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ある日、僕は全知全能になった。  作者: 暁月ライト


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全知全能と滲み出す炎

 事務所での話は纏まったが、結局は殆ど共有だけで終わった。ディーを名乗る人物には可能ならば接触し、手を取れるならば取りたいが、リスクを冒してまで過度に探す必要は無いって感じだ。


「……さて」


 ここからだ。どうなるかな。ディーの仕事によって殆ど壊滅してしまった敵対組織だけど、殺した訳じゃないからね。もしかすれば、心を砕かれても尚、悪の道を歩み続ける奴だって居るかも知れない。

 特に、人を人とも思わない、悪行を悪行とも思えないような奴は再びクソな生き方をし始めることだろう。そこら辺も、どうにかしたいって気持ちはあるけど……僕は、別に正義の味方でも無いし。


「考えられる、のは……」


 手駒を失ったマズヴァイだ。ここからは、選べる手は格段に減ることになる。それか、逆に今まで取る必要の無かった選択肢に手を伸ばすことになるか、だ。


 具体的には、ここから離れた場所からも増援を呼ぶことである。遠くの県の組織と手を組もうとするだとか、本国から救援を呼ぶだとか、そこら辺になるだろう。

 ただ、どちらにしても時間は多少なりともかかる筈だ。そうなれば、僕らの勝利条件であるタイムリミットは更に近付く。


 それか、今ある戦力だけで襲撃をかけてくることだって考えられる。その場合は、寧ろ高い確率で僕らが勝利を収めることが出来る。相手の魔術師だけは少し気がかりだけど、流石に相手の戦力の殆どを削った後での総力戦ともなれば、負ける理由は浮かばない。


「……でも、そうだね」


 残りの少しの敵対組織も、今日の夜の内に潰しておくべきかな。そうすれば、現存戦力で襲撃をかけて来る可能性も更に減るだろう。誤魔化しが効くように、敵対組織だけではない闇の組織も襲っておくべきかな。その方が、ディーにしても本意ではあるだろう。


「良し、夜の予定は決まったことだし……」


 帰ったら、先ずは裏世界に行ってディーを含めて向こうで色々と話をしておこう。向こうの人達に対するディーの説明に関しても、急ぎ足だったせいで不十分だっただろうしね。


 後は、ラクリオのゴーレム作りの手伝いもしないといけないね……竜との戦いへの備えとして、色々手伝うように約束を取り付けられてたからね。

 竜との戦いで言うならば、一応、ディーも竜との戦いで役に立ってくれるかも知れない。ただ、想定よりも術式による影響が大きいみたいだから……手を貸してくれない可能性というか、嫌がられる可能性も大いに有り得る。


「そうと決まれば、さっさと帰って……」


 僕が早足で地面を蹴った瞬間、目の前を赤い光弾が走り抜けていくのを見た。


「あぶな……」


 違う。まだ僕は危機の中だ。撃って来たのは、右側から……ッ!


「避けた、か」


 振り下ろされているのは、刃だった。五十センチ程度の刃は黒く染まり、光を返さない。だが、撃たれた直後に身体強化を掛けていた僕はそれを見切って避けることが出来た。


「なんか、やけに僕ばっかり狙われる気がするなぁ……!」


 皆が怪我しないから、別にそれで良いんだけどさ。


「それだけ、お前がいつも隙だらけで歩いているということだろう」


 黒刃を持つ男がそう返すと、刃を構え直した。気付けば、人払いの結界も張られている。しかし、そうか。僕が襲われやすいのは自業自得だったらしい。うん、当然だった。


「さて、死ね」


 もう、生かして捕らえるみたいな考えは一切残ってはいないらしい。それだけ、向こうも余裕が無いと言うことの表れであり……


「つまり、焦ってるって訳だ」


 僕は振り下ろされた刃を横に跳んで避け、男の足を蹴ろうとした。しかし、男もそれを躱して距離を取る。


「ッ」


 瞬間、再びの赤い光弾。速すぎるそれを回避することは間に合わなかったが、何とか動いた分で僕は頬を掠めるだけに被害を収めることに成功した。敵の射手の方角は分かっている。出来るだけ、その方角から見て横にブレるように動けばやりづらい筈だ。それに、ある程度高い位置からの狙撃……遮蔽を作れば、暫くは機能停止すると見た。


「あ、つい……?」


 そう考えていた僕の見通しは、甘かった。燃えているような熱さを、僕は呆然と感じ取っていた。視線を熱源である頬の傷に向ければ、そこには……赤々と燃え上がる炎が滲み出していた。


「ッ!」


 その隙を突いて、気配を消しながら迫っていた黒い刃の男。それに気付いた僕は振り向きながら男の懐に寧ろ入り込み、腹に膝を突き立てた。


「ふぅ、ハァ……ッ!!」


 熱い、アツイアツイあつい……ッ! 咄嗟に反撃できたのは成功だったけど熱い。アツイあつい、熱い……!


「ぐ、ぃ……ぁあああああああッ!!」


 頬を何度叩いても、魔術で手から水を出してみても消えない。いや、その度に消えてはいる。だけど、この炎は……傷の内側で、燃えていた。

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