赤 2
ーーおばあちゃん、貴方の顔を見ると喜ぶから。
そう言った母は、自分に葡萄酒とケーキを持たせて、最近寝たきりの祖母の見舞いを頼んだ。
何故か祖母の家は村から離れた村の中にある。道が整備されているとはいえ、自分は随分歩かなければならなかった。
祖母の家を前に、扉を叩こうとしたとき、庭にある“何か”に気付いた。
木に寄りかかる、真っ白な布に包まれたそれは、以前はなかったものだ。
自分はしゃがむと、花壇に植えられた大きな花の隙間から、それ様子を注意深く見る。
真っ白な頭巾の下には、真っ白な髪と肌。唯一の色は小さな唇の淡紅色だった。
人ーー自分より少し幼く見える眠った少女。
木の幹の焦茶、芽生えたばかりの草の緑、柔らかな風になびく花花の淡い色。その中にある異様な白さはどこか美しく、儚かった。
胸がざわめく。
「こっちにおいでよ」
少女はゆっくり目を開けた。覗く真っ赤なーー瞳。
あまりの衝撃に、思わず口が開く。今までに無い動揺に、更に動揺する。
真っ赤な瞳を持つ真っ白な美少女は、何も反応を示さない自分に、怪訝そうに小首をかしげながらも、その顔に小さな笑みをうかべていた。
自分は立ち上がると、恐る恐る少女に近づいていく。
少女はより一層笑みを深めて、彼女の隣を、真っ白な服の袖で隠れた手で叩いた。
「おばあちゃんに用事?」
彼女の隣に腰を下ろすと、彼女は可愛らしい声で自分に尋ねた。
近くで見る少女に胸がうるさい。そんな自分が滑稽で愛しかった。
「うん。君は誰?」
「私はアナ。おばあちゃんとはーーお友達かな?わかんないや」
アナという少女はくすくすと笑った。
「貴方は誰?貴方もおばあちゃんのお友達?」
「いや、ーー僕は、フォー。おばあちゃんの孫だよ。」
自然と笑みがうかんだ。
「フォー、フォーね。いつもおばあちゃんからお話を聞いてるの。美しくて、賢い自慢の孫息子だってね」
アナは満面の笑みをうかべる。
「私、ずっとフォーとお友達になりたいと思っていたの。ねえ、私とお友達になってくれる?」
“友達”という言葉がどこか嬉しく、悲しくもあった。
「うん。いいよ」
この日から、アナと過ごす時間が何よりも特別なものになった。そして、不思議と誰かを虐げることはなくなった。




