29 迫る決戦
「あ、いたいた! おーいカレン!」
あら、とカレンが振り向いて、三人もそれに習う。視線の先にはローブに身を包んだ選手がいた。
金髪の少年だった。
その少年魔術師が近付くと、カレンはマリー達のほうを向き、鼻を鳴らして笑った。
「紹介するわ、こちらが、ファルス・ペンドレン」
紹介をしていたカレンの目が、デュオに留まった。デュオの目は丸く見開かれていて、正に驚きを隠せない様子だ。その視線の先は、今、紹介を受けたファルス・ペンドレンのほうへとむいている。
やがて、ファルスと呼ばれた金髪の少年が口を開いた。
「デュオ!! お前なんでここに」
「ファルスこそ! どうして……」
カレンは知り合い? といったように目を点にしてその状況を傍観していた。
「カレンは、俺のいとこなんだ。今回大会に出場することが決まって、カレンの知り合いで、魔法使いでもある俺を、呼んでくれたんだ」
デュオと同じ年齢の少年が武道会に出ることは、普通では考えられないことかもしれないが、その少年がセイラムズ・ガーデンの出身であれば、話は別である。
強力な魔法はすでに教わっており、ファルスも、そうした魔法を今までに数多く発動させてきた経験を持っている。
実践で引き抜かれても納得できるほどの実力を持っているといっても、差し支えはないだろう。
「お前こそデュオ、どうしてここに? 魔法は……使えるようになったのか?」
「いや、実はかくかくしかじかで」
デュオがこれまでの経緯を説明すると、ファルスは驚いたような、感心したような表情を向けた。
「へー! 剣を習ったのか。で、腕前はどうなんだ」
「うーん、まあ一応師匠も認めてくれたみたいだし……」
マリーを見やる。
「そうよ。デュオは私の次に強い」
カレンの目が一瞬光り、デュオの顔が青ざめた。
「ふーん、マリーの次、ね。まあ、楽しみにしているわ、少年剣士クン」
じゃそういうことで、とカレンとファルスの二人が立ち去った。
「デュオ、多分大将はカレンだと思うわ。……あなたが戦うことになる」
デュオは、黙って頷いた。真剣そのものの表情だ。
「コートと私は多分、魔術師を相手にすることになるわね。デュオ、あのファルスとかいう少年、大会に出るからにはやり手なんでしょう?」
「うん。ファルスはセイラムズ・ガーデンでもトップクラスの魔法経験を持っているよ。彼の『偽翔の双対』は、小さな岩くらいまでなら簡単に浮かせることができる」
コートが口をはさむ。
「でもまあ、詠唱させなけりゃ、こっちのもんなんだろう?」
「まあ、そうだね。もし闘う相手がコートなら、大丈夫だと思うけど」
「ちょっと、私だったら駄目ってこと?」
「いや、そういうことじゃなくて、ファルスは、魔法以外でも、なんていうのかな、ずるがしこいっていうか、戦略に長けているところがあるんだ。だから……油断はできない」
「そう」
『バイオレット・ラージュ』の、あともう一人の相手すらまだわかっていない。
マリーは深呼吸をして、静かに目を閉じた。
あたりは、選手達の怒号と歓声に満ちていた。




