11. 忘れてた!最強のポシェット型マジックバッグ作成
「ーーあ、ちょっと待って。一番大事な定番アイテムを忘れてたわ!」
高級商店『グレイシア商会』を出ようとした瞬間、私はガタッと足を止めた。旅の準備といえば、これがないと始まらない。
「なに??しおり、急に大きな声出して」
アキが白猫の丸盾を大事そうに抱えながら振り返る。
「アキ、これから王都への長い旅よ? さっき買ったポチの高級おやつ10袋とか、私のノートとか大量のインクとか、これからの荷物をどうやって運ぶのよ。手荷物でパンパンになったら、ビジュアル的にも映えないじゃない!」
「言われてみれば……。異世界といえば、荷物がたくさん入る『マジックバッグ』とかあるんじゃないの?」
「店主さん! この店にマジックバッグって置いてる?」
私が尋ねると、店主は困ったように顔をしかめた。
「ああ、ございますが……。一般的なものでも、リュックサックほどの大きさで『リンゴが50個入るかどうか』というレベルですな。それ以上の大容量のものは国宝級でして、我が商会でも滅多に手に入りません」
「ボソッ……、フッ……、それなら作ればいいのよ」
店主に挨拶して、私たちは足早にその場を去った。
人気のない所で、私は自分のバッグから、日本から持ってきたお気に入りの「肩掛けのポシェット」を取り出した。
お財布とスマホが入るくらいの、小さくて可愛い布製のポシェットだ。
「これに私の【文字具現化】で『追加仕様』を書き込んだ。
私は購入したばかりの『白紙の魔導ノート』を開き、羽ペンを走らせた。
今回は実用性を重視して、設定を箇条書きで極限まで緻密に盛り込んでいく。
『ーー龍崎しおりの愛用する肩掛けのポシェットは、彼女の紡ぐ言葉によって、容量特大の【マジックバッグ】へと変化した。その仕様は以下の通りである。』
* 【無限収納】: 外見の小ささに反し、内側には広大な亜空間が広がり、どれだけ荷物を入れても重さは1グラムも変わらない。
* 【時間停止】: 収納した物質の時間は完全に停止する。熱々の料理は熱々のまま、冷たいアイスは冷たいまま、永久に腐らず保存される。
* 【一覧表(メニュー画面)】: バッグの内側を覗き込むと、中に何が入っているかが頭の中に『電子書籍の目次風リスト』として一瞬で表示され、念じるだけで目当てのものが一瞬で取り出せる。
* 【使用者制限】: 龍崎しおり、十鳥アキ、および従魔ポチの3人のみが使用可能。それ以外の者が触れても、ただの空っぽの可愛いポシェットにしか見えない。
* 【盗難防止(自動帰還)】: 万が一、他人に盗まれたり紛失したりした場合、しおりが「戻れ」と念じるだけで、強制的にしおりの肩へと瞬間移動して戻ってくる。
書き終えた瞬間、私の手の中のポシェットが、淡い七色の光を放った。
見た目は元の可愛いポシェットのままだが、内側からほのかに時空の歪み(?)のような、凄まじい魔力を感じる。
「よし、完成! 私の特製マジックポシェットよ!」
「ちょっとしおり……。箇条書きでやりたい放題設定を詰め込むのやめなさいよ! 国宝級どころか世界がひっくり返るレベルじゃない!」
アキがポシェットを覗き込みながらツッコミを入れる。
「ガル(どれ、試しに私の高級おやつを入れてみよう)」
アキのフードから身を乗り出したミニポチが、さっき買ったジャーキーを一袋、ポシェットの中にポイと落とした。
ポシェットの小さな口に吸い込まれるように、ジャーキーの袋が消える。
「あ、本当だ。中を覗くと……私の頭の中に『・ドラゴンチキンのジャーキー ×1』って文字が浮かび上がってきた!」
アキが目を輝かせる。
「でしょ? じゃあ、残りの9袋も、さっき買った盾も、全部ここに入れちゃいましょう!」
私たちは買ったばかりの大荷物を、小さなポシェットの中へ次々と放り込んだ。
どれだけ入れても、ポシェットは膨らむこともなく、肩に掛けた時の重さは「ほぼゼロ」のままだ。
「ふふん、これで本当に旅の準備は完璧よ! どんな戦利品も、どんなご当地グルメも、全部この中に詰め込んで王都へ持っていけるわ!」
「ワン(主殿、これで旅の途中でどれだけ肉を買い込んでも安心だな!)」
最強のパッシブ盾、喋るマスコット神狼、そして世界の設定を書き換えるマジックバッグを手に入れた作家(私)。
あまりにも隙のない装備を整えた私たちは、満を持して、明日からの王都への旅路に胸を躍らせるのだった。




