第17話 シュークリームの食べすぎにはご注意を
夏休み中の登校日。
久しぶりの教室は、朝から騒がしかった。
「聞いてほしいにゃ!」
レヴィーが机へ身を乗り出す。
「焼きマシュマロは革命だったにゃ!」
「まだ言ってますの!?」
カトリーヌが即ツッコミした。
「だからそのまま派も――」
「はいはいそこまでー」
キャロルが苦笑する。
「……騒がしい」
ピコはいつも通りだった。
久々に集まった生徒たちは、どこか浮ついている。
「海また行きたいですわー!」
「今度は勝負ですわよ!」
「宿題終わってないにゃ……」
わいわい。
がやがや。
そこへ。
「はーい、
席についてくださいねー」
クロウリー先生が教室へ入ってきた。
「夏休みは楽しんでいますか?」
「はーい!」
「宿題終わってる人ー?」
しーん。
「……先生泣きますよ?」
教室が笑いに包まれる。
だが。
クロウリー先生は、少しだけ真面目な顔になった。
「あと、
ひとつ大事なお話があります」
空気が変わる。
「最近、
学園周辺で不審者情報があります」
ざわり。
「黒い服。
そして蛇の紋章」
その瞬間。
レヴィーたち三人の顔色が変わった。
「……にゃ」
キャロルも目を伏せる。
ピコだけが静かに言った。
「モルドレット」
帰り道。
三人は珍しく静かだった。
「……偶然だよね?」
キャロルが不安そうに呟く。
「でも蛇の紋章って、
あいつらと同じにゃ……」
「異世界から、
ついてきた可能性」
ピコの言葉に、レヴィーの耳がぴくりと動く。
「もしそうなら……
レヴィたちのせいかもしれないにゃ」
少し重い沈黙。
その時だった。
「……あ」
路地の向こう。
黒いローブ。
蛇の紋章。
「いたにゃ……!」
三人は思わず物陰へ隠れた。
「尾行なら得意にゃ」
「尻尾しまって」
「……目立つ」
完全に不向きだった。
それでも三人は、なんとか後を追う。
黒ローブの男たちは、学園周辺を調べるように歩いていた。
「何探してるにゃ……?」
「わかんないけど、
絶対怪しい」
その時。
「……ん?」
先頭の男が、ぴたりと足を止めた。
三人が固まる。
「――そこだ」
「「「にゃーーー!?」」」
数分後。
「うぅぅ……」
三人は縄で拘束されていた。
「尾行が雑すぎる」
「経験不足」
「子供だな」
黒ローブたちが冷たく言う。
「レヴィたちをどうするにゃ!」
「さて」
男がしゃがみ込む。
「なぜ我々を追っていた」
三人が黙る。
「蛇の紋章を知っていたな」
空気が少し変わった。
レヴィーが思わず言う。
「だ、だって異世界でも――」
「レヴィー!」
キャロルが止める。
だが遅かった。
「……異世界?」
男の声色が変わる。
「どうやって
ついてきたんだにゃ……」
「ゲート……?」
ピコまで小さく呟く。
男たちの間に、緊張が走った。
「……詳しく聞かせてもらおうか」
男がゆっくり近づく。
空気が重くなる。
その瞬間。
ヒュンッ!!
「っ!?」
黒ローブの剣が弾き飛ばされた。
屋根の上。
月を背に、一人の男が立っていた。
「そこまでだ」
「パーシヴァル!」
レヴィーたちが顔を上げる。
パーシヴァルは静かに剣を抜いた。
「学園の生徒に手を出すな」
「魔導警察……!」
黒ローブたちが距離を取る。
だが。
「撤退だ」
煙幕。
白煙が路地を覆う。
「逃げるにゃ!」
「深追いは不要」
パーシヴァルが煙の向こうを睨む。
「……ちっ」
すでに姿は消えていた。
その頃。
遠くの屋根。
黒ローブの男が静かに口を開く。
「異世界……か」
「例の三人、
監視対象に加える」
「泳がせろ」
「必ず何かある」
男の視線の先。
そこには、パーシヴァルと話す三人の姿があった。
「大丈夫か」
パーシヴァルが尋ねる。
「助かったにゃー……」
「ありがとうございます……」
キャロルが頭を下げた。
パーシヴァルは三人を静かに見つめる。
「きみたちが勇敢なのは知っている」
三人が少し顔を上げる。
「だが、
無鉄砲と勇敢は違う」
静かな声だった。
「相手の正体も分からないまま、
尾行して捕まるなど論外だ」
「うぅ……」
三人の耳と尻尾がしゅんと垂れる。
「「「ごめんにゃさい」」」
三人そろってしょんぼり。
パーシヴァルは、小さく息を吐いた。
「……無事だったからいい」
「だが次からは、
必ず大人を頼れ」
三人がこくこく頷く。
その姿に、パーシヴァルは少しだけ表情を緩めた。
夜風が、静かに吹き抜けていった。




