割を切った。


 


 ゴッドブレイカーの龍頭が、とどめを刺そうと、半壊したアルカナに殺到する。


 


 その瞬間。


 


 凪の機体から、漆黒の光が、噴き上がった。


 


『――底力』


 


 


 半壊した外装が、内側からの光に押し出され、一斉に剥離した。


 ひび割れた装甲が、砕け散る。スラスターが、外殻が、ロボット型を装っていたすべての偽装が、剥がれ落ちていく。


 


 その内側から、現れたのは。


 


 人型だった。


 


 


 中性的な、作り物めいた美貌。表情のない顔。きらめく両目。


 漆黒のボディは、無駄のない、彫像のように完成された人の形。


 手のひらの中央に、円い穴が穿たれている。


 右手には、変わらず、巨大な杭・ピラリス。


 


 そして。


 


 背から、漆黒の翼が、左右に広がった。


 


 天使のような、それでいて堕ちたような、黒い両翼。


 


 完璧に作られた、意志を持つ堕天使の彫像。


 それが、底力の漆黒のオーラを纏って、雪の大地に立っていた。


 


『ヒューマン型ッ!?』


『嘘でしょう……!? アルカナ・オブスキュアは、ロボット型じゃなかった……! ヒューマン型だったんですッ!!』


『ずっと、ロボット型に偽装していたのか……! 外装で人型を隠して……全然、分からなかった……!』


 


 


 会場が、どよめいた。


 


 観客席が、騒然となる。誰もが、ロボット型だと思っていた機体が、人型の異形へと変貌した。


 


 


 ゴッドブレイカーの龍頭が、変貌した凪を、噛み砕こうと襲いかかった。


 


 


 黒い翼が、一度、羽ばたいた。


 


 


 凪の姿が、消えた。


 


 糸も使わず、ただ、翼で。


 深化したゴッドブレイカーの速度すら超える機動で、凪は龍頭の群れを、すり抜けていた。


 


 次の瞬間、凪は蛇龍の頭上にいた。


 


 右手のピラリスが、底力の漆黒のオーラを纏って、巨大化している。


 


『――』


 


 無言。


 表情のない顔のまま、凪は、杭を振り下ろした。


 


 ゴッドブレイカーの、深化した鱗の上から。


 


 ドゴォォォンッ!!!


 


 鱗が、砕けた。


 あれほど凪のビームを弾き、杭を弾いた、神話の鱗が。


 底力で強化されたピラリスの一撃は、その鱗を、表面から叩き割っていた。


 


『ギャアアアッ!?』


 


 ゴッドブレイカーが、初めて、悲鳴を上げた。


 


 HPが、大きく削れる。深化してから、初めての、致命的な一撃。


 


 


 雪の大地に着地した凪が、ゆっくりと、蛇龍を見上げた。


 


 黒い翼を広げた、表情のない堕天使が。


 


 きらめく目だけを、戦神覇王に向けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ