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河童

「いらっしゃいませ」


「早く選ばないと選ばないと」


 どう見ても河童だ。急ぎの河童だ。


 本にとって水は大敵だ。なので、河童は古書店に入る前に身体を拭き、頭の皿の水が乾くまでの間に本を選ばないといけない。


「良かったら本を選ぶのをお手伝いしましょうか?」


「ありがとう。よろしく頼むよ」


「どういう本をお探しですか?」


「心にビビッと来る本なら、どんなジャンルでも歓迎さ」


 これは難しいなと思った。


「これと、これとかどうですか」


 二、三、適当に見繕ってみたが、河童は首を振った。


「君はどんな本が好きなんだい?」


 河童からの逆質問だ。


「えっと、俺は純文学が好きですけど」


「なら君のおススメの本を買っていこうとしようか」


 俺のおススメの本か……。読みやすいのといえば……。


「ハッピーエンドじゃなくてもいいですか?」


「別に大丈夫だが、それはネタバレだね」


「すみません」


「まあ、いい。その本を頼む」


 俺は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を手渡した。


「宮沢賢治か、いい趣味してるね」


「ありがとうございます」


 河童は「銀河鉄道の夜」を買っていった。


 


 あの河童にもジョバンニとカムパネルラの旅路を見守ってほしい。

作者も「銀河鉄道の夜」は大好きです。

あの切ない感じが良いんですよね。

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