8)セレスティーナと魔法
家族と一緒に夕食を食べ終えて、私とパヴォは部屋に戻った。
『洗礼式』を終えて成人の仲間入りをしたのだが、父の方針で、まだ学生の私はお酒を飲むことができない。
皆、美味しそうに飲んでいるのを横目に、食堂を出た。
騎士団に入ったら、私も一緒に飲むのよ!……今は、仕方がないわね。
騎士団の入団試験まで三カ月とはいえ、学校の卒業試験とかもある。
実質、集中して鍛錬できるのは、冬休みも含めてあと一カ月ほどである。
「パヴォ、明日からさっそく魔法の練習をしたいわ。
一緒に手伝ってね」
「分かったよ。でも、魔法を使えることは隠すんだよね。
どこで練習するの?」
ハッ! そうね、人のいない所じゃないとだめよね。
「どうしよう。稽古場には、人がいるから、外の林の中とかかなぁ。
でも、ちょっと寒いわね」
「動いていたら、暖かくなってくるんじゃない?
外から見えないように、霧をつくりだしたらいいかもね」
「えっ、パヴォはそんなことができるの?」
「何言っているの、創り出す魔法は、ティナの担当でしょ?」
「そ、そうだったかしら? まぁ、やってみれば分かるか。
よし、明日から頑張ろう」
明日に備えて、さっさと寝ることにした。
☆☆☆☆☆
翌朝、早起きして、パヴォと一緒に家のすぐ裏手にある林の中に入った。
この辺りまで来る人は、ほとんどいないし、
あまり奥に行くと、獣が出てくるかもしれないから、少し入ったところで止まった。
「さて、まずは、何の魔法の練習をするの?」
パヴォが楽しそうに質問した。
「うん、まずはね、三カ月後の騎士団の入団試験に合格するために必要なものから、練習したいわ。
誰にも分からないように、剣に魔法を付与して戦えるようにしたいのよ」
「なるほど、それなら、強化魔法の付与だね」
私は、太陽の炎と太陽の光の魔法を使えるはず。
前世の記憶の中でも使っていた魔法が、この二つの太陽の魔法だ。
そのあたりは、何となく思い出してきた。
「えぇ、私の光の魔法は、太陽の光……つまり創造の光よね。
強化魔法は、創造の光でできるのよね。
やってみるわ」
私は、剣を引き抜き、剣に手をかざした。
この剣で、どんな太い木も切り倒すイメージを創り出した。
「強化魔法、付与……」誰にも聞こえないほどの小さな声で呟いた。
その瞬間、剣を黄金の光が包み込んだ。
「できたんじゃない?」
パヴォの言葉に、私は頷いた。
「試してみるわね」
私は剣を構えて、目の前の大きな木に振り下ろした。
『スパーン!』
静かな林に、切れ味のよい音が響いた。
両腕を回しても届かないほどの太さの木が、スパッと切断され、傾いていった。
「あっ、パヴォ、気を付けて!」
切れた木が、パヴォの方に倒れていったが、ピョンと跳ねて軽くかわしていた。
「このくらい、大丈夫だよ。それより、うまくいって良かったね。
ちゃんと、思い出しているんじゃない?」
「そうね、何の力も入れてないけど、スパッと切れたわ」
でも、ちょっと複雑。
今までの鍛錬は、何だったのかしらと、ちょっと思ってしまうわね。
「がんばっても、藁を切るのも大変だったのに、魔法を使えば、こんなに簡単だなんて……」
「まぁ、それはティナの魔法だからね。何でもありだよ」
何を言っているのかは、よく分からなかったが、とりあえず、魔法を使えるのが分かってホッとしたわ。
「さぁ、どんどん練習しなくちゃ!」
魔法を使えたことで、気分も良くなり意欲が湧いてきた。
「ところで、騎士団の入団試験は、どんなことをするの?」
パヴォに聞かれて、兄たちに聞いたことを伝えた。
「毎年、何をするかは、その日にならないと試験官にも知らされないらしいの。ただ、お兄さまたちの話では、過去の試験は、だいたいが試験官への剣の打ち込みと、受け流し、対人戦。あとは、体力測定、筆記試験って感じみたい」
「その試験で、こんな木を切ってしまうくらいの威力で戦って大丈夫なの?
試験官を切っちゃうんじゃない?」
そうだわ、試験では木刀を使うとか言ってたかも。魔法をさっきみたいに付与したら、木刀なのに切れてしまうかもしれない。
「そ、そうね。もう少し、軽く相手の剣を吹き飛ばすくらいの力の付与がいいかしらね。」
「うん、加減しないと、すぐに魔法の付与がバレるんじゃない?」
確かに、そうよね。ちゃんと、バレないように魔法付与の加減ができるようにならないとね。
その辺に落ちていた、太めの木の枝を持ち、剣に見立てて手をかざした。
この枝で、太い木を揺り動かすイメージを創り出し、魔法を付与した。
木の枝を黄金の光が包み込んだ。
太い木に向かって、その枝を振り下ろした。
「やーっ!」
『バーン!』
叩きつけられた衝撃で、木の枝葉が大きく揺れ動き、幹もグラグラと揺らいだ。
「こんな感じかしらね。どーお? 掛け声をかけた方が、なんか一生懸命な感じがしない?」
「うん、演技はともかく、これなら試験官を切っちゃわないね!」
演技はともかく……そこはちょっと気になったけど、パヴォの合格(?)ももらえたことだし、なかなかうまくできたんじゃないかしら。
「よし、どんどん練習するわよ!」




