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【5000PV感謝】フリーダム・フロント   作者: ボナンザ・ソバイユ
日本選抜

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43/72

第43話 さくせすT vs ラブマクス①

 試合開始。

 さくせすTの《レグルス・マークII》が、中距離を確保しながら背部のビームユニットを構えた。

 

「――T(トリガー)・ショット!」

 

 T字型のビームが、3発同時に放たれた。

 1発は真っ直ぐラブマクスへ。残り2発は、左右の逃げ道を塞ぐように扇状に広がる。

 

『おおっ!! 開幕からT字ビーム3連射!! 迫力雀士さん、これは!?』

『逃げ道を塞ぐ配置撃ちですね。真ん中を避ければ左右のどちらかに当たる。初手から射線管理が完成してる……えげつない精度ですね』

 

 ラブリィ・エクスプロージョンの小さな体が、3本のT字ビームの隙間を、最小限の動きで縫った。右に半歩、腰を僅かに落とし、ティアラの先端がビームの余波で煌めく。

 かすりもしない。

 

『避けた!! あの狭い隙間を!!』

『体格が小さいから被弾面積が少ないんですよ。幼女体型のヒューマン型、ここで活きますね。……あの見た目にもちゃんと意味がある』

 

 ラブマクスが、右手のデコ銃を持ち上げた。

 銃口に、唇を寄せる。

 キス。

 

 銃身に刻まれた宝石が、ピンク色に発光した。

 

「――能力発動。愛ラブ・ずっきゅん」

 

 6発。

 ハート型のエフェクトを纏った弾丸が、さくせすTに向かって飛んでいく。

 

 さくせすTは、ハート弾の軌道を見て、冷静に対処した。

 噴水の陰に身を寄せ、6発すべてを噴水に吸わせる。水柱が上がり、ハート型のエフェクトが噴水の水面に弾けて消えた。

 

「うわ、あっぶな。あのキスの弾、当たったらメロメロになっちゃいそうだな」

 

 さくせすTが、軽い声で笑った。

 

「弾数6、キスでリロードかー。……スキつけるかな、キスだけに」

 

「あら、うまいこと言うじゃないの」

 

 ラブマクスが、デコ銃を下ろしながら笑い返した。

 

 さくせすTは、噴水の影から射線を通しながら、ラブマクスの動きを追っていた。

 ビームユニットを構え直す。

 今度は、ラブマクスの足元を狙った。

 

「――T(テリトリー)・セット!」

 

 T字型のビームが地面に着弾し、光の壁が展開された。

 ラブマクスの左側の退路を塞ぐ、半透明のバリアフィールド。

 

『ビームがシールドに!?』

『T字ビームの応用ですね。着弾点にバリアを展開して、相手の動ける範囲を制限する。射撃で当てるだけじゃなく、盤面を作れるのか。これは厄介だ……』

 

 左の退路が消えた。

 残るは右と後方。

 さくせすTは、その2方向に向けて、さらにビームを放った。

 扇状に広がるT字の弾丸が、ラブマクスの右側を掠める。直撃はしない。だが、右に大きく動けば当たる位置に、正確に「置いて」ある。

 

 さくせすTの射撃は、「見てから当てる」タイプではない。

相手が動く先を読み、そこに弾を置く。相手が動けば当たり、動かなければ次の射撃でさらに選択肢を潰す。一歩動くごとに、次の一歩の選択肢が減っていく。



 ラブマクスの動ける範囲が、じわじわと狭まっていた。

 

                ◇

 

 北海道。

 

「おー、さくTの配置撃ちだ」

 

 たっくんが、画面を見ながらポテチを口に放り込んだ。

 

「あれえぐいんだよなー。逃げ場どんどんなくなるの」

「お前がいっつもやられてるやつな」

「いや、俺はちゃんと抜けるし。……たまに」

「たまにかよ」

 

 キリンが苦笑する。

 

「でもさ、相手もうまいぞ。あの避け方、体格差利用してギリギリ抜けてる」

「うん。あのちっちゃい機体、見た目の割にやるね」

 

 たっくんが、画面に目を戻した。

 

「あいつ、"見てから当てる"タイプじゃないからさ。置き撃ち全部当ててくるんだよな。あれマジでズルい」

「わかるわ」

「……でも、さくTがあのモードに入ったら、そろそろ詰まるぞ」

「だな」

 

                ◇

 

 広場のフィールド。

 

 ラブマクスの周囲に、T字バリアの壁が3枚展開されていた。

 左、右後方、右前方。動ける方向が、正面のみに絞り込まれている。

 

(……やるわね、この子。射撃で盤面を作ってくるタイプか。アタシの動きを見てるんじゃなくて、動く先に撃ってくる)

(でも、それで詰ませられるほど、単純じゃないわよ)


 

 ラブマクスは、冷静に状況を分析していた。

 デコ銃の弾は撃ち切っている。キスで補充する隙を作るには、相手の射線から一瞬でも外れる必要がある。だが、その「一瞬」すら、配置撃ちで潰されている。

 

(まいったわね。……でも)

 

 ラブマクスの目が、正面を見据えた。

 正面だけが、開いている。

 

(正面が開いてるってことは、そこから来るってことでしょ)

 

 その読み通りだった。

 

 さくせすTが、噴水の影から姿を現した。

 ビームユニットを構えたまま、正面から、ラブマクスに向かって歩いてくる。

走るのではない。歩く。

一歩ごとに射線を調整し、逃げ場を完全に封じながら、確実に距離を詰めてくる。

焦りは一切ない。逃げられないと分かっている者の歩き方だった。

 

「追い込んじゃってごめんね、ラブマクスさん。でも、これが俺のやり方なんで」

 

 さくせすTの声は、フランクだが、どこか申し訳なさそうだった。

 

 ビームユニットの照準が、ラブマクスの胸部を捉えた。

 中距離。もう逃げ場はない。

 

 ラブマクスは、追い詰められた状態で、笑った。

 

「……あら。追い詰めたつもり?」

その瞬間、ティアラの宝石が、わずかに脈打った。

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