第16話 マシュマロは焼いてもおいしいもちもちふわりん
昼下がりのマギーア。
「暇にゃぁぁぁ……」
レヴィーが机へ突っ伏していた。
キャロルは図書館。
ピコは錬金実験中。
今日は珍しく、一人だった。
「することないにゃ……」
「……何をだらけていますの?」
振り向くと、カトリーヌが立っていた。
「お嬢も暇にゃ?」
「ひ、暇ではありませんわ!
ただ少し時間を持て余しているだけですの!」
「それを暇って言うにゃ」
「言いませんわ!」
いつもの言い合い。
でも今日は周りがいない。
少しだけ沈黙が落ちる。
「……異世界でも行くにゃ?」
「し、仕方ないから付き合ってあげますわ!」
こうして。
珍しく二人だけの冒険が始まった。
ピコの錬金部屋。
「勝手に使って大丈夫かしら……」
「すぐ戻ればへーきにゃ!」
レヴィーがゲートへ飛び込む。
「ちょ、
待ちなさいなーー!?」
カトリーヌも続いた。
光。
浮遊感。
そして。
「にゃっ……?」
見知らぬ街。
マギーアに少し似た空気。
耳や尻尾を持つ人々。
角のある種族。
羽の生えた子供。
「ちょっと安心感あるにゃ」
「耳のある方ばかりですものね」
だが次の瞬間。
ぐにゃり。
空間が歪んだ。
「にゃっ!?」
「えっ、
ちょっと待っ――」
景色が裂ける。
「カトリーヌーー!?」
「レヴィーーー!?」
二人の姿が、別々の方向へ弾き飛ばされた。
「いたたた……」
レヴィーが起き上がる。
「完全にはぐれたにゃ……」
その時。
「おい!」
三人の小さな獣人の子供が現れた。
「お前強そうだな!」
「耳ふわふわ!」
「子分になれ!」
「にゃんで!?」
だが。
「迷子なら案内してやる!」
「ほんとかにゃ!?」
「その代わり、
オレたちの抗争を手伝え!」
「不穏ワードきたにゃ!?」
一方その頃。
「まったく……
レヴィったら……」
カトリーヌも別の場所へ飛ばされていた。
「おっ、
姉ちゃん強そう!」
「こっち来い!」
「助っ人だー!」
三人組の子供たちが群がる。
「な、
なんですのあなたたち!?」
「敵を倒してくれ!」
「嫌な予感しかしませんわ……」
夕方。
空き地。
レヴィーは、相手チームの姿を見て固まった。
「カトリーヌ!?」
「レヴィー!?」
子供たちも驚く。
「「知り合いーー!?」」
「こっちの姉ちゃんのほうが強い!」
「うちのボスが最強だ!」
「「負けない!!」」
わちゃわちゃ。
「……で、
そもそも何で争ってるにゃ?」
すると子供たちが叫んだ。
「マシュマロは焼くべき!!」
「そのままが最強!!」
「「譲らない!!」」
レヴィーとカトリーヌが、同時に真顔になる。
「「くだらなっ!?」」
だが。
「でもこっちの方が強い!」
「いやこっち!」
子供たちが煽る。
「負けないにゃ!」
「望むところですわ!」
なぜか乗る二人。
火花魔法が弾ける。
ぱちぱちぱちっ!!
風魔法が砂を巻き上げる。
水弾が空中で弾ける。
光の魔法が夕空を駆けた。
「うおおおお!!」
「かっけぇぇぇ!!」
子供たちは大興奮だった。
だが。
「……で、
なんで私たち戦ってるんですの?」
「なんか流れにゃ」
二人とも急に冷静になった。
「焼いたほうが――」
「そのまま――」
ゴツン!!
「「いったぁぁぁ!?」」
レヴィーとカトリーヌの、見事な同時ゲンコツだった。
「けんかばっかりしてると
友達減るにゃ!」
「食べたいなら
両方食べればいいんですの!」
子供たちがしゅんとなる。
そして。
もぐもぐ。
焼きマシュマロ。
「……うま」
「そのままのも美味い」
「知ってたけど……」
「なんか引けなくなってた」
レヴィーとカトリーヌが顔を見合わせる。
「「子供ですわね(にゃ)」」
思わず吹き出した。
夕焼けの街。
「なんだか疲れたにゃー」
「でも……
少し楽しかったですわね」
自然と並んで歩く二人。
前より、少しだけ距離が近かった。
マギーアへ戻る。
すると。
「ふふっ、
それでね――」
キャロルとオーロラが、普通に談笑していた。
「ミーミア、
それ違う」
「えへへへー!」
ピコとミーミアも、なぜか仲良くしている。
レヴィーとカトリーヌは同時に固まった。
「なんでそっちも仲良くなってるにゃ!?」
「意味が分かりませんわーー!!」
今日もマギーアには、賑やかな笑い声が響いていた。




