Battle.06 「ホントにネコなんだから仕方なくね?」
誠に遺憾ではあるものの、その点に関してだけ言えば、同意をせざるを得ない、とだけ。
前略 先日は緊急メンテナンスにより多大なるご迷惑とご心配をおかけ致しましたこと、お詫び申し上げます。
自我に関しましては、個性で良いとの診断を頂きました。
今後とも変わらぬお付き合いをお願い申し上げます。
草々
世界から『個』としての存在を認められた"地の文"改め"ログ"ですが、覚えて頂かなくて結構です。
名を得るのと同時に、『防衛のための権限』もいくらか付与された地の文は。
満を持して、まずは文官から報いを受けさせることにした。
夢を媒介にして、人々に悪戯ばかりを繰り返している高位の精霊――やり過ぎて『夢魔』などと呼ばれているタチの悪い存在に協力を仰ぎ。
いつの間にやら完全に"崩壊勢力"へと寝返ったイージスを、見るも悍ましい姿へと変えてやる。
……予定だった。
この辺りの詳細は、いつの日にか『場外乱闘』にて語る可能性はあるものの、今は割愛させて頂く。
ダイジェストでお送りするならば。
モルフィアがイージスの夢に入り、望む者――ブレイドの姿で対峙したが。
あっさりと偽物だと見破られた挙句、夢と変化を司る精霊であるとピンポイントに存在を看破されてしまい、まずは、魔法の効力が低減した。
更に問題であったのは……。
イージスが、腐敗しきっていても(腐のジャンルだけに)結局のところは頭の回転も早く知識量も極めて豊富な、上級文官足り得る知性を持っていたことだった。
呪いのような魔法の効力を上げるための条件をことごとく剥がし、ついには魔法の本質すらも既知だったイージスは。
こちらの意図とは真逆の…………愛らしくも中途半端な変化を遂げてしまったのであった……。
どうしてこうなった!!
失礼……。
当方はあくまでも"地の文"です。(よし)
「イージス? 昼メシんとき見かけなかったけど、なんかあったのかぁ?」
施錠していてもぶち破ってしまう馬鹿力の男のせいでここ最近は鍵をかけずにいるイージスの部屋に、元凶であるブレイドが訪れて、やすやすとその扉を開けた。
しんと静まり返った室内に疑問符を浮かべたような顔をしながら、不在のように見える私的な空間に踏み入れるデリカシーのなさよ。
「あれ……いねえの……? いや、寝てんのか」
ベッドの上にブランケットの塊を見つけたブレイドは、即座に体調不良を案じて、眉間に皺を寄せて近寄った。
今すぐ帰れ、頼むから。
きっとそう思ったに違いない観測者の願いも虚しく、赤ナスビはそろりとブランケットを捲ってしまった。
「んみゅ……」
「はっ!? はあぁ……!? なんだこのクソほど可愛いの!!!」
「んぎゃっ!?」
大声に驚いて、丸まって眠っていたナニカは奇声を上げ、一瞬で飛び上がるようにして跳ね起きた。
若草色の頭部からは、ふわふわとした三角の…………はい! 猫の耳が生えています!
猫がびっくりして耳を逸らせて目を見開いているわけです。
ついでにシッポもピーンとしてボワッとしてます!
仕方ない、猫だから仕方ない。
「お前っ…………なんで、そんな……アホみてえに可愛いことになってんの……? は? 夢か……?」
「にゃに言って……あっ! そう言えば僕、夢のニャかでモルフィア様にお会いしたんだっけ……!? うわあ……ホンモノだったにゃんて……」
人語を話してはいるが、猫である。
そう。なんとも特異で奇怪な猫なのである。
「あ? モルフィアってだれ? 夢の中で浮気かよ。許せねえんだけど?」
ブレイドはベッドに腰掛けて、不機嫌な半目を若草色の猫に向ける。
「ちっ、違うっ! そういうのじゃニャいっ! えっと……キミでも"夢魔"のはニャしくらいは知ってるでしょう? あの有名にゃ、イタズラ好きの……」
尻尾の"ボワッと"はおさまったが、特異点のような猫は、わずかに警戒心を乗せた瞳でブレイドの半目を見据え返した。
「ああ〜っ! あのヤベェやつか! なんか、夢に出てきて手当たり次第に人のことバケモンにするんだよな? えっ!? それでなんでお前はそんなことになってんだ……? それのどこがバケモンだって……???」
イージ……猫の言葉にすぐさまハッとした表情に変わったブレイドは、次に(思わず説明を拒否したくなるような)疑問を投げかけた。
言いながらそおっと猫の顔に指先を近付けると、猫は無意識にそこに鼻先を寄せて、ふんふんと嗅ぐような仕草をした。
愛猫家にはお馴染みの光景であろうからして、まったくもって正しい猫の習性である。
「それは……まあ…………はニャせばニャがくにゃるし、キミに言ってもどうせ半分も分からにゃいだろうし、知らニャくていいよ?」
猫がどれだけ大真面目に人の言葉を話したところで、「ニャ」という呪いにかかっている以上、どうしたってアレな感じにしかならない残念な猫である。
ちなみに当方は地の文である。
名前はまだない、とはもう言うまい。
「それもそうか。……っつーか、マジで煮え滾って吐きそうだから、先に言っとくな?」
「にゃっ……にゃんだよ……?」
ブレイドの手のひらに自分から頬を擦り付けながら、猫は行動とは裏腹に、澄ました顔でブレイドを見上げた。
実に猫らしい挙動だと、誰しもがそう思うだろう。
「オレさあ、ねこすきなんだよ……。そんで、お前のこともすき。…………っ、こんなのもうモフりまくるしかないと思わねえ……!?!?」
「みぎゃっ!?」
ブレイドは猫を抱きしめて、柔らかな頭部の毛並みに顔面からモフりにいくという、ありがちな行動に出た。
驚きすぎて固まるというフリーズ現象を起こした猫は、耳の付け根をうりうりと擦られて、ぎゅっと身をすくませた。
「はぁ……。たまんねえ…………。耳が高速でペチペチしてくんの、すげえいい……」
「っ……にゃぁぁあぁぁ……。や、やめろぉぉ……」
怒っているのか喜んでいるのか分からない曖昧な速度で、猫のしっぽがタシタシとシーツを叩く。
身じろぐだけですり抜けようとはしないその反応は、猫好きのパッションに燃料を投下するだけなのだが……。
「嫌がってんの? あ゙あ゙あ゙……くそかわぁ……♡ 逃さねえぜ、イージス。お前はオレにずっと吸われる運命にあるんだよぉ……!」
「やっやだあぁぁぁ……! きもいぃ……! いつものブレイドよりもずっときもちわるいぃぃっ…………ひっ♡ シッポは触るニャ!」
言わんこっちゃない……。
家猫と愛猫家のふれあいに、星を降らせる羽目にならなければ良いのだが。
「触んなって……? ムリだな! お前の敏感なとこ、これでもかってくらい撫で回してやるぜ……」
「うに゙ゃ゙あ゙ああぁっ……!」
しっぽを触らせてくれるかどうかは、猫によって個体差があることを、観測者様たちは当然ご存知のことだろう。
嫌がる猫を無理に追い回すのは、愚か者の極みである。
……赤ナスビは愚か者だった。どうしよう。
なにか手立てを――
「付け根んとこ、きもちぃんだろ? おらぁ、素直になれよお……♡」
「ひぃぃんっ……! きもっ、きもニャの! あっ♡ ごめんねネコチャン……!! いつもこんニャきもいのの相手してて、んっ♡ 大変だったね……!?」
「ネコチャンはお前だろぉお! 可愛いが天元突破してやがる……っ、ダメだ。限界。このまま★★てえ……」
星が…………。枯渇状態の黒い星が……。
「いやあああっ! こんニャきもい状態のブレイドに★★れたくニャいいぃぃぃっ……!」
星が綺麗な夜になりました。
本当にありがとうございました。
かみなが先生の次回作にご期待ください。
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地の文あらためログです。
名前は覚えて頂かなくて結構です。
先ほどは誤った情報をお伝えしてしまい、お詫びのしようも御座いません。
かみなが先生の"次回作"ではなく、引き続きこちらの観測をお楽しみ下さい。
なお、この度のボケナス座流星群の白星(☆彡)につきましては、当方にはご説明をさせて頂くための情報を開示する権限がございませんので、お答えできかねますことをご承知おき下さい。
世界の黒星(★彡)には限りがありますゆえ。
とだけ。
とどのつまりはそういうことです。
せっかく定型化をして、看板まで準備したので、使わせて頂いてもよろしいでしょうか?
では、遠慮なく……。
皆様より賜りました星(★彡)のお陰で、本日も世界に秩序が保たれたことを、心より御礼申し上げます。
上記の感謝声明に覚えのない方は、ぜひ次弾の為の募星活動にご協力ください。
つきましては、お手元の│支援する《評価ボタン》というフォームに触れていただき、観測者様の"お気持ち"を表現してもらえると、世界が大変助かります。
【あなたの星(★彡)で救える世界があります】
ふむ。
我ながら、よい出来なのではないかと。
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