Battle.02 「筋トレはセッ…………じゃねえだろ!?」
それはそう。
騎士団の訓練施設の、とある一室にて、男が二人。
この場に似つかわしくない細身の美形が、たくましい騎士を見上げて不安そうな声をもらした。
「ねえブレイド……。ホントにやらなきゃダメ……? 僕、やっぱり――」
「お前からやりたいって言ったんだろぉ? 今さら怖気付いてんじゃねえよ……」
わずかに潤んだヒスイのような瞳を、赤メノウによく似た目で見据えながら、ブレイドはイージスの手を取って部屋の中央へと導いた。
これは至って健全な……。
「ほら、まずはそこに手ぇ付いて。頭こっちな?」
「うぅ……。やっぱり今日はやめない? あ、明日も仕事だし……支障が出ちゃうかも……」
そう。健全な、筋トレの話である。
"地の文"と呼ばれている、この状況説明を省いてさえしまわなければ、どうということはないのだ。
「……オレだって別に、無理にお前にツラい思いさせたいワケじゃないんだぜ? それに、多少肉付いてたって、可愛いから悪かないじゃん……」
「や、やだ……。ブレイド以外にまで、女の子扱い、されたくない……!」
まろみを帯びてきた頬のラインを撫でられ、イージスは思わずその手をはたき落としてそっぽを向いた。
拒絶に慣れすぎているブレイドは、全く意に介した様子もなく、叩かれた手を軽く振りながらへらりと笑った。
「まぁなあ……。柔らかそうになると、余計にそう見えるよな……。ほら、やっぱ頑張れ! オレも一緒にやってやるから」
「……分かった。お手柔らかに、ね……?」
イチャイチャしてないで、早く始めてください。
数分後。
室内にはなんとも悩ましい吐息が響き始めたが、腕立て伏せをしているだけである。
「んっ……んん、も……無理……ッ」
「ヘバんのはえぇなあ……。あと三回だけ、なっ。がんばれ?」
本当にがんばれ、イージスよ。
腕立てをしているだけでセンシティブな空気を纏わないでもらいたい。
「ふんんぅ……っ! おわ、終わったぁ?」
「よしよし、頑張ったな。次はこうな? 真似してみろ」
アレな感じの声をもらしながらなんとかやり遂げたイージスに、優しく髪を撫でてやりながらも、ブレイドは更なる試練を与えていく。
「え……なに、それ……。む、無理そうしかないんだけど……」
スクワットキープ……あるいは『耐久スクワット』と呼ばれるような、しゃがんだまま姿勢を保つ類いのアレを見せつけられたイージスは、ドン引きの構えでブレイドを見やった。
「ええ……? 普通に動くほうが無理かと思ったんだけど? こんな、感じ、の……!」
「あっ無理だ。断然ムリ」
ど健全な通常のスクワットを実演されて、イージスは諦めて最初の提案に乗ることにした。
早くしてください。
「ひぃん…………無理しかないよぉ……! こ、こんなのっ……数分だって、もたないぃっ……」
「エッッッ…………!? あのさ、イージス……必死なとこ悪りぃんだけど……」
「なっ……なに……?」
「こんなに尻だけ突き出してちゃ、だめなんだよなあ……」
なんとも不恰好なイージスのスクワットもどきに、ブレイドは憐憫の情を湛えた眼差しを向け、手ずからポジショニングを整えてやることにした。
ブレイドよ、余計なことをするんじゃない……。
「ひっ……バカぁ! なにすんの……っ!?」
「いや、もっとこう……さ。腰逸らさずに……膝も、こう……」
みなさんは、無理な筋トレは控えましょう。
それぞれの体力、筋力に合ったトレーニングを、適度に行ってください。
「やっ! やだあぁぁ……っ、あし、これ以上っ……」
「ほら……。ちゃんと、奥まで腰落とせよ」
「あっ、や……むりぃ……! ホントにやめてっ……これ以上はぁ……っ!」
負荷に耐えきれず、筋肉とともに悲鳴を上げるイージス。
もしもこの部屋の前を誰かが通りかかれば、おそらく三度見はするであろう意味深な叫び声は……。
扉を開けて中を覗いてみれば、何ひとつとして誤解のされようもない、トレーニング風景の一部なのであった。
地の文は、本編外であるのをいいことに、自制を始めた。
今回の戦いは、いささか冷静さを欠いて言葉が乱れてしまったのではないか、と。
それはさておき。
諸事情により星(★彡)を集めなければならなくなったという件について、重ねてお願い申し上げねばなるまい。
くどいようではあるが、世界の存続のために、どうかお手持ちの星(★彡)を分けて頂きたい。
これ以上くどい話を聞かされたくない観測者は、おそらくすぐにでも――
そっと│支援する《評価ボタン》というフォームに触れることだろう。
なにやら悪どい商売のようだが、地の文にとっては死活問題なのである。
観測者様方におかれましては、広大な御心にて、なにとぞご容赦いただきたく。
そんな言葉を残して一時遮断した、誰かに励まされたい地の文なのであった。
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