全知全能と里回り
帰った僕は、流石に裏世界に赴いてまともなディーの紹介をしつつ里を回ることにした。
「……という訳でさ」
「ふぅん……そうなのね。あちこち歩きまわって、まともに話も出来ていなかったからどうしようかと思ってたのよ」
「そっか……皆には、迷惑をかけたね」
ディーにも、悪いことをしてしまった。一人で過ごすのが可哀想だからと裏世界の地球に連れて来たのは良かったけど、橋渡しが雑になり過ぎてその目的を解消することが出来なかった。
「ディーも、ごめんね」
「別に、構わない……」
今度、どこかご飯にでも連れて行ってあげよう。それで、お詫びしないとね。それに、今までの働きに報いることもしないといけない……別に、会社って訳でも無ければ雇用関係がある訳でも無いんだけど。
「それに、外を見て回るだけでも参考になることは多々あった。興味深い怪物や、それを狩る者達の魔術など」
「ん~、それなら良かったけど……」
とは言え、ずっとそのままにする訳にもいかないだろう。ディーがこの里で馴染めるように、教育も兼ねて挨拶回りもしていかなければならない。
「という訳で、僕は外を回って来るよ」
「私も付いていかなくて大丈夫かしら?」
「挨拶くらい大丈夫だよ。見た感じ、スイも忙しそうだし……」
スイの研究所、とでも呼ぶべき場所は素材や魔道具が散乱し、粗雑だが紙と呼べるようなものも幾つか見受けられた。
「こっちにも紙とかあるんだね。作れたんだ」
「智慧の神様から伝わった知識を形にしてるだけよ。元が貴方の知識だからか、あんまり詳しくは無くて困ったけど~?」
「不勉強で申し訳ない」
「ふふ、別に良いんだけどね。それに、急速に文明が発展し過ぎたって良いこと無いもの」
そういうもんかな。まぁ、そういうもんかもしれない。皆、身の程を知って生きていくことが最良なのだろう。それで言うと、全知全能の力を持った只人の僕はどのくらい身の程を知れば良いんだろうか。ギャップが凄すぎて、どこが身の程か見失うくらいだ。
「さ、行って来なさい。知っての通り、私は忙しいのよ」
「そうだね。行って来るよ」
僕は片手を上げて、スイの研究所を去るのだった。
そうして、少し歩いていると直ぐに木人の人に出会った。ペリキさん、桃色の長い髪が特徴的な、結構見た目では僕の好みな人だ。木人には珍しくものづくり系の人と言うか、直接戦闘に関わらないタイプの人であった。
とは言え、最近は木人が増えて来たからか森の管理という考えも深まっているようで、それを己の役割にする人も少なくないみたいだけど。
「こんにちは、ペリキさん。この子を里の皆に紹介する為に今、里を周ってて……」
「あ、そうなのね。ディーちゃん、だったかしら? それともディーくん?」
見た目は若いお姉さんなのに、喋り方が凄いおばちゃん感があって違和感が凄いんだよね。
「えっと、どっちでも……というか」
「我に性別は無い。私のことは、好きに呼べば良い」
「へえ、そうなのね……じゃあ、ディーちゃんって呼ばせて貰うわね?」
「あ、はい。一応はゴーレムなので色々と間違うこともあるかも知れませんが、良ければそういう所も教えて頂けたら……」
「うんうんっ」
僕が言うと、ペリキさんはぶんぶんと頷いた。
「私に任せておきなさいっ! 何でも教えて上げるわよ?」
「あ、はい……じゃあ、よろしくお願いします」
僕はそう言って、ディーにも頭を下げるように視線で促した。が、じっとこちらを見ているだけであった。
「ほら、ディーもほら!」
「……よろしく、頼む」
僕がそうして催促すると、やっとディーは僕と同じようにぺこりと頭を下げた。
「ふふっ、よろしくね~?」
「あぁ。迷惑をかけるとは思う、が……構わないのか?」
「全ッ然良いわよ~。子供なんて、皆最初はそういうものよ? 迷惑かけて育つのが仕事なんだからねぇ」
「……そういう、ものか」
ぽつりと呟いたディーに、ペリキさんはうんうんとまた頷いた。
「じゃあ、まだ周ってきますので……また、お願いしますね」
「はーい、またねぇ~」
目を細くして笑い、手を振るペリキさんに僕も手を振り返し、そしてディーにも手を振らせた。ちょっと不服気な表情をしていたが、仲良くなっておいて損はない。人間関係なんてちょっと調子よくコミュニケーションした方が良いのだ……友達が少ない僕が言うのも、アレだけど。
「……私は、子供ではない……と、思うのだが?」
「生まれたばっかりだから、子供みたいなもんだよ。それに、甘えられる分だけ得なんだから悪いことは無いし」
「……そういう、ものか?」
「そういうもんだよ、うん」
何しろ、子供と大人の狭間と言われる高校生の僕が言うんだから間違いない。




