2 討伐(?)、森を出よう
気がつくと、私たちは薄暗い森の中にいた。
「……ここ、どこよ」
アキは震えながらキョロキョロしていた。
遠くから「ガルルル……」と不穏な唸り声が聞こえてくる。現れたのは、大型犬ほどある狼ーーファンタジーの定番『ウルフ』だ。
「出たわね、噛ませ犬!」
私は不敵に笑い、さっそく女神からもらったスキルを発動した。
「喰らいなさい! 【文字具現化】ーー『爆発』!!」
私の叫びとともに、空中に光り輝くフォントで【爆発】という二文字が浮かび上がった。
そしてーー。
ドガァァァァン!!!
「きゃあああ!?」
凄まじい爆風と熱風が、私とアキを直撃した。
二人して地面をごろごろと転がり、顔中すすまみれになる。ウルフは爆風に驚いて、一目散に逃げて行ってしまった。
「……ゲホッ、ゲホッ! ちょっとしおり!! 今の何よ!?」
さっきまで震えていたアキが、髪をボサボサにして怒鳴る。
「おかしいわね……。私のイメージでは、ウルフの足元だけがピンポイントで爆発するはずだったのに……。まさか、文字通り『ただその場で爆発が発生する』仕様だったなんて……。有効範囲の設定が甘かったわ……」
「小説の書き直しみたいに言わないでよ! 危うく自爆で第一話で打ち切りになるところだったじゃない!」
アキは立ち上がり、服の砂を払う。
その時、森の奥からさらに巨大な、大人の背丈ほどあろうかという『キングウルフ』が姿を現した。先ほどの爆音に引き寄せられたらしい。
「ひっ、今度はボスキャラ!?」
私が腰を抜かす中、キングウルフは容赦なくアキに向かって突進し、その巨大な前足でアキを叩き潰そうと振り下ろした。
「間に合わない!アキ、逃げてーー!」
ドカァァァァァン!!!(本日二回目)
凄まじい衝撃音が響き渡る。
しかし、吹き飛んだのはアキではなかった。キングウルフが、まるで目に見えない壁に激突したかのように、凄まじい勢いで遥か彼方の岩盤まで消し飛んでいったのだ。ズシン、と森が揺れる。
アキは無傷のまま、ぽかんと自分の手を見ていた。
「……あ、そういえばさっき、物理攻撃を100倍にして反射するとか言ってたっけ」
私はその光景を見上げながら、震える手でノート(異世界に来てもなぜか持っていた愛用品)にメモを取った。
『設定:十鳥アキ。歩く人間兵器。怒らせると世界が滅ぶ。主役より強い』
「勝手に私のキャラシートを不穏な内容に書き換えないで!!」
「怒んないでよ。それよりやっぱりお金がいるわね。近くの街に行って冒険者ギルドに行くべきよね」
「はぁ…賛成。それから食事と宿。とにかく今日はもう動きたくな………ん?ねぇ、しおり。あの落ちてる袋って何かしら?」
私は見慣れない袋を、親指と人差し指で摘み持ち上げた。
『初期装備』
「うゎっ!女神様がくださったのね。ありがたいわ」
中身は洋服一式、靴、短剣、携帯食、水筒、この世界の貨幣などだ。(全てこの世界の物だと思う)
「よくわかんないけど、とりあえず着替えてこの森を出よう」
私たちは入ってた洋服に着替えて森を下る事にした。
道中、ジャーキー(携帯食)を齧りながら、私はスキルについてわかった事をアキに話した。
「私の【文字具現化】スキル、さっきの失敗で仕様を理解したわ。この能力、名詞や動詞じゃなくて『小説の一節』をそのまま具現化できるみたい」




