全知全能と本気の作り方
先ずは接近戦? いや、違うね。実戦を想定するなら、接近戦なんてしてやる必要は無い。相手の得意に乗らないなんてのは、至極当然のことだ。
「食らえ」
ならば、やることは一つである。僕は地を蹴り、距離を取って、その腕をゴーレムへと伸ばした。
「『魔尖弾』」
放たれるは魔力の錐弾。魔法陣から飛び出したそれは、ゴーレムを狙って真っ直ぐに掛かるが、ゴーレムはそれを見極めて頭を横に逸らし、回避した。
「『魔尖弾』」
二発目も、避けられる。だが、無意味ではない。普通に撃ったって当たらないことは分かったが、当たりさえすればやはり、ダメージは与えられる……僕の必勝パターンは、身体強化で逃げ回りながらのコレか?
「……いや」
足りない。全然、そんなので足りやしない。このゴーレムも、それくらいで倒されてはくれないだろう。
「ッ!」
証拠に、魔力を帯びて突っ込んで来たその速度は超感覚を併用している僕からしても中々で、明らかに今の僕を超えていた。逃げ回りながら、一方的に弾を撃つことが出来るような相手じゃない。
「『圧衝波』」
ぱちりと手を叩くと同時にその合間に生まれた魔法陣から凄まじい圧力の波が放たれる。間近に迫ったゴーレムはそれを受け、数メートルと吹き飛ばされていた。
「『しがみつき、引き摺り落とす。魔力の泥』」
その隙にと向けられた僕の指先から、黒く染まった魔法陣が現れる。
「『魔力の泥沼』」
あっという間にゴーレムの足元の地面は黒く泥に落ち、吹き飛ばされたことで体勢を崩していたゴーレムはそれより先に抜け出すことが間に合わなかった。
「『飄風、颶風。首を垂れさせるは颪』」
緑に白の混じったような魔法陣が開き、僕は泥の中のゴーレムを睨んだ。魔力の泥は、ゴーレムに絡み付き、しがみつき、逃れようとするのを引き留める。
「『暴風殺』」
吹き荒れる暴風。それは泥から這い出ようとしていたゴーレムを打ち付けて、泥沼へと再び叩き落した。その風が止まぬ内に、僕はもう一度あの魔術を唱える。
「『魔尖弾』」
放たれた小さな弾丸が、ゴーレムの頭を遂に撃ち抜き、そこに小さな穴を開けた。
「良し……」
当たりはする。ダメージも入る。だが、向こう側まで貫通して行くような威力までは出せなかった。そうなれば、もっと重要な……つまるところ、核に弾丸をぶち込むか、それとも別の魔術で止めを刺す必要がある。
「ッ!!?」
泥沼の中で、魔力が爆ぜた。ギリギリまだ暴風が吹き荒れている中を、ゴーレムが飛び込んで来る。自身の内に蓄えられた魔力を、一瞬で何割か消費して爆発的な出力を実現したのだろう。僕が考えているように、向こうだって僕に勝とうとしている。当たり前だった。
「『風爆』」
咄嗟に、風を魔法陣から爆発的に溢れ出させてゴーレムを向こうへと吹き飛ばした。いや、吹き飛ばそうとした。しかし、ゴーレムはぐっとその場で堪えるとその腕を思い切り振り抜き、僕の胴体へと叩き付けようと……
「あっぶないッ!」
だけど、僕だって接近戦が出来ない訳じゃない。特に、超感覚さえあれば攻撃を捉えることは難しくない。
凄まじい勢いで振るわれ続ける腕を避け続け、時たま隙を突こうとする足払いを跳んで、しかし僕は距離を離すきっかけを掴めずに居た。
「……そう、だッ」
僕にはあるじゃないか。あったじゃないか。最も、僕の中で熟達した魔術の技が。
「出て、来いッ!」
突き抜くように出される腕を避けながら、僕は地面にさっと手をついた。
「……」
そこから現れるのは、僕の目の前の敵と同じ……ゴーレムであった。石畳が変じて生まれた石のゴーレムは、僕に迫る人間型のゴーレムに向かって掴みかかっていき、その動きを止めようとした。結果として、石畳製のゴーレムは一瞬にして砕け散り、直ぐに人間型も僕へと駆けて来た訳だが……その一瞬でも、僕にとっては十分だった。
「インスタントだ。でも、僕はこっちの方が得意だからね」
五体の石畳製のゴーレムが、僕を守るように立っている。炎の鎖は人には見せられないくらい強い力で、その上僕の実力で生み出せたって訳じゃないけど……この、ゴーレムの技に関しては少し強力だけど、僕の力だけのものだ。
ある程度なら、他人に見せたって問題無いラインの本気ではあるだろう。
「さぁ、まだまだ……!」
僕は魔力で多少強力に作り上げながら、石畳製のゴーレムを無数に作り上げていく。二十体程が人間型のゴーレムを取り囲んだ瞬間、僕は行動を切り替えて魔術を唱えた。
「『風切雷刃』」
風と雷で形成された刃が、凄まじい速度で空を駆け、轟音を響かせてゴーレムの胴体を真っ二つに切り裂いた。




