12. 判明した『世界の真実』
「ーーねえ、ギルドマスター。ちょっと一つ、一番大事なことを聞き忘れてたんだけど」
マジックバッグも完成し、いよいよ翌朝の出発を待つばかりとなった前夜、私たちは再びギルドマスター室に呼び出され、アルベルトさんから王都への移動ルートが記載された地図を受け取っていた。
地図を広げながら、私はずっと気になっていた『最大の謎』を口にした。
「そもそも、どうして私たち、この世界に召喚されたのかしら? 私たちの前に現れたあの女神様、やたらと適当で引き気味だったし、なんだか妙にドタバタしてた気がするのよね」
私の問いに、アルベルトさんはモノクルの奥の目をスッと細め、重々しく頷いた。
「よくぞ気づかれました。実は……女神様の信託がありまして、あなた方の召喚には、非常に不穏な『裏』があるのです」
アルベルトさんは部屋の鍵を閉め、声を潜めて語り始めた。
「本来、あなた方を召喚したのは、この『ラインハルト王国』ではありません。この国の遙か東に位置する、好戦的な軍事大国『ガルドニア帝国』……そこが国を挙げて禁忌の【聖女召喚儀式】を行ったのです」
「えっ!? 聖女召喚??私たちの事!?」
アキが驚いて身を乗り出す。
パーカーのフードの中から、ミニポチも真剣な顔(犬だけど)で耳を傾けている。
「そうです。帝国の目的は、異界から強大な能力を持つ『聖女』を拉致し、自国の侵略戦争の道具(兵器)として利用することでした。……しかし、それを見ていた世界の管理神ーーつまり、あなた方が会った女神様が、直前で『それはちょっと困るわぁ!』と、召喚の座標(場所)を強引にずらしたのです」
「それで、帝国の魔法陣から外れて、この平和なラインハルト王国の森の中に落ちたってわけね!」
私はポンと手を叩いた。
女神様がバタバタしていた理由が、完全に線で繋がった。
「その通りです。そして、女神様があなた方に課した『帰還の条件』……。その隠された内容の全貌がこれです」
アルベルトさんは、羊皮紙に書かれた予言の写しをデスクに広げた。
そこには、女神の神託が記されていた。
【帰還する為の条件】
【三年の猶予(サバイバル期間)】:召喚された日から三年間、ガルドニア帝国に捕まることなく、その能力を帝国のために使われずに生き延びること。
【自動帰還(強制送還)】:見事、三年間を無傷で逃げ切り、帝国に能力を搾取されなかった場合、世界のシステムが発動し、二人は【無条件で元の日本(召喚された瞬間の時間)へ強制送還される】
「なるほどね……。つまり、私たちがこの世界でやらなきゃいけないのは、魔王討伐でも世界救済でもない。『帝国から三年間全力で逃げ切る、最強の引きこもり(あるいは逃亡)サバイバル』ってことじゃない!」
私は愛用の魔導ノートを開き、興奮気味にペンを走らせた。
『本編の真の目的:三年間の帝国逃亡デッドヒート。捕まったら兵器にされてバッドエンド、逃げ切れば日本帰還のハッピーエンド!』
「ガル(ふむ。三年間、主殿と美味いものを食いながら帝国軍を蹴散らせばよいのだな。簡単な任務だ)」
ミニポチがチワワのような見た目で、めちゃくちゃ頼もしい脳内念話を送ってくる。
「ポチ、戦闘狂のスイッチ入るの早いって! ……でも、そっか。三年間逃げ切れば、本当に日本に帰れるんだ……」
アキの表情に、少しだけ安心したような、でも同時に「3年も逃げなきゃいけないのか」という複雑な色が浮かぶ。
「心配しないでアキ。相手がどれだけ大軍で押し寄せてこようが、私には世界の上書き設定(嘘設定)がある。そしてアキには【100倍物理反射】、ポチがいるわ。帝国が私たちを捕まえようとした瞬間、逆に返り討ち(ザマァ)にされる運命はもう決まってるのよ!」
私が不敵に笑うと、アルベルトさんも満足そうに微笑んだ。
「その意気です。王都の国王陛下には、すでに私からこの件の報告を入れてあります。我がラインハルト王国は、総力を挙げてあなた方を保護し、帝国の魔の手から隠し通すつもりです。……さあ、目指すは安全な王都! 明日の朝、出発です!」
「「おーーー!!!」」
こうして、私たちの異世界旅の「真のゴール」が定まった。
すべては三年後の日本帰還のため。
最強のラノベ作家一行による、帝国を煙に巻く大逃亡劇が、いよいよ翌朝、本格的に幕を開けるのだった。




