14)騎士団の入団試験第二次試験
ぐっすり眠って起きた私は、今日も爽やかな朝を迎えた。
今日は、騎士団の入団試験の二日目。
筆記試験のため、朝食を取る前に筆記用具の確認をして、鞄に入れた。
「さぁパヴォ、ペンタクルも首に掛けたし試験の準備もしたし、朝食を食べに行くわよ」
「今日は、筆記試験なんでしょ。何も勉強しないで寝てしまったけど大丈夫なの?」
「もちろん大丈夫よ。一般教養の試験勉強はこの三カ月頑張ったし、他の試験内容は毎年違うらしいから対策できないの。だから問題ないわよ」
「なるほど、分からないから問題なし……ティナらしいね」
褒められて(?)気分を良くした私は、張り切ってパヴォと一緒に食堂に向かった。
朝食の後、パヴォと一緒にアルと待ち合わせた『王立大競技場』の入り口に向かった。
待ち合わせの時間ちょうどに着いたが、すでにアルが待っていた。
「おはようございます、ティナ」
「おはようございます。アル、お待たせしてしまったかしら?」
「いえ、今着いたところですよ。おや?」
アルが私の足元に視線を落とした。
「私の飼い猫のパヴォです。ここまで送ってくれたんですわ」
「そうでしたか。ティナには猫の護衛がついているんですね」
「ニャーオ!」
アルがパヴォをジッと見ていた。
パヴォもアルをジッと見ていたが、そのまま宿の方に戻って行った。
騎士の試験を受けるのに、猫を連れているのは珍しいかもしれないわね。
「お母さまが、初めて私一人で王都に行くのを心配したので、パヴォも連れてきたんです」
そうなんです、前世の護衛なんです!……とは言えないからね。
嘘は言ってないし。
「お母さまにとっては、心配で仕方がなかったでしょうね」
アルは、頷きながら同意してくれた。
よし、納得してくれたわ。
「第二次試験の会場に向かいましょうか」
私は、アルを促して歩き出した。
『王立大競技場』から十分ほど歩き、第二次試験の会場の学校に到着した。
王都の公立高等学校で、学生は休暇中のため、普段通っている生徒の姿はなかった。
公立高等学校は普通科のみで、平民や商家の出身者が通う学校だ。
校舎は、貴族高等学校よりも質素な作りだった。
昨日よりは人数が減ったとは言え、今日も入り口には人がたくさん集まっていた。
校門を入るとすぐに受付があり、魔道具にペンタクルを認識させて、第一次試験の合格確認がされた。
確認が終わると教室番号を伝えられ、教室に行くように言われた。
アルとは違う番号だったので、教室の前で分かれてお互いの健闘を祈った。
教室に入ると、中央の教壇のところで試験官が待っていた。ここでも魔道具にペンタクルを認識させると、座る席を指示された。
時間になると、教室は受験者で埋め尽くされていた。
この教室には五十人いて、たぶん三十教室あるだろうから、全部埋まっていないとしても千人くらいは試験を受けているってことか。
最終試験は、かなり人数が絞られるようだから、筆記試験も気を引き締めて受けないとならないわね。
筆記用具を机の上に用意して、試験用紙が配られるのを待った。
筆記用具を忘れたと試験官に言った人がいたが、そのまま不合格とされ、教室を出されていた。
うわぁ、忘れちゃった……じゃ済まされないのよね、肝に銘じておこう。
そんなことを考えているうちに、試験官の号令がかかった。
「はじめ!」
試験用紙の表面に、忘れずに名前を書き込んだ。
兄たちの助言どおり、試験内容を先に確認することにした。
一枚目をめくると、予想どおり教養科目の問題だった。
落ち着いてやれば、特に問題なさそう。
二枚目を見ると、問題は一文だけだった。
「あなたが住んでいる地方で自慢できることをできるだけたくさん書きなさい」
自慢なら、たくさんあるわ。これも大丈夫そうだわ。
三枚目を見た。これも問題は一文のみだった。
「あなた自身について、自慢できることをできるだけたくさん書きなさい」
私の自慢ね。うん、いっぱいあるから大丈夫。
よし、教養問題をしっかり先に解答して、あとは二つの質問の解答をたくさん書けばいいわね。
思ったよりも簡単な内容だったことに安堵し、まずは一枚目の解答を終わらせ、二枚目、三枚目の解答をできるだけ書き込んだ。
「やめ!」
試験官の声が教室に響き、第二次試験が終わった。
試験結果は、午後になってから校庭に張り出されると知らされた。
教室を出ると、アルが待っていてくれた。
「どうでしたか? ずいぶん変わった試験内容でしたね」
「あら、そうでしたか? 毎年内容が違うと聞いていたので、こういうものなのかと思いました。私はとても分かりやすい内容だったので、しっかり解答できました」
「なるほど、こういうものかと思えば、不思議に思わないですね」
アルは納得しているのか、自分に言い聞かせているのかよく分からなかった。
まさか、解答できなかったんだろうかと心配になって確認した。
「アルは大丈夫でしたか?」
「えぇ、質問内容は問題なかったので解答はできました」
大丈夫だったなら良かった。
合格発表まで時間があったため、アルと一緒に簡単な食事をしようと、一旦敷地外に出た。
近くに屋台があったので、軽食と飲み物を買って学校に戻った。
校庭には木々が植えられていたので、木陰を見つけそこに座って食べることにした。
アルと話しながら食事をした。私の故郷の話をしたり、アルの故郷の話を聞いたりしているうちに、試験官たちが出てきて、合格者一覧が張り出された。
「さぁ、発表を見に行きましょうか」
アルが立ち上がりながら促してきたので、私も立ち上がった。
私としては、解答には自信があるのだが、試験官の人たちがどう思うか分からないので、緊張してきた。
アルは緊張していないのか、いつもの微笑みのままだった。
商家の生まれだから、微笑みの裏が見えにくいかもしれないわね。
そんなことを考えているうちに、合格者一覧が張り出された掲示板の前に着いたが、背の高い人たちが前を陣取っていたため、私からはまったく見えなかった。
「ちょっと待っててください。見てきますね」
アルが大柄な人たちをかき分けて前に入っていった。
すごいわね、あんな体格のいい人たちを押し分けているわ。
感心しながら待っていると、アルが戻ってきた。
「ティナの名前もありました」
私の名前もって言ったわよね。
「では、二人とも合格したってことですね」
「はい。合格を確認したので、受付に行きましょう」
二人で受付に行き、ペンタクルに合格を刻んでもらった。そして掲示板に張り出されていた最終試験について確認をした。
最終試験は、また『王立大競技場』での試験になる。自分の剣を使いたい場合は、持参するように書かれていた。
「明日は、対人戦になるようですね。ティナは、自分の剣を持ってきていますか?」
「えぇ、お父さまにもらった剣を持ってきています」
「それは心強いですね。明日もお互いに頑張りましょう」
アルと、お互いの健闘を祈りながら宿に戻った。
今日は、パヴォが部屋で待っていた。
「ティナ、お帰りなさい」
「ただいまー! 合格したわよ!」
「おめでとう!」
まずは、合格の報告をした。
「今日は部屋にいたの?」
「いや、さっき帰ってきたところだよ……何かあった?」
「昨日は、迎えに来てくれていたから」
……今日も来ているかと思ったんだよね。
「あの青年と一緒になら大丈夫かと思ってね」
何だか、一緒が当たり前のような言い方をするわね。
「ま、まぁ朝は一緒だったけど、一緒に帰ってくるとは限らないんじゃない?」
パヴォは微笑んだままそれ以上答えなかった。
また何か、聖獣の力を使ったのかしら?と思いつつ、お腹が空いていたのでシャワーを浴びに行った。
今日は、身体は動かしていないけど、頭を使ったからお腹が空いたわ。
甘いものも食べたいなぁ……などと考えながら、急いで支度をした。




