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フリーダム・フロント 〜追放された裏方ビルダー、天才少女の機体を完成させて環境を破壊する〜  作者: ボナンザ・ソバイユ
最悪のバディ

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違和感

 圧倒的だった。

 スタジアムの仮想フィールドに、また一つ、大破した機体の残骸が転がる。

「あはっ! 脆い脆い!」

 ダイブポッドの中で、しろっぷは無邪気に笑う。

 これで怒涛の十二連勝。対戦相手たちを、まるでおもちゃを壊すかのように蹂躙し続けている。

「……いいペースです。余剰コストの管理も安定している」

 観戦ルームでログを監視する凪も、小さく頷いた。

 彼の施した『一割の最適化』が、しろっぷの直感と凄まじいシナジーを生んでいる。

 だが。

 凪の視界の端で、ほんのわずかに――アラートが瞬いた。

「……ん?」

 次戦。

 相手は二丁のサブマシンガンを持つ、高機動型のヒューマン型。

 開幕と同時に、濃密な弾幕がクリサリスを襲う。

『――左の翼を盾にしてください。推進力を右脚に回して、死角から回り込めば――』

 インカム越しに、凪が“最も安全で確実な最適解”を指示する。

 しかし。

「……遅いっての!」

 しろっぷは、それを否定したわけではない。

 ただ、それより速い“線”を見つけただけだ。

 ブーストが火を噴く。

 左に回るはずだった機体が、強引に正面へ踏み込んだ。

『なっ……!?』

 弾幕のわずかな隙間を縫い、クリサリスが一瞬でゼロ距離へ到達する。

 振り抜かれた尾が、敵機の胴体を両断した。

『――Winner, しろっぷ』

 圧倒的な瞬殺。

 だが――。

「……しろっぷ、なぜ指示と違う動きを?」

「えー? でも勝ったじゃん。そっちの方が速かったし」

 悪びれもない返答。

 凪は無言でログを開く。

 被弾はゼロ。

 だが。

 右脚部と尾の接続ジョイントが、真っ赤に点滅していた。

(……限界が近い)

 しろっぷは、ただ最短で勝っただけだ。

 だがその“最短”の入力速度に、機体がついていけていない。

 ギリッ、と凪は奥歯を噛み締めた。

「……しろっぷ。今日はここまでにしましょう。根本的な改修を急ぎます」

 その提案が出た、直後だった。

「あ、なんか招待インビテーションきてる。ポチっちゃお」

「えっ」

 軽い音。

 次の瞬間、モニターが赤く点滅する。

『――プライベートマッチ・成立』

 凪の視線が、画面に固定される。

 表示された名前。

 それは――。

「あ、なんか変なの来たよ」

 しろっぷが楽しげに笑う。

 対戦相手――『迅・ソニック』。

 機体名、《シュトゥルム・ファルコン》。

 画面に展開されたその機体は、無駄を削ぎ落とした白い装甲。

 人型のシルエットを保ちながら、背部には巨大な高出力スラスターが直結されている。

 推進のために組まれた、直線的で洗練された構造。

 ――速さのための機体。

 その設計を、凪は一瞬で読み取った。

(……完成度は高い)

(だがこれは――“速さだけを最適化した設計”だ)

 防御も、拡張性も、すべてを削ぎ落とし。

 ただ一点、“最速であること”だけに特化した構造。

(無駄がない。だが……歪だ)

 だが同時に理解する。

(これを扱えるから、あの位置にいる)

 設計と操縦。

 その両方が、極端に噛み合った結果の機体。

 凪の背筋に、冷たいものが走る。

「しろっぷ、待ってください! 今のフレームで、そいつと当たるのは――!」

 その声を遮るように、オープンチャンネルが開いた。

『やあ』

 軽い声だった。

『噂のモンスターちゃん』

 それだけで、空気が変わる。

 凪の指先が、わずかに強張る。

「……だれ?」

 しろっぷが、興味なさそうに返す。

『昨日、ログ見てさ』

 少しだけ、楽しそうに。

『なんか変なの動いてるなーって思って』

 一拍。

『ちょっと、触ってみたくなった』

 無邪気だった。

 あまりにも。

(……遊びで来てる)

 この男は。

 頂点にいるくせに、“試す”感覚でここにいる。

「へえ」

 しろっぷが笑う。

「じゃあ――壊してみせてよ」

 即答。

『いいよ』

 軽い。

『どこまでいけるか、見てみたいし』

 それは挑発でも、威圧でもない。

 ただ純粋な“興味”。

 だからこそ、重い。

「しろっぷ、待ってください――!」

 凪が声を張る。

 未完成のフレーム。

 限界に近い出力。

 そして、速度に特化した頂点のプレイヤー。

 最悪の噛み合わせだった。

 だが。

「大丈夫だって」

 しろっぷが、楽しそうに笑う。

「私が、全部繋げてあげるから!」

 システム音声が響き渡る。

 カウントダウン。

 3。

 2。

 1。

 ゼロ。

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