第14話 チューインガムって当たり前にそこにある気がするよね
ピコの錬金部屋。
「今日はどこに繋がるかにゃー!」
レヴィーがゲートの前で尻尾を揺らす。
「ランダム性未解析」
ピコが魔法計測器を覗き込む。
「つまり分からないのね」
キャロルがため息をついた。
「カトリーヌたちは来ないの?」
「今日は家の用事らしい」
少しだけ静か。
でも。
「じゃあ今日は三人旅にゃ!」
レヴィーが笑った。
「出発」
ピコが杖を向ける。
揺らぐ光。
開くゲート。
三人は飛び込んだ。
次の瞬間。
「……にゃ?」
見慣れない街並み。
高い建物。
ガラス窓。
光る看板。
「なんか……
普通の街にゃ?」
レヴィーがきょろきょろする。
「魔力かなり薄い」
ピコが小さく呟く。
「でも人は多いわね」
キャロルが周囲を見回した。
その時だった。
「トリック・オア・トリートーー!!」
仮装した子供たちが、一斉に走り抜けていった。
「にゃっ!?」
「なに今の!?」
魔女。
吸血鬼。
幽霊。
お菓子袋を抱えた子供たち。
「……祭り?」
「収穫祭系統と予測」
ピコが分析する。
「すっごい楽しそうにゃ!」
レヴィーの目が輝いた。
「うわっ!
その耳すごっ!!」
三人が振り返る。
そこには同年代くらいの子供たちがいた。
「その尻尾どうなってるの!?」
「作り物!?」
レヴィーの耳がぴくっと動く。
「本物にゃ!」
「えええええ!?」
子供たち大興奮。
キャロルが小声で言う。
「……これ、
仮装扱いされてる?」
「都合いい」
ピコが頷いた。
気づけば三人は、街のハロウィンイベントへ混ざっていた。
「見て見て!
魔法使いの仮装!」
「クオリティ高っ!」
「本物にゃ」
「まだ言ってるー!」
レヴィーが笑う。
「せっかくだし、
盛り上げるにゃー!」
レヴィーが指を鳴らす。
ぱちっ。
夜空へ火花魔法が弾けた。
オレンジ色の光が、巨大なジャック・オー・ランタンを描く。
「うわぁぁぁ!!」
子供たちが歓声を上げた。
「なら私も」
キャロルが魔法陣を展開する。
ふわり。
可愛いゴーストたちが空を飛ぶ。
だが。
「お菓子よこせぇぇぇ」
「にゃああああ!?
なんかリアルにゃ!!」
「ちょっと気合い入れすぎた」
キャロルが目を逸らした。
さらに。
「量産開始」
ピコが杖を振る。
すると、小さなクッキーたちが歩き始めた。
「動いたーーー!!」
「食べていいのこれ!?」
子供たちは大盛り上がりだった。
気づけば、街はすっかり夜景に包まれていた。
「楽しかったにゃー……」
レヴィーが袋いっぱいのお菓子を抱える。
「お菓子もらいすぎ」
「チューインガムいっぱいある」
ピコが不思議そうにガムを見ていた。
「そんな珍しい?」
キャロルが聞く。
ピコは少し考える。
「世界が違うと当たり前も違う。
でも当たり前が同じものもあるって不思議」
レヴィーが笑った。
「でも楽しいならオッケーにゃ!」
ゲートをくぐり、三人はマギーアへ戻ってきた。
「にゃはは!
あの光るお化けすごかったにゃー!」
「レヴィーが一番騒いでた」
「事実」
すると。
少し先を歩くクロウリー先生の姿が見えた。
レヴィーたちが顔を見合わせる。
にやり。
そーっと背後へ忍び寄る三人。
「「「トリック・オア・トリート!!」」」
クロウリー先生がびくっと肩を揺らした。
「お菓子くれないと、
いたずらしちゃうぞにゃー!」
一瞬の沈黙。
そして。
クロウリー先生が、にやぁっと笑った。
「いたずらする悪い子には、
宿題増やしちゃうぞ~?」
「「「にゃあああああ!?」」」
三人は全力ダッシュで逃げ出した。
「待ちなさーーい!!」
クロウリー先生も追いかける。
賑やかな声が、夜の学園へ響いていく。
やがて静かになった廊下。
クロウリー先生は、床に落ちていた小さな包みを拾った。
「……チューインガム?」
包みを開ける。
ひとくち。
「あら、おいしい」
クロウリー先生は少し笑う。
「どこのお菓子かしら。
今度聞いてみよ」
マギーアの夜風が、静かに吹き抜けていった。




