15)騎士団の入団試験第三次試験1
昨日の夜は、パヴォに筆記試験について話しながら食事をした。
食事中は、相づちを打ってくれていたのに、実は話の内容にびっくりしていたようだった。
部屋に戻るとすぐに話しだした。
「筆記試験、よく合格したね。話を聞いたかぎり、ティナは食べ物のことばかりを解答したみたいなのに」
「そうよ、だって領地の自慢はジャガイモ、カボチャ、チーズ、牛乳とかでしょ。それに私の自慢はそれらを使って料理をすること。だから自然と食べ物のことばかりになったのよ」
「まぁ、ティナの言う通りだね……さすがティナだよ」
褒めたにしては何だか含みのある言い方に気になったが、合格したんだからいいのよ。
「明日は剣を持っていくわ。最後は対人戦のようだから魔法の加減に気をつけなきゃ」
「ティナの練習の成果が出るときだね。頑張って」
「えぇ、明日が最後の試験だから頑張るわ!」
私は意気揚々とベッドに入ると、すぐに眠った。
朝、目が覚めてすぐに剣の確認をした。
試験場にも用意されるそうだが、父からもらった剣だし、やはり慣れている方が使いやすい。
今日もパヴォと一緒に朝食を食べ、剣を腰に差して、最終試験が行われる『王立大競技場』に向かった。
待ち合わせをしていたわけではないが、道すがらちょうどアルが手を振りながら歩いてきた。
「じゃあ、ティナ頑張ってね」
アルを見かけると、パヴォはそう言って、そのままサッサといなくなった。
「う、うん。またあとでね」
何か用事でもあったのかしら……ちょっと不思議に思いながらもアルに手を振り返した。
「あれっ、もう猫ちゃんは帰ったんですか?」
「えぇ、そこまで一緒に来たんですけど、用事でもあったんでしょうね」
アルは、ちょっと首を傾げながらもいつもの微笑みになった。
「今日で試験は最後ですね。体調は問題ないですか?」
「えぇ、しっかり寝て、しっかり朝食も食べてきたので問題ないですわ」
「アルはどうですか?」
「はい、僕もしっかり寝て、しっかりご飯を食べました」
ちょっと笑いながらアルは答えた。
それなら問題ないわね。
よく寝て、よく食べたなら元気な証拠よ。
私はうんうんと一人で納得しながら道を進んだ。
競技場に到着すると初日と同様、入り口に受付があった。
前回同様、魔道具にペンタクルを認識させて受付を済ませた。
三日目ともなると人数がだいぶ減った。
「筆記試験で人柄や考え方を見たと思うから、だいぶ人が減ったね」
アルが周りを見渡しながら言った。
なるほど、だから私は合格したのね……一人で納得した。
「何人くらいになったのかしら?」
アルが目を細めながら、もう一度周りを見渡した。
「ざっと見て三百人くらいかな」
兄たちの話では、毎年合格する人数は確定していないのよね。
実力者が多い年は、多めの人数が合格しているらしい。
だから、後は剣の腕を見せるしかないのよね。
時間になって、試験官が最終試験の内容を話し始めた。
「試験内容を発表する。最終試験は剣の対人戦だ。自分の剣でも、こちらで用意している剣を使ってもいい。十カ所の稽古場を用意した。どの稽古場でも構わないので、試験官と対戦するように。勝ち負けではなく、戦い方を見るので、剣の腕を思う存分発揮してくれ。それでは、健闘を祈る!」
そうか、勝ち負けではないのね。じゃあ、剣の強化魔法は少しにして、相手の太刀筋が見えやすいように、私の動体視力を強化しよう。
これもしっかりと練習してきたから、問題ないわ。
しっかりと対策を練った私は、ニヤリと笑ってしまった。
「ティナは、余裕のようですね」
アルが、目ざとく見ていたようで笑っていた。
「対策を練っていただけですわ。余裕なのはアルの方ではなくて?」
「そんなことはありませんよ。全力を尽くすのみです」
うん、どう見ても余裕の微笑みよね。
言い合っていても仕方がないので、そのまま二人で微笑みながら稽古場を見渡した。
勝つことが必須ではないとは言え、一次試験と同様、試験官が疲れる後半に試験を受けることにした。
アルは、すぐに試験を受けても余裕で合格しそうだが、彼も一緒に待つと言った。
他の受験者の対戦を見ていると、皆勝つ気満々で立ち向かっている。
しかし、ほとんどの受験者が打ちのめされていた。
一次試験と違って時間が決まっているのではなく、試験官が止めるまで対戦が続く。
試験官の趣味で(?)、受験者が何度も何度も倒されているのに、対戦が終わらない所もあった。
あそこは、避けた方が良さそうね。
「あそこは、ちょっと試験官が意地悪かもしれないですね」
アルも同意見のようで、私は頷いた。
だいぶ受験者が減ってきたところで、そろそろどこかの稽古場に並ぼうとアルと話していたところに、声が響いた。
「そこの二人、もう人数が少なくなってきたから、男性はあちらへ。女性はそちらに行きなさい」
あとからやって来た試験官の一人に、人数の少ない稽古場に行くよう指示された。
うわ……指示された稽古場って、あそこには並ばないようにしようってさっき思った所じゃないの。
恐らく、皆あそこの試験官は大変だと思って、並ばなくなったのね。
声を掛けてきた試験官は、たぶん、今来たところだから、そこの稽古場がどんな感じだったか知らないのだろう。
まぁ、しょうがないか。
そんなことを考えながら、指示された稽古場に向かおうとすると、アルが心配していた。
「ティナ、僕がそっちの稽古場に行けるように交渉してみるよ」
「大丈夫、どんな相手であろうと力を尽くすわ!」
フフ……このために、魔法と剣術の組み合わせを一生懸命練習したんだから。
それに、あれだけ強い試験官にどのくらい通用するか試してみたいのよね。
私は、アルに大丈夫よ……という意味を込めてにっこりと微笑んだ。




