6)ハーティマー家と黒猫
玄関を入ると、母が待っていて、びっくりした。
「えっ、お母さま、何で玄関にいるの?」
「いつまでも帰ってこないから、心配で待っていたのよ」
そういえば、パヴォと話し込んでいたせいで、帰るのがちょっと遅くなったわね。
「ごめんなさい。実は、この猫と遊んでいたら遅くなってしまったの。
『パヴォ』って名前よ」
まずは、母に紹介した。
「名前って、どこかの家の猫なの?」
「いいえ、木の上から落ちてきたんです。そのあと、一緒に聖堂まで行ったのだけど……名前は私がつけたの。お母さま。私、この子と一緒に暮らしたいの。いいでしょ?」
「ニャーオ!」
パヴォもアピールしてくれた。
「木の上から? まぁ、こんな寒い外にいるのもかわいそうね。
いいんじゃないかしら。ちゃんと自分で面倒見るのよ」
「お母さま、私はもう『洗礼式』を終えた大人よ。もちろん、ちゃんと面倒見るわ」
まだまだ、子ども扱いされた私は、ちょっとふくれながら答えた。
そんな私を母はちょっと笑いながら言った。
「フフ、そうだったわね。ペンタクルを見せてちょうだい」
母にペンタクルを見せると、とても嬉しそうに微笑んだ。
「本当に、ティナの成人の儀が終わったのね。
これから、あなたは一人立ちするのよ。
どんな道を選ぼうと、あなたの信じる道を進みなさい。
私は、いつもあなたを応援しているし、あなたのことを信じているわ」
「えぇ、お母さま、ありがとう」
「もうすぐ夕ご飯よ。急いで汚れを落として身支度をしなさいな。
それに、その猫ちゃん、パヴォも一緒に綺麗になさい。
皆にも紹介しないとね」
「分かったわ、お母さま」
私は、パヴォと一緒に急いで自分の部屋に戻った。
「パヴォ、一緒にシャワーを浴びるわよ!」
「そ、それは、ダメでしょ!
僕も、いちおう男の子だからね」
そ、そうよね。やだわ、猫の姿だからすっかり油断してたわ。
「じゃあ、パヴォを先に洗ってあげるわ」
「大丈夫だよ、ティナ。僕は、魔法で自分を綺麗にできるから」
「えっ? そんなことできるのね。それって、聖獣だからってこと?」
「うん、そうみたい」
うちは、男爵家だけど、騎士家のせいか、普通の貴族の家にいるような侍女や、執事、料理人、ハウスメイドとかがいない。
これも、父の方針で、
「騎士たるもの、自分のことくらい自分でできなくては、他の者を助けることなどできない!」
ということで、他の貴族の家とは違う。
料理や、掃除も、うちの騎士たちが分担してやってくれる。
料理だけは、得意な人や、好きな人たちが作っているみたい。
それでも、遠征もあったりするから、皆、基本的には自分のことは、全部自分でやれるように、しっかりと仕込まれている。
執事はいなくても、うちの副団長が、父の仕事を手伝っている。
私も、騎士になるべく修行の一環として、自分のことは自分でやってきた。
もちろん、料理も母に習った。
フフ、実は、料理は得意だったりする。
やっぱり、おいしいものを食べたいからね。
「グー、グーキュルル」
やだ、そんなことを考えていたら、お腹が鳴ってしまった。
「ティナ、お腹がすいたんだね。相変わらず、食いしん坊だね」
パヴォがククッと笑っていた。
「ム、そんなに笑わないでちょうだい。すぐにシャワーを浴びて身支度するわね。
パヴォも、魔法で綺麗にしておいてね」
そういえば、前世も食べることが、大好きだったわね。
そういうところは、遺伝(?)……前世から引き継ぐものなのかしらね。
そんなことを考えながら、私は、急いでシャワー場に向かった。




