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【5000PV感謝】フリーダム・フロント   作者: ボナンザ・ソバイユ
日本選抜

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42/72

第42話 第2試合

 1回戦第1試合、迅・ソニックの勝利。

 会場の興奮が、まだ冷めきっていなかった。

 観客席のあちこちで、今の試合の熱狂が飛び交っている。「重力操作を攻略した」「片腕もげてたのに勝った」「あいつ本当に人間か」。

 

 周李龍はダイブポッドから出てきた後、しばらく自分の控室の天井を見上げていたが、やがて立ち上がり、凪としろっぷの控室の扉をノックした。

 

「……邪魔するよ。自分の控室に1人でいると、反省会が止まらなくなりそうだから」

 少しだけ間を置いて。

「……それに、次の勝者が誰かも、見ておきたい」

 

 凪が扉を開けた。

 

『どうぞ。……お疲れ様でした、周さん』

「ありがとう。……いい試合だったとは思うけど、負けは負けだからね」

 

 周李龍は、ソファの端に座り、モニターに視線を向けた。

 メインステージでは、次の試合の準備が進んでいる。

 

『――1回戦第2試合、まもなく開始です! さくせすT選手とラブマクス選手は、ダイブポッドへお進みください!』

 

 MCの声が、会場に響く。

 

                ◇

 

 さくせすTの控室。

 

 さくせすTは、楽屋弁当の最後の一口を飲み込んで、立ち上がった。

「……ごちそうさまでした」

 

 端末を取り出して、グループチャットにメッセージを打つ。

『これから試合です。いってきます』

 

 即座に返信が並んだ。

『がんばれー キリンちゃんより』

『さくTなら大丈夫っしょ。楽しんでこい たっくん』

『まじで応援してる 俺らの代表頼んだぞ!』

 

 北海道の仲間たち。いつもフリーバトルで殴り合っている、地元の友達。

 本選に出場しているのは、自分だけだ。キリンちゃんは予選80位で惜しくも届かなかった。たっくんは大会に興味がなくてそもそもエントリーしていない。

 でも、みんなが見ている。

 

(代表して、楽しんでくるよ)

 

 ダイブポッドに向かう。

 

                ◇

 

 ラブマクスの控室。

 

 ラブマクスは、鏡の前でウィッグの位置を直していた。

「……よし」

 

 端末に、クランのチャットが流れている。

『マスター、がんばって!!』

『ラブリィちゃんの雄姿、見届けます!!』

『かわいいは最強って証明してきてください!!』

 

 ラブマクスは、その一つ一つに、丁寧に返信を打った。

『ありがとう。見てなさい。今日はアタシの最高のステージにするから』

 

 鏡の中の自分を、もう一度見つめる。

 のど仏が出た、ウィッグの長身。

 この世界で、アタシが一番かわいいと思うものを作って、それで勝つ。

 それが、クラン「⤴⤴れぼりゅうしょん」のリーダーとしての矜持だった。

 

(かわいいを突き詰めたら、最強になれる。……それを、今日証明する)

(そして、負けるくらいなら――全部壊してでも、勝つ)


 ダイブポッドに向かう。

 

                ◇

 

 北海道。

 

 画面の前に、2人の男が缶ビールを開けて座っていた。

 オンラインのプライベートラウンジに接続し、本選のライブ配信を映している。

 

「……さくT、本選出てんのマジでウケるんだけど」

 

 真摯なキリンが、缶ビールを傾けながら笑った。予選80位。自分はここで終わったが、地元の仲間が本選のステージに立っている。それだけで、悪くない気分だった。

 

「いやー、でもさくTだからなあ」

 

 隣に座ったTuck――たっくんが、画面を見ながら頷いた。

 

「あいつ、ハマるとえぐい連勝するじゃん。最終日も多分あれだろ、仕事終わって夜から一気に回したら止まんなくなったパターン」

「それで圏外から4位はおかしいだろ」

「まあ、さくTだし」

「いや、さくTだしじゃなくてさ……」

 

 キリンはため息をつきながらも、口元は笑っていた。

 

「……相手、ラブマクスか。あのクランのリーダーだろ。結構やるって聞くぞ」

「うん。でもさくTの射撃に対応できるかだよな。あいつ、"見てから当てる"タイプじゃないからさ」

「置き撃ち全部当ててくるやつな。あれマジでズルい」

「……あ、始まる」

 

 画面の中で、フィールドがロードされていく。

 

「楽しんでこいよ、さくT」

 

 キリンは、缶ビールを掲げた。

 

                ◇

 

 凪としろっぷの控室。

 

 モニターに、フィールドがロードされていく。

 

「この2人、どう見ますか」

 

 周李龍が、腕を組みながら凪に尋ねた。

 

『さくせすTは、中距離の制圧型ロボットです。ログを見た限り、射撃の精度が異常に高い。あの命中率は、相当な場数を踏んでいないと出ません』

「ラブマクスのほうは?」

 

 凪は、少しだけ間を置いた。

 

『……正直、読めません。機体のログは見ましたが、あのヒューマン型の設計思想が、僕の理解の外にある』

「理解の外?」

『装飾に、ステータスに影響しないレベルのディティールが詰め込まれています。宝石の一つ一つに、微細なテクスチャが設定されている。普通、そこまでやる意味がない。……なのに、それが何かの能力を発現させているようなんです。……理屈で組んだ構成じゃない。完成度で、理屈を上書きしている』

 

 周李龍が、僅かに目を細めた。

「完成度ボーナスの、極限型か」

『ええ。……僕とは違うアプローチですが、あれもビルダーとしては相当な腕です』

 

 真白が、ソファの上であぐらをかきながら呟いた。

「で、どっちが勝つの?」

 

 凪と周李龍が、同時に黙った。

 

「……分からないですね」

「同感だ」

 

 フィールドのロードが完了した。

 

 スクリーンに、2つの機体が映し出される。

 

 左側。堅牢な中量級ロボット型。両肩にT字型のエネルギーブレードが収納され、背部に大型のビームユニットが装備されている。スーパーロボットを思わせる、力強く直線的なフォルム。

 《レグルス・マークII》。

 

 右側。小柄な幼女体型のヒューマン型。全身をゴスロリの衣装が覆い、ティアラ、指輪、ピアス、ブレスレット、至るところに宝石が散りばめられている。その宝石の一つ一つが、照明を受けて異常な輝きを放っていた。右手には、装飾過多の小さな銃。

 《ラブリィ・エクスプロージョン》。

 

『さあ、1回戦第2試合!! ダークホースさくせすT選手と、華麗なるクラン長ラブマクス選手!! どんな戦いが待っているのか!!』

 

 フィールドは、都市部の広場。噴水と街路樹が点在する、中距離戦に適したステージ。

 

 2つの機体が、広場の両端に向かい合った。

 

「よろしくお願いします、ラブマクスさん」

 

 さくせすTの声は、緊張しているようで、どこか楽しそうだった。

 

「あら、礼儀正しいのね。……アタシもよろしく。手加減はしないから、覚悟しなさい」

 

 ラブマクスの声は、いつも通りの華やかさだった。だが、構えたラブリィ・エクスプロージョンの佇まいには、一切の隙がなかった。

 

 試合開始のカウントダウン。

 

 3。2。1。

 都市の噴水が、わずかに揺れた。

 風が止まる。


 ゼロ。

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