13)騎士団の入団試験ー第一次試験3
木刀で打ち込みながら、私は何かおかしいと感じていた。
「ヤー!」
掛け声をかけながら打ち込むたび、試験官が毎回よろけていた。
どうしたんだろう、疲れているところにさらにアルの強い打ち込みを受けていたからかしら。
魔法の付与は、木刀で打ち込む程度だから、ほんの少ししか付与していないはず。
それなら、受けもしたほうがいいかしら。
そう考えた私は、打ち込みを止めて受けを待つことにした。
試験官は、私が打ち込みを止めたことで、体勢を立て直し、打ち込んできた。
「ハッ!」
んん? 軽いなぁ。
試験官の打ち込みは軽くて、難なく受けた。
よほど疲れているようだ。
私がビクともしないのを見て、試験官は何度も打ち込んできた。
「ヤー! ヤァー!」
打ち込みの重さは変わらなかったが、試験官の声はどんどん大きくなったため、なんとなく勢いを感じて、反射的にちょっとグイッと押し返してしまった。
その途端、試験官は吹っ飛んで尻もちをついた。
ちょうどそのとき、一分間の試験時間が終了するブザーが鳴った。
肩で大きく息をしている試験官が、フラフラしながらも私に向かって歩いてきた。
「ちょっと、その木刀を見せてくれるか」
「はい」
私は、言われたとおり木刀を渡した。
平静を装っていたが、内心は焦っていた。
ブザーが鳴ったときに、すぐに木刀に付与した魔法を解除しておいて良かったー。
受けをしているのに、ちょっと押し返してしまったのが、まずかったのかしら。
試験官は、木刀を振ったり何かに打ちつけたりしていたが、首をかしげながら私の方を見た。
「ご、合格だ。そこの魔道具にペンタクルを認識させて。合格が刻まれるから」
「はい、ありがとうございます」
「終わったら、そのままそこの通路を進んで。掲示板に二次試験に関する情報が張り出されているので、確認するように」
「承知しました」
合格したー! 良かったー。
ペンタクルを魔道具に置くと、ピカッと光って合格が刻まれた。
ペンタクルの見た目はまったく変わらないが、ちゃんと情報が刻まれたらしい。不思議なものよねー。
ペンタクルを首に掛けて、指示された通路に入るとアルが立っていた。
「ティナ、すごかったですね。試験官を吹っ飛ばすなんて……ククッ……」
アルが可笑しそうに言った。
「えっ、見てたの。(しまった、言葉遣いが……)
そ、それは、アルが試験官を疲れさせてくれたからね。アルのおかげで合格できましたわ」
慌てて、言葉遣いを直しつつ答えた。
「そうですか。それは良かったです。作戦通りですね」
アルは、含みのある笑みを浮かべながら言った。
そ、そうよ、作戦通りだったから問題なしだわ。
そのままアルと一緒に通路を進み、掲示板で二次試験の情報を確認した。
「二次試験の場所は、ここからすぐ近くにある学校です。筆記試験ですね。筆記用具を持ってくるように書かれています」
「そうね。地図も載っているわね。王都は初めてだから、しっかり覚えておかないとならないわ」
私が不安そうに言うと、アルが提案してくれた。
「だったら、一緒に行きましょう。私も王都には慣れていなくて不安なので、明日の朝、今日受付をした競技場の入り口で待ち合わせませんか?」
「そうしましょう。二人の方が安心ですわね」
私は、快く返事をした。
確認を終えて、アルと宿の近くまで一緒に帰った。
私の宿の近くに泊まっているようだった。
「それじゃあ、明日」
「はい、また明日」
アルと別れて宿に向かい始めると、パヴォが現れた。
「あら、パヴォ、迎えにきてくれたの?」
「ニャー!」
そのままパヴォと一緒に宿に戻って、一息ついた。
「その様子だと、一次試験は受かったみたいだね」
「えぇ、合格したわよ」
私は、力強く答えた。
「それにね、親切な知り合いもできたのよ。もしかしたら同期になるかもしれないからね」
「そうなんだ。それは良かったね。どんな人なの?」
私は、アルについて知っていることをパヴォに話した。
「ふぅーん」
パヴォは、ちょっと考えこんでいた。
どうしたのかしら。元護衛としては、私の周りの人については、いろいろ気になるかもしれないわね。
「グーキュルルル……」
お腹が鳴ってしまった。
そういえば、試験官が疲れるのを待っていたから、昼ご飯を食べ損ねたのよね。すごくお腹が減っているわ。
「グゥ~~」
限界を迎えた胃袋が、盛大に悲鳴を上げ、何度も鳴り響いた。
考え込んでいたパヴォが笑いながら吹き出していた。
「ププッ! シャワーを浴びて、すぐにご飯を食べに行ったほうが良さそうだね」
「お昼を食べ損ねたのよ。急いでシャワーを浴びてくるわね」
私は、さっさとシャワーを浴びに行った。
今日は何のご飯を食べようかしらと、ウキウキしながらシャワーを浴びた。
身支度をしてすぐに昨日と同じ食堂へ向かった。
食事をしながら、パヴォに今日の試験で起きたことを話した。
もちろん、魔法については話さないでね。
パヴォは「ニャー」と返事をしてくれていたが、一人で猫に話しかけている私を、お店の人や周りの人たちが優しい目で見ていた。
部屋に戻ると、パヴォが待ってましたとばかりに口を開いた。
「試験で魔法ってバレなくてよかったね。もうちょっと加減したほうがいいんじゃないかな?」
「えっ、試験官の人が疲れ果ててたんじゃないの?」
「うーん、話を聞いた感じでは、そうじゃない感じがするんだけど」
「そうなのかな。まぁ、次は気を付けるわ」
「本当かなぁ……」
パヴォは、ブツブツと呟いていた。
ちょ、ちょっと聞こえているわよ。
私だって、バレたら困るんだから、ちゃんと気をつけるわよ。
そんなことを思いながらも、疲れてお腹もいっぱいになった私は、すぐにベッドに横になって眠ってしまった。




