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フリーダム・フロント 〜追放された裏方ビルダー、天才少女の機体を完成させて環境を破壊する〜  作者: ボナンザ・ソバイユ
日本選抜

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20/23

選抜予選

ガレージのメインモニターに、新たなシステム通知が表示された。

 凪としろっぷは、並んでその文面を確認する。

『日本代表選抜 オープン予選 正式要項』

『期間:7日間リアルタイム

『形式:ポイント制ランクマッチ』

『勝利によりポイントを獲得。連勝ボーナスあり』

『期間終了時点でのポイント上位4名が、本選トーナメントへの出場権を獲得』

『参加条件:ランクマッチにおいて一定以上のレートを保持するプレイヤー』

「……ギリギリだったね」

 しろっぷが、凪を横目で見た。

『ええ。間に合ったのは昨日の深夜です』

 参加条件のレート。アルカナ・オブスキュアでランクマッチを始めてから、凪はほとんど寝ずに戦い続けていた。クルスを倒した後も、黙々とポイントを積み上げ、条件ラインをぎりぎりで超えた。

「何戦やったの」

『……数えていません』

「嘘。あんた絶対数えてる」

『……八十七戦です』

「バカじゃん」

 しろっぷが呆れたように笑った。だが、その目は笑っていなかった。

 凪の右手の指先が、わずかに震えているのを、彼女は見ていた。

「ねえ凪」

 しろっぷが、ダイブポッドの縁に腰かけて、足をぶらつかせながら言った。

「全員ぶっ壊してきて」

 軽い声だった。

 いつもの、しろっぷらしい声。

『……ええ。そのつもりです』

 

                ◇

 

 翌日。正午。

 

『――日本代表選抜 オープン予選 開始』

 

 レート条件を満たしたプレイヤーたちが、一斉にランクマッチの海へと放り込まれた。

 その中の一人。

 プレイヤーネーム『ギガフォート』は、自信に満ちた表情でダイブポッドに身を沈めていた。

(やるぞ。今日が、俺の人生最大の舞台だ)

 機体名、《バスティオンMk-III》。

 全身を分厚い複合装甲で覆った、超重量級のロボット型。機動力を犠牲に、防御力と火力を極限まで引き上げた要塞機体だ。

 両腕に搭載されたビームガトリングガンが、開幕と同時に回転を始める。弾幕の密度は、上位帯でも間違いなくトップクラス。この光の壁を抜ける機体など、そうそういない。

(装甲はAランク以上。火力も十分。ビーム弾幕を張り続ければ、近距離特化にも対応できる。仮に迅・ソニックが相手でも、この装甲なら――)

 マッチング完了。

 フィールドは市街地。

 対面に現れた機体を見て、ギガフォートの思考が、一瞬止まった。

 白い。

 無駄を削ぎ落とした、白い機体。背部に直結された巨大な高出力スラスター。

 《シュトゥルム・ファルコン》。

(……迅・ソニック)

 心臓が跳ねた。

 だが、すぐに自分を落ち着かせる。

(大丈夫だ。ビーム弾幕を張れ。この密度を正面から抜ける機体はいない)

 試合開始。

 ギガフォートは、迷いなく両腕のビームガトリングを全開にした。

 光の奔流が、白い機体めがけて殺到する。

 

 迅の機体が、正面から突っ込んできた。

 

(……は?)

 避けない。

 白い機体の右手に握られたサーベルが、ビームの奔流に突き刺さった。

 刀身が、青白い光を散らしながら、ビームの束を縦に切り裂いていく。

 耐ビームコーティング。サーベルの刀身にだけ施された、最小限のコート処理。拳にコーティングを集約する近距離テンプレの理論を、この男はサーベル一本に凝縮し、さらに攻撃の軌道そのものに組み込んでいた。

(切って、る……? ビームを、斬りながら進んでる……!?)

 密度を上げる。射角を変える。ビームガトリングの銃身が赤熱するほどの連射。

 だが、白い機体は光の嵐の中を、ビームを切り裂きながら一直線に加速していた。

(嘘だろ……弾幕の意味がない……!)

 迅の声が、オープンチャンネルに流れた。

『いい弾幕だな。密度は悪くない』

 軽い。あまりにも軽い声。

 次の瞬間、ビームの壁を切り裂き終えたサーベルが、そのままの勢いでギガフォートの左腕を根元から薙ぎ払った。

『あっ――』

 火力が半減する。弾幕に穴が空く。

 二度目の斬撃。右腕のガトリングも、地面に転がった。

 

(う、嘘だ。ビームを切りながら、そのまま俺ごと……)

 

 両腕を失ったバスティオンが、ただの的になった。

 迅は、急ぐ様子もなく、ゆっくりと距離を取った。

 

『あのさ』

 迅の声が、やけに穏やかに聞こえた。

『装甲、すごく硬いな。正面からだと抜けなかったかも』

 それは、嘘偽りのない称賛だった。

 だが、同時に残酷な事実を突きつけている。装甲を抜く必要がなかった、と。

『じゃ、おつかれ』

 最後の一撃は、見えなかった。

 気づいた時には、コアが貫かれていた。

 

『――Winner, 迅・ソニック』

 

 爆散する要塞の残骸を背に、白い機体は、もう次のマッチングを開始していた。

 

                ◇

 

 同時刻。

 凪のガレージ。

『――Winner, 凪』

 一戦目。勝利。

 相手は中堅のロボット型。杭の一突きで、コアを貫いた。

 

『現在ポイント:120』

 

 五戦目。

『――Winner, 凪』

『現在ポイント:710』

 

 十戦目。

『――Winner, 凪』

『現在ポイント:1,580』

 

 十戦目の相手は、凪の戦績を調べてきていた。

 杭を警戒して距離を取り、糸を警戒して高所を避ける。凪の過去の試合から、明確な対策を組んできた中堅上位のプレイヤー。

 凪は、三手で仕留めた。

 対策された動きの、さらに外側に解答を置く。相手が「読んだ」つもりで踏み込んだ座標に、既にピラリスの先端が待っている。

(……三手)

 凪は、ポッドの中で静かに呟いた。

(もっと、削れる)

 連戦を重ねるたびに、凪の立ち回りから無駄が削ぎ落とされていく。疲労で精度が落ちるのではなく、戦えば戦うほど手数が減り、決着が早くなっていた。

 

 画面の端で、リアルタイムのランキングボードが更新されていく。

 上位の顔ぶれが、少しずつ固まり始めていた。

 一位の名前は、最初の一時間から一度も動いていない。

 

 1位 迅・ソニック ―― 3,240pt

 2位 マセガキィ  ―― 1,890pt

 

 凪は、その差を一瞥した。

 一位と二位の間に、すでに千以上の断崖がある。同じ時間で、倍近い。連勝ボーナスの倍率が、すでに別次元に達している。

 

(……化け物め)

 

 だが、凪の指は止まらなかった。

 二十戦目。三十戦目。ポイントは積み上がり、順位はじわじわと上がっていく。

 

 しろっぷは、自分のダイブポッドで練習をしながら、時折、凪のモニターをちらりと覗き見ていた。

 ランキングボードの中で、「凪」の名前が、ゆっくりと上へ登っていく。

 

機体名:バスティオンMk-III

タイプ:ロボット型


HP:160

攻撃:200

防御:200

スピード:60


メイン武装:連装ビームガトリング×2(80)

サブ武装:耐ビームコーティングシールド(50)

補助:高トルクスラスター(70)


総コスト:820 / 1000

余剰コスト:180

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