11)騎士団の入団試験第一次試験1
今日は、騎士団の入団試験の一日目。
昨日の夜は、宿の向かいにある食堂で夕ご飯を食べた。
食堂は、さすがに猫は入れてくれないかなぁと思ったけど、何の問題もなく入れて、しかもパヴォ用のご飯も用意してくれた。
お店のお客さんたちも、不思議な顔でパヴォを見ながら、何も言わないのよね。
聖獣ってすごいわ。
美味しい料理でお腹いっぱいになり、幸せな気分になった私は、すぐにシャワーを浴びてぐっすりと眠った。
おかげで、今日は爽やかな気分で朝を迎えた。
朝ごはんも、昨日と同じ食堂でパヴォと一緒に食べた。
朝のメニューも美味しくて、お腹が膨れ上がってしまった。
朝食後、部屋に戻って試験に向かう準備をしていた。
「たくさん食べたけど大丈夫なの? ちゃんと動ける?」
私のポッコリと出ているお腹を見たパヴォが、呆れながら尋ねてきた。
「だ、大丈夫よ。私は、たくさん食べないと力が出ないし、試験場に着くまでには、このポッコリも納まるわ」
(……うん、たぶん)
「そうなんだね。そろそろ試験場まで行った方がいいんじゃない?」
パヴォに言われて、急いで支度を終えた。
ペンタクルも首に掛けたし、剣も身につけた。この剣は、父から学校の卒業試験に合格したお祝いにもらったものだ。
普通のどこにでもあるような剣だけど、せっかく父からもらったので持ってきた。
私の場合、魔法を付与しながら使えばどんな剣でも一緒だから、何でもいいのよね。
「さぁ、行きましょう!」
パヴォと一緒に宿を出た。
宿から騎士団の入団試験が行われる試験場は、歩いて十分ほどの距離だった。
一次試験場は『王立大競技場』で、馬の競技や、剣の競技、魔法の競技など、様々な競技が行われる王国一の規模と観客動員数を誇る場所である。
外から見ても、どこまでが競技場なのかまったく分からないくらい大きくて、圧倒された。
思ったよりも早く到着したが、すでに試験場の入り口は人で埋め尽くされていた。
「パヴォ、私はこのまま試験場に入るわね。試験は何時に終わるか分からないから、宿に戻っても、どこか散歩しててもいいし、自由にしていてね。場所も近いし、ちゃんと一人で帰れるから大丈夫よ」
「ニャーオ」
パヴォは、返事をするとすぐに姿が見えなくなった。
よし、いよいよ試験だわ。まずは受付をしないとね。
私は、たくさんの人たちの後ろに並び、ペンタクルを魔道具に認識させて受付を済ませた。
これで、誰がいつ、ここで受付したかが分かるのよね。
受付が終わると、競技場の中に入るように言われた。そこにはたくさんの人が集まっていた。
い、いったい何人いるのかしら?
競技場の大きな広場が、人で埋め尽くされていた。
その奥の方に、いくつか稽古場のような空間が作られていた。
どうやら、あそこで試験が行われるようだわ。
騎士服を着た人たちが、その場所に数人ずつ配置されていた。
試験時間になると、試験官らしき人が観客席に現れ挨拶を始めた。
「これから、騎士団の入団試験を始める。私は、今日の試験を担当する試験官である。第一次試験は、広場の奥に設置された稽古場で行う。
試験内容は、各稽古場にいる試験官と木刀で一分間対戦してもらう。戦い方を見て、試験官がその場で合否を判定する。合格した者だけが、明日の第二次試験に進むことができる。稽古場は全部で十カ所あるが、どこで試験を受けてもいい。ただし、一人一回までだ。」
広場にいた人たちが、ざわざわとしていたが、すぐに試験官がまた話し出した。
「それでは、始める。必ず、稽古場の入り口にある魔道具にペンタクルを認識させてから、対戦を始めるように」
試験官の話が終わるとすぐに、各稽古場で試験が始まった。
私は、結構後ろの方にいたので、どの稽古場に並んだらいいのか分からず、そのまま立ち尽くしていた。
「こんなにたくさん人がいると、困るね」
隣にいた人が呟いたので、本当にそうだわと思ってその人の顔をふと見た。
茶色の瞳に明るい栗色の長髪、その柔らかそうな髪を後ろにひとつにまとめた青年は、穏やかな笑顔で、こちらを見ていた。
えっ? 私に話しかけてるみたいだわ。
ま、まぁ、もしかしたら、これから一緒に騎士になる人かもしれないから、愛想良くしておかないとね。
「そ、そうですよね。私も、どこに並んだらいいのかなと思っていたところでした」
「うん、でも待つのは大変だけど、試験官も後半になったら疲れてくるだろうから、その方がいいかもしれないね」
そうよね、いくら強い騎士の人たちだって、だんだん疲れてくるだろうからね。
「そうですね。何か用事があるわけでもないから、ゆっくり後で試験を受ければいいですよね」
何となく、その人の言うとおりな気がして、私は焦らず待つことにした。




