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二食 調布ダンジョン②

ダンジョンを進むと、ゴブリンが現れた。


 肌は濁った緑。背丈は子どもほど。

 単体なら脅威ではない――はずだ。


 だが、こいつらは群れる。

 油断すれば、数の暴力で食い殺される。


 (……まあ、今回は関係ないな)


 幸い、目の前にいるのは一匹だけ。

 せっかくだ。スキルを試すには丁度いい。


 『瓦顎ががく


 瞬間、歯が軋む。

 嫌な音を立てて、骨ごと形が変わる。


 次の一歩で距離を詰めた。


 「ギッ――」

 声になる前に、噛み砕く。


 肉も骨も、紙のように裂けた。

 一瞬。抵抗すらなかった。


 《【超暴食】が発動。

  【気配察知】を獲得

  【索敵】に進化しました》


 (……なるほど)


  視界の外側に、微かな“気配”が浮かび上がる。

  壁の向こう、通路の奥――生き物の存在が、ぼんやりと掴めた。


  転がったゴブリンの魔石を拾い、俺は先へ進んだ。


 まずい肉を食べなければいけないという条件はあるものの、【超暴食】は非常に強力な異能だ。


 いや、異能というより特性か。


「おわっ!」


 耳がキーンと鳴る。

 頭の芯を直接揺さぶられるような不快感。


 クロイロコウモリだ。

 超音波で獲物の平衡感覚を狂わせ、動けなくなったところを鋭い牙で仕留める。

 テレビの特集で見たことがある。


(【索敵】……上を見てなかった!)


 完全に油断した。


 耳を塞ぐ――だが遅い。


 影が落ちる。


(来るッ!)


 牙が届く、その瞬間に合わせて――


「『瓦顎がかく』!」


 噛み砕く。

 羽ばたく暇も与えず、本体をそのまま喰らいちぎった。


《【超暴食】が発動

 【超音波】を獲得

 【マップ】に進化しました

 【索敵】と【マップ】を合成

 【マッピング】に昇華しました》


(……は?)


 次の瞬間、視界が変わる。


 頭の中に、立体的な構造が浮かび上がった。

 通路の形、分岐、そして――点のように表示される“反応”。


(これ……全部、分かるのか)


 さっき見落とした“天井”も含めて。


 死角が、消えていく。


 思わず笑みが漏れた。


(当たりだな、この異能)


 足元の魔石を拾い、今度は空間全体を把握したまま、先へ進む。


 異能を試し、奪い、また試す。

 その繰り返しの中で、俺は確実に“別物”になりつつあった。


 【蹴豪】で踏み込めば、地面が軋む。

 【穿突】は、ホーンラビットの突進とは比べ物にならない速度で敵を貫いた。


 ――前の俺なら、あり得なかった力だ。


 【マッピング】によって把握したこのダンジョンは、構造も魔物の分布もすでに頭の中にある。

 ゴブリン、ホーンラビット、クロイロコウモリ。

 そして奥に進むほど、それぞれの“上位種”。


 途中、地震のような揺れがあった。

 だが――今は、無視する。


 脳裏に浮かぶ地図。

 そこにいる“ボス”の位置も、はっきりと見えている。

 ……いや、あれはまだ本命じゃない。中ボス止まりだ


 (勝てる)


 根拠はある。


 今の俺なら、あれを仕留められる。


 それに――あの個体の異能は、使える。


 静かに息を吐き、俺は一歩を踏み出した。

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