12)騎士団の入団試験第一次試験2
騎士団の入団試験、第一次試験が始まり、試験場の稽古場はどこも長蛇の列になっていた。
たまたま隣にいた人が話しかけてきたおかげで、焦った気持ちが落ち着いた。
「そうだ、自己紹介が遅れました。私は商家の息子でアルフォルドと申します。よろしくね」
青年は、眩しい笑顔で爽やかに挨拶をしてくれた。
よく見ると、なかなかの美形だわ。
私ったら呆然としていて、騎士を目指しているものとしては、ちょっとシャキッとしていなかったわね。
これは、こちらもきちんと挨拶をしないとならないわ。
「私は、ハーティマー男爵家の娘でセレスティーナ・ハーティマーと申します。
こちらこそ、よろしくお願いいたします」
ちょっと気取って挨拶した。
「男爵家のお嬢様ですか。平民も受ける騎士団の入団試験を受けるのは、めずらしいですね」
「えぇ、私、貴族学校の騎士科には入れなかったです。でも、どうしても騎士になりたくて受けに来ました」
そう、彼の言う通り、貴族で騎士になりたい人は、兄たちのように学校の騎士科に入るのが普通。
「そうなんですか。諦めずに騎士を目指すなんて素晴らしいですね」
素敵な眩しい笑顔で言われて、ちょっと恥ずかしくなった。
商家の息子と言っていたけど、商人は笑顔で商売をするのが武器だと聞いたことがある。それにしても、なかなかすごい武器だわ。
「そ、それほどでもございませんわ。私の家は、代々騎士の家系ですので、私も幼いときから、皆と同じように騎士になりたいと思っているだけです。
アルフォルド様こそ、商人の家で生まれながら、騎士を目指すなんて珍しいのではございませんか」
私も珍しいだろうけど、こんな笑顔の武器があるのに、彼が試験を受けているのも少し珍しい気がした。
「アルと呼んでください。うちは兄が家を継ぐことになっていて、私は好きな道に進むことができるのです。
私も幼いときから、騎士を目指して稽古をしていたんですよ」
彼も幼いときから騎士を目指していたと聞いて、何だか嬉しくなり、勝手に親近感がわいた。
「まぁ、そうですのね。アル、私のこともティナとお呼びください」
「それじゃあ、ティナと呼ばせてもらいますね」
何だか昔からの友達に会ったような感覚になり、嬉しくなった。
その後もアルと話していたおかげで、待っていた時間もあっという間に過ぎて、気がつくとだいぶ人が減ってきていた。
「ティナ、そろそろ稽古場に並んだほうが良さそうですね」
すっかり座り込んで話していたが、アルに促されて立ち上がった。
ちょっと身体を伸ばしながら、どこに並ぼうか悩んでいた。
そんな私の悩みを吹き飛ばすように、アルが提案した。
「どの稽古場も二人の試験官が対応しているようです。特にあそこの試験官は疲れがみえてきているし、並んでいる人数も多くないかな。あそこが良さそうですね」
「そ、そうですね……」
いつの間に全体を見ていたのかしら。
ちょっとびっくりしながらも、私も同じように思っていたかのように同意した。
「本来はレディーファーストだけど、ここは私が先に並びますね」
アルが私の前に並んでくれた。
先に並んで、アルが試験官を疲れさせてくれるつもりかしら。
アルの実力も見られるし、一石二鳥ね。
私はこっそり魔法を使うけど、対人戦の練習ができなかったから、ちょっと不安なのよね。
だから、しっかり試験官を疲れさせてくれるとありがたいわ。
そんなことを考えているうちに、気がつくとアルの順番になった。
「じゃあ、いってきます」
アルは変わらぬ笑顔で挨拶すると、ペンタクルを魔道具に認識させ、試験官の前に向かった。
渡された木刀を持って真剣な顔になったアルは、笑顔のときとは違った空気をまとっていた。これは強いわね……試験官に向かって打ち込みを始めた。
一分間、アルはほぼ休むことなく速いテンポで打ち込み続けた。試験官は激しく動いて防御し、終わったときには肩で息をしていて苦しそうだった。
アルは、圧倒的な強さで合格した。
すごいわ、しっかりと試験官を疲れさせてくれたわね。
私も頑張らないと。
ペンタクルを魔道具に認識させ、木刀を渡された。
試験官の前に立つと、まだ呼吸が整っていないようだった。
よし、魔法付与のチャンスだわ。
私は木刀に手をかざし、試験官に打ち込むイメージを創り出した。
「強化魔法、付与……無光」こっそり、誰にも聞こえないほどの小さな声で呟いた。
皆の前なので、魔法を付与するときの光も抑えた。
まぁ一瞬なので、よく見ていないと分からないんだけど、誰が見ているか分からないからね。
試験官の息が整い、いよいよ私の試験が始まった。
「セレスティーナ・ハーティマーです。よろしくお願いいたします!」
私は張り切って挨拶をして、木刀を構えた。




