第12話 チームワークはウエハース模様
学園レース場。
「遅いにゃーーーー!!」
レヴィーが空を駆け抜ける。
風を裂く。
ほうきが唸る。
「レヴィー!!
先走らない!!」
後方からキャロルが叫ぶ。
「前出すぎですわーー!!」
カトリーヌも追いかける。
「ふにゃぁぁぁぁ!?」
ミーミアが一人だけ遅れていた。
「魔力出力バランス悪化」
ピコは飛びながらメモを取っている。
「ピコ今それやる!?」
オーロラがツッコんだ。
六人の動きは、見事なまでに噛み合っていなかった。
レヴィーは速すぎる。
カトリーヌは張り合いすぎる。
キャロルは指示を出しすぎる。
ピコはマイペース。
ミーミアはふらふら。
オーロラだけが必死に全体を整えていた。
「これチーム戦ですわよね!?」
「にゃははは!」
「笑ってる場合じゃない!!」
その瞬間。
ゴッ。
「にゃっ!?」
レヴィーのほうきが、障害リングへ激突した。
ぐるん。
「にゃああああああ!!」
ほうきが大回転する。
「レヴィー!!」
キャロルが顔色を変えた。
落ちる。
その直前。
「捕まってくださいですわ!!」
カトリーヌが急加速。
レヴィーの腕を掴む。
「うにゃっ!?」
さらに。
「出力補助」
ピコが加速魔法を展開。
「右へ寄せます!」
オーロラが風を読む。
「がんばれですーー!!」
ミーミアの謎応援が飛ぶ。
ギリギリで体勢が戻った。
地上。
「死ぬかと思ったにゃ……」
レヴィーがへたり込む。
少し沈黙。
キャロルがため息をついた。
「……一人で突っ込むから」
「でも、
みんな助けてくれたにゃ」
レヴィーがぽつりと言う。
カトリーヌがふんっと顔を背けた。
「当然ですわ!
チームなんですから!」
オーロラが小さく笑う。
「少し形になってきましたね」
ピコが頷く。
「個体性能より連携」
「ウエハースみたいですー!」
ミーミアが元気に手を挙げた。
「ウエハース?」
レヴィーが首を傾げる。
「でこぼこだけど、
一緒だとおいしいですー!」
一瞬静かになる。
「……なんか分かるにゃ」
レヴィーが笑った。
本番当日。
巨大な競技場。
歓声。
実況。
空を飛び交う無数のほうき。
「緊張しますわ……」
カトリーヌが珍しく弱気だった。
「今さら?」
キャロルが呆れる。
「にゃはは!
楽しんだもん勝ちにゃ!」
レヴィーはいつも通り。
「転ばないように」
ピコが淡々。
「がんばれですーー!!」
ミーミアは補欠席から旗を振っていた。
『スタート!!』
一斉に飛び出す。
爆風。
加速。
魔力光。
「前方乱流!」
キャロルが叫ぶ。
「突破しますわ!」
カトリーヌが前へ出る。
「今にゃ!!」
レヴィーが急加速。
空中障害。
魔法リング。
妨害風圧。
だが今度は違った。
「左ルート安全!」
「加速補助!」
「任せますわ!」
全員が、ちゃんと周囲を見ている。
「いっけぇぇぇぇぇ!!」
五本のほうきが、一つの流星みたいに空を駆け抜けた。
『第二位ーーー!!』
「惜しいにゃーーー!!」
レヴィーが悔しがる。
「でも楽しかったですわ!」
カトリーヌも笑っていた。
「最後ちょっと感動した」
キャロルがぽつり。
「エネルギー消費量過多」
ピコはふらふらだった。
「みんなかっこよかったですーー!!」
ミーミアが泣いていた。
夕暮れ。
競技場の空気が変わる。
『続いては特別エキシビション――』
観客がどよめく。
『三連覇王者、
パーシヴァル選手!!』
静寂。
次の瞬間。
シュンッ。
「……え?」
レヴィーが目を見開く。
見えなかった。
気づいた時には、パーシヴァルはもう遥か先を飛んでいた。
速い。
なのに静か。
美しい。
風そのものみたいだった。
「すご……」
カトリーヌが呆然と呟く。
「これが……本物」
キャロルも息を飲む。
レヴィーは、空を見上げたまま笑った。
「もっと速くなりたいにゃ」
夕焼けの空を、一筋の光が駆け抜けていった。




