6 ミノタウルス討伐
「攻撃はまともに受けるな!受け流せ!!足元を狙うんだ!!」
南門へと駆けつけると、そこはすでに戦場と化していた。
「思ったより大きいじゃない!! こんなの無理よ!」
避難する住民たちに逆行しながら、アキが悲鳴を上げる。
「落ち着いてアキ! 私たちにはあなたがいるじゃない。最高の見せ場よ! ポチ、行くわよ!」
「バウッ!」
神狼の幼体(従魔扱い)であるポチは、私の足元でやる気満々に尻尾を振っている。
まずはあのミノタウルスの視界に入って認識させないといけない。その後、私たちの後ろにみんなを避難させないといけない。避難の時間が必要ね。
そして最後に、ミノタウルスの目標をアキとする!
私はノートを広げ、物語を紡いだ。
『前に進み出た少女に目を奪われ、ミノタウルスの足が2分間停止した。その間に冒険者たちは避難を完了。完了後、ミノタウルスは、アキに向かって突進した。しかし、激突の衝撃で倒れ込み、そのまま失神した。冒険者たちは剣、斧で切り裂いて倒した』
これでどうだ?!
「初心者がこんな所に出てくるなーー!!」
「わかってます!けど、二人のスキルで戦うんです!!」
ポチとアキが冒険者の間を掻い潜って前に出た。
よし!ミノタウルスがアキを認識した!
【発動!】
ミノタウルスの足が止まった。
「とにかく後ろに下がってーーー!!もうすぐスキルが発動します!!」
マジかっ!こんなんで上手くいくのか?
みんなザワザワしながら急いで下がった。
「ミノタウルスが倒れた後は攻撃です!!失神してますから息の根を止めてください!!!」
「おーー!!よっしゃー!あとは任せなっ!!」
2分経ち、止まったままのミノタウルスがアキを見据えたまま飛び出してきた。
「アキ、そのまま動かないで! 動いたら負けよ!」
「ひえええええ! もうどうにでもなれーーー!」
アキが目を瞑って頭を抱えた瞬間。
ドゴォォォォォォン!!!
周囲の地面が陥没するほどの衝撃波が上がった。
しかし、次の瞬間に悲鳴を上げたのはミノタウルスの方だった。
アキの【物理攻撃100倍反射】が発動。突進エネルギーが100倍の衝撃となってミノタウルス全身へと逆流したのだ。
ドカァァァアン!!!
メキメキメキ、バリバリィィィン!!
ミノタウルスは突撃の100倍の威力で後ろの森に叩きつけられ、失神した。
「突撃だー!!!」
砂埃の中から、冒険者が剣を突き上げ走っていった。
冒険者たちの剣や斧が眩い光を放ち始めた。
あの硬いミノタウルスが切れるぞーー!冒険者たちは興奮しながら剣を振り回していた。
無傷のアキがゲホゲホと咳をしながらこちらにやってきた。
「……ねえ、この国の裏側まで衝撃行ってない?」
「大丈夫、これぞ無敵のパッシブスキルよ。さすがね、最強のスキルだわ!」
「……やった、勝ったぞおおおお!」
南門に、冒険者たちと衛兵たちの歓声が響き渡った。
「ふぅ、これで終わったわね」
私は満足げにノートを閉じ、ペンを胸ポケットに差した。
「本当に片付いちゃった……。っていうか、しおりのそのノート、便利を通り越して凶悪すぎるんだけど」
呆れ果てるアキの足元で、ポチが「ガルルル」と誇らしげに胸を張っている。従魔としての初陣は大成功だ。
歓声の中、冒険者たちが「おい、さっきの光はなんだ!?」と、興奮しながら私たちの方へと近づいてくるのが見えた。
「アキ、ポチ。目立ちすぎるのは主人公の宿命だけど、説明がめんどくさいから、ここは一旦……」
「「バックレるわよ(ね)!」」
私たちは息を合わせて、勝利に沸くギルドの面々を置き去りにしたまま、路地裏へと全速力で逃げ出すのだった。




