第一話 大いなる冬眠
十二月五日 午前九時
新西京三区 大黒天通り 斎藤誠二探偵事務所
温かい事務所の中から窓ガラスを通して俺は、憂鬱な気分で本格的に寒さの増してきた通りを眺めていた。
冷蔵庫の方がましだと思えるような寒風から身を守るように、道行く人はコートの前をしっかりと閉じ、うつむき加減に歩いている。
こうも寒いと外に出る気が失せる。
そもそも俺は布団から出たくなかった。
人類は十二月初頭から三月末まで冬眠状態――つまり布団と台所とお手洗いとお風呂――を行き来し、ぬくぬくと過ごすだけで良い。それが俺の持論だ。
無論、俺は有言実行を旨とするハードボイルドな男なのでそれを実行したいと常々思っている。
しかし――今朝八時にその俺の夢は二重の意味で破られた。
因みに馬鹿猫の奴はすやすやと俺の部屋にある奴用のベッドで寝ている……クソ、あいつもベッドから叩きだしてやりたい。
俺だけが不幸になるとか許せん。
事務所の来客スペースには来客用のソファ、接客用のソファ、そのソファの中間に机が置かれている。そして奥の本来なら俺が座っているはずのデスクになぜか嬉しそうな顔をした五十嵐結衣が座って俺の銃――雪風と会話している。
今日の彼女は茶色の髪をポニーテールにしている。金髪は辞めたらしい。茶色の瞳。明るい黄色のワンピースを着ている。星のイヤリング、ネックレス、ブレスレットとアクセサリーが多い。新西京大学の大学生だ。
美人だが、俺からしてみればまだ可愛らしいというほうが正確だな。
後五年もすると結構な美人になるだろう。
「あなたのおかげで誠二が規則正しい生活を――」
「まじ? 雪ぴょんに褒められたらうちもテンアゲだわーそういえばニュースみた?」
要らないお世話だ……こいつが、いや、こいつらが俺の夢をぶち壊してくれた張本人だ。突撃してきた五十嵐結衣のために勝手に扉の鍵を開けた雪風……
「雪風……お前のマスターは誰だ?」
答えは聞くまでもない。
「私のマスターは私自身です。あなたがそう命じたのでは?」
言うんじゃなかった……とりあえず敵戦力があまりにも強大な場合、分断し、各個撃破するべき。
そんなわけで結衣をどうにか引き取ってもらおうとアークにホロ通話をさっきからかけているがあの野郎……出ない。
明らかにあいつは寝ている。
俺は起こされたのに。不公平だ。
五十嵐結衣が言うには彼女はここの事務員らしい。
いや、頼んでいない……何かが間違っている。
そもそも素人はアンダーの世界に関わるべきじゃないんだ。どれだけ言ってもスルーされるが……
「連続猟奇殺人事件ですね。AIたる私には関係のない事ですが、市井の住人が感じるであろう精神的重圧は計り知れないでしょう。しかし、被害者のほとんどがロシア人であること、また、新西京の人口比率から考えればあなたが被害にあう可能性は――」
「そういう問題じゃないっしょ!! せーちゃん!! 解決してよ!! ね?」
何がね? だ。
「残念だが結衣。俺も暇じゃない。依頼もないのに捜査はできん。残念だなぁ、依頼さえくればな……俺が捜査に乗り出せばホームズ、ポアロも顔負けの天才的推理であっという間に犯人を――」
「ただの通り魔相手に何を言っているのですか誠二。しかもあなたは今依頼を受けていない。つまり無職に等しい存在です」
雪風め!!
ロジハラって言葉を知ってるか?
そして――俺は不機嫌な眼差しを応接スペース兼俺のデスクとマジックミラーで仕切られている台所兼食堂に向けた。
五十嵐結衣から遅れる事五分――リンクスと愉快な仲間達がやってきた。
何やら勝手に持ち込んできた食材で飯を作っているらしい。
俺は今応接スペースに居るので――奴等が何をしているか良く解らん。
マガミ――黒髪をツーブロックにしたこい茶色の瞳を持ち、色あせたオーバーサイズの濃緑のジャケットに青いジーパンのヒューマンの少年。身長百七十センチほどか。体格はやせ気味だ。リンクスの兄貴分らしい。
レル――ドワーフの少女。派手なピンクのショートボブにエメラルドグリーンの瞳。ネオンカラーのタンクトップに、ボロボロのデニムショートパンツ。左右で違う色の安物ピアス。 身長百四十センチほどか。体格はやや痩せている。リンクスとお似合いだな。俺の頬が緩む。
ジル――額から二本の角――鬼の少年だ。少年といっても身長は百九十五センチで俺より十五センチ高い。短く刈り込んだ茶髪、穏やかな琥珀色の瞳をもち、袖のちぎれた厚手のスウェット、ダメージジーンズを履いている……見ているだけでこちらが寒い。体格は標準くらいか……ストリートギャングだからか、ちゃんと食べられていないのかもしれない。
それにしても、ここはいつから託児所に?
俺は現実逃避のためにホロテレビをつける。
そこからわけのわからない新商品の宣伝が流れ始めた。
『腋臭の人に朗報! この殺臭源サプリを是非お試しください!! 新陳代謝を落とすことで体臭の発生を極限まで落とす――』
そのサプリ、健康に重篤な障害を与えんか?
いや、これを服用すればある意味冬眠状態に?
俺は別に腋臭ではないがとりあえず一つ買ってみよう。注文。
「誠二――さん。飯食うか?」
リンクスの調理が終わったらしい。
「ふむ。頂こう」
ただ飯かつ他人が作ってくれるとは……やはり早起きは三文の得ということか。
「これは……ポトフか」
朝からポトフだと!?
煮込み料理で時間がかかるポトフを朝から作るというのは正気を疑う行為。
しかし――圧力鍋なら調理時間を圧倒的に短縮可能――だからここで料理をしたということか。
「あぁ――ちょっとタイムとローズマリーとオレガノとパセリとバジルを使わせてもらったぞ」
「腐るほどあるから構わんぞ」
とりあえずお椀に盛られたジャガイモを口にする。
タイムなんかは一度に少量しか使わないから永遠になくなる様子もない。
まとめ買いしなくてよかったな……ふむ、タイムの少し土臭い香りにローズマリーの爽やかさが鼻から抜けて俺のささくれだった心を癒してくれる。
「誠二先生に料理も教わってて良いよなぁリンクスは」
マガミがそんなことを言う。
「いや、こいつ――誠二さんは料理はほぼ教えてくれてないんだ。俺が見て盗んだ」
「えっ! リンクスお兄ちゃん凄いじゃん!!」
レルが憧れの眼差しでリンクスを視る。まさかこの娘……これがあれか?
親が子供のことを好きに思っている異性――おっと、ポリコレ的には異性ではなく、人間?――が現れた時の楽しい感情ってやつか?
待て待て。リンクスみたいなクソガキが俺の子供?
冗談じゃない。
そもそも俺はそんな年でも――
「いや――凄いのは誠二――さんだよ」
リンクスが口を開いた。
彼は俺の最高の息――
「スペンサーが料理できるからって理由で料理を始めて、元々凝り性だったからって気づいたらプロに匹敵する腕前になってたとか頭悪すぎだろう」
そうリンクスが続けた。
こいつは俺とは何の関係もないただのクソガキだ。
腹立ちまぎれに合成肉のソーセージを噛む。
……美味いな。
「……そういえば、そろそろ出ないと診察が」
ジル――鬼の少年、めったにしゃべらない――が口を開く。
「診察?」
俺は四人に質問をする。
「あぁ――最近スラムの端の方で開業した女医さんが居るんだけど~」
レルが説明してくれる。
「おいおい、血液検査をする日は、朝飯を抜くんだぞ」
食卓に沈黙の帳が降りる。
「マジかよ……残りは帰ってきたら食べるから置いとけよ……置いといてくださいよ誠二」
リンクスが意地汚いことを言って出て行く。
「誠二さん、失礼しました」
マガミは礼儀正しい良い子だ。地面に直角になるくらいまでお辞儀をした。
リンクスの兄貴分なだけある。
「誠二さ~ん、またね~」
レル、リンクスの事は任せたぞ。
「……お邪魔しました」
ジル、もう少し話してくれて良いんだぞ。
さて、冷えたポトフなんて残っていてもしょうがないだろう。
全部食べてやるのが武士の情けというやつよ。
温めなおす?
そんな言葉、俺の辞書にはない。
そう決意をし、ポトフとの決戦に向かおうとしたその時だった。
事務所の扉が開くと、白いダッフルコートを着た金髪ロングヘア、緑色の瞳のエルフの女が一握の冷たい空気とともに入ってきた。
ジェーン・カタギリ。新西京トラストニュースの看板キャスター兼プロデューサー兼ディレクター。いうなればこの街の声の一人、だ。
「相変わらずね、この事務所も」
「困るなジェーン。デートの申し込みならちゃんと順番待ちの列の最後尾に回ってもらわないと」
ジェーンは俺の言葉を無視して勝手に来客用ソファに座る。
仕方ない。
俺はポトフと一時的な休戦協定を締結。とりあえず接客用ソファに腰掛ける。
「あなたはデートしたいみたいだけど……私はあなたに興味はないのよね。仕事の依頼に来たのよ? この事務所はいつからホストクラブになったのかしら?」
「……。帰れ」
絶対にろくな案件じゃない。俺は確信した。
「この二週間ほど町を騒がしている連続猟奇殺人事件、知ってるわよね」
俺の断固たる拒否を無視して彼女は語りだした。
「あ、お茶です! やば! めちゃ美人じゃん!」
勝手に結衣が紅茶を淹れてもってきた。
「ありがとう。って、五十嵐結衣ちゃんじゃない。どうしてここに?」
「えっ、うちのこと知っているんですか?」
「そうよ。この馬鹿に無理やりあなたが誘拐されたニュースを読むよう脅されたのよ」
ふざけんなよこいつ。馬鹿だと?
俺は怒りとともに注意をしようと口を開く。
「結衣、そんな奴に紅茶を出す必要は――」
ん? この香りまさか――俺が自分の為に買って隠して置いておいたダージリンのシルバーニードルズじゃねーか!!
よりによってジェーンに!!
俺はショックでソファに沈没していった。
「凄く良い香りねー、結衣ちゃん有難う。しかし誠二も隅に置けないわね。私という者がありながらこんな可愛い子を事務員にするとか」
「えっ……そういう関係なんですか?」
結衣が少し顔を曇らせた。
「冗談よ。何もないわ」
ジェーンは悪戯小僧のような笑えを浮かべて否定する。
「良かった~」
「私は違ったけど――学生の頃って年上の男性に憧れる女の子って多いわよね」
ジェーンはすました顔で何か偉そうに語りだした。
「そんなんじゃないし!! せーちゃんはうちのこと全力で守ってくれて~」
「あら、そこで死んでる男は依頼とあらば熊のぬいぐるみだって命がけで守るわよ」
いかん、女子会が始まってしまう。
「ジェーン。その殺人事件を俺にどうして欲しいんだ?」
俺は威厳を保って声をかける。
「あぁ、居たの誠二。忘れてたわ」
「忘れているようだが。ここは俺の事務所のはずだ」
「あ、お仕事のお話の邪魔しない方が良いですよねー。失礼しましたー」
結衣が向こうへ行く。
「あぁ、そうそう。でね誠二。警察も手間取ってる事件をうちが犯人やらなんやらスクープ出来たら美味しいと思わない?」
「そうだな。頑張って取材しろよ」
「でも、限界があるじゃない。警察から公開されてる情報にも限度があるし?」
こいつ――俺に殺人課の最新の捜査状況を流せって言ってるのか?
岩村の顔が脳裏に浮かぶ――それをやったら俺は確実に死ぬ。
「そうだな。公正な競争だよ。他のマスコミと同じ条件で戦うべきだ」
俺は笑顔を顔に張り付けて頷きながら言ってやる。
「というわけで~あなたに独自調査をお願いしたいのよね」
ジェーンは唇に人差し指をあてて悩ましげな顔をしてふざけたことをぬかしだした。
「おい、俺を神津恭介か何かと勘違いしてないか? 俺はハードボイルドな私立探偵であって安楽椅子探偵では――」
「せーちゃんさっきは秒で解決してやんよ! とか――」
黙っていられなくなったらしい、結衣が何やら要らないことを言い出す。
「結衣……静かにしていなさい」
俺はダンディな声で結衣を黙らせる。
「報酬は弾むわ」
彼女が口にした額は――俺の半年分の生活費をゆうに賄う額だった。
甘く見られたもんだ。舐めるなよ、俺は金じゃ動かない。
断ろうと口を開いた。
十二月五日 午前十時
新西京三区 大黒天通り 斎藤誠二探偵事務所
こうして事件を捜査することとなった俺は、まず事件についてきちんと調べることとした。
「ちょっと出てくる。いくぞ雪風」
永遠に話し続けている結衣に声をかけて雪風を机の上から回収。
ホルスターに収納する。
「はーい。うちも授業に出てきまーす」
「もう来なくて良いぞ」
「べーっ!」
俺の親切な忠告を無視した結衣は風のように立ち去った。
「ったく……アークに救出に行かせるべきだったな」
俺は盛大に溜息をついた。
「誠二……その場合、ZXは逃走に成功し、アークとリーナスは死亡していた可能性が非常に高……」
「仮定法過去だ。わかるか?」
「ありえない妄想についての話ですね。理解しました」
「夢見る権利くらい、俺にだってあるはずだ」
事務所の扉の前で俺は震えを先取りした。
「誠二。なんで震えているのですか?」
「どうせ外に出たら震えるんだ。先に震えておくんだよ」
「……はぁ」
呆れたような雪風の溜息。
「おい! 聞こえてるぞ! これには科学的根拠がある。身体が震えるのは体温を上げるためのものなので先に体温を上げるための動作をするのはとても理に適って――」
「良いからさっさと行きましょう。聞いた私が愚かでした」
なんだこいつ。
そうして俺は、震えつつ寒い通りに足を踏み出したのである。
午前十一時半
新西京三区布袋通り カフェ『アビシニアン』
民間警察企業の殺人課の課長、岩村と俺は会っていた。
岩村はロックとも呼ばれている、エルフの男だ。
……。呼ばれているの、聞いたこと無いな? まぁいい。
身長は百九十センチ、ゴツい。クルーカットに黒髪黒目。
削りだした岩のような印象を周囲に与える。
服装は民間警察企業の黒い制服。
岩村と俺はカフェ『アビシニアン』で少し早い昼食を摂っていた。
「斎藤。その激辛汁なし担担麺は何の真似だ?」
何やら俺のすする麺を指さしていちゃもんをつけてきた。
「寒いときは辛いものを食べて暖まる。常識だろう」
俺は箸を止めてウインクしながら答えてやる。
「暑いときは?」
岩村は頷いて言葉を続ける。
「辛いものを食べて涼む。常識だろう」
「四季の変化を生き延びる探偵の知恵だな(何も考えずに辛い物を食べているってことか)」
「そう言うお前は冬眠でもするつもりか(カロリー取りすぎだろう)?」
俺はそういって岩村の食べているトリプル・パティのサイバー・チーズバーガーを指さす。
合成肉ながら肉汁(らしき脂)が溢れ出すパティが3段。チーズが溶岩のように流れ出している。
「クリスマスパレードの警備にも駆り出されそうなんでな。今から準備しておかねばならん」
「アレか……毎年出てくる一般市民の数がとんでもないからな。寒い中お疲れ様だな」
俺は岩村をねぎらってやることにする。
「人手が足りん。当日限定のバイト募集中だ。斎藤、どうだ?」
「おいおい、クリスマスだぞ? 俺がクリスマスに予定入れちゃったら新西京の淑女たちに八つ裂きにされてしまう」
「良いじゃないか。十個くらいに身体が八つ裂きにされれば全員とデートできる。頭は交差点の信号機の上に飾ってやるからそこで交通整理しろ」
岩村はにやりと笑ってとんでもないことを言い出した。
「俺を新しい猟奇殺人事件の被害者にしたいのか?」
岩村はどんな魔法か手も制服も一切汚さず綺麗に平らげている。
「で、今新西京を騒がしている連続猟奇殺人事件についてなんだが――」
俺は言葉を続けると、本題に入った。
「ふむ。つまりせこい私立探偵は俺達が寒い中這いずり回って必死に集めた証拠を温かい喫茶店で飯を食いつつ手に入れると?」
岩村が無表情に口を開く。
「なんてことだ!! これが資本主義だよ。下請けが元請けに搾取される」
俺は大袈裟に首を振る。
「俺にはお前に捜査資料を渡す権限はない」
岩村が冷たく答えた。
「なん――だと――」
俺はショックを受けた顔で箸を取り落とした。
「だが――もし俺がここの昼飯代を払ってもらうことで買収されたのであれば何らかの便宜をはかる必要が生じるな」
「勿論昼飯代は俺の奢りだ」
俺は笑顔で頷く。
「ふむ。じゃあ俺は番田への土産として同じものをテイクアウトしたいと思うのだが?」
岩村は片方の口の端をあげて笑った。
「その抜け目の無さ。お前が課長まで出世したのは当然のことだな」
「では俺はお手洗いに行ってくる。捜査資料をちょっとここに置いておくが――もちろん機密だから見るなよ」
「俺がそんなマナー違反をするとでも?」
岩村は頷いてマスターにテイクアウトを頼むとお手洗いへと消えた。
俺は捜査資料の入った封筒を手に取ると取り出し、ホロリンクのカメラ機能で撮影。
事務所に持ち帰ってゆっくり読ませてもらおう。
岩村が帰ってきた。
「で、新西京のホームズこと斎藤」
「いや、新西京のスペンサーだよ俺は。ホームズだとそのうち勝手に解決してしまうぞ」
「どちらでも構わん。この二週間で六人死んでいる。このままでは新西京の人口が半分になってしまう。さっさと解決するにこしたことはない」
「しょうがないよなぁ岩村。本気を出しちゃっても良いのか?」
「当然捜査協力のお礼として何か掴んだら知らせてくれるんだろうな?」
「おかしいな、昼飯代で手を打ったものだと思っていたよ」
俺は右の口の端をもちあげ、左の口の端を下に下げる。右の眉は眉間に寄せ、左の眉は持ち上げる。
「これは我々の友情の話だよ。ホームズではなくスペンサーのお前は当然俺達の顔を立ててくれるんだろう」
岩村は肩をすくめて答えた。
「そうだな。正直目立ちたくはない」
俺は真面目な表情に戻り頷く。
「流石超一流のアンダーは言うことが違う。俺は殺人事件が解決すればどうでもいいのだが――まぁ、体面を気にする奴が上に多いからな。二時間も本部長に説教をくらったら俺はストレスでお前を勾留したくなるかもしれん」
「その時はほとぼりが冷めるまで新西京から逃げ出すよ」
俺は肩をすくめてそう答える。
「その前に俺が本部長から逃げ出すかもしれん」
岩村も肩をすくめてそう答えた。
そして岩村は立ち上がり、テイクアウトを持って店から出て行った。




