全知全能と本気の出し方
めでたくディーが完成した訳だけど、その力に頼る時以外は裏世界の方に置いておくことにした。天界では無く、裏世界の地球の方である。流石に、ディーくらいまともに喋れるゴーレムを天界に独りぼっちにしておくことは可哀想に思ったからだ。
それに、向こうで色々と学べることがあれば学んでくれたら良いなって考えもあるしね。ディーは成長性の高いゴーレムだ。知識を取り込むことも出来るし、魔術を覚えることも出来る。更には、自身の泥に相手を取り込んでその性質を真似ることも出来る。が、そこまで融通が利く訳では無い筈なので万能ではないが。
「……さて」
そんな訳で、今日は休みな訳である。そこで、僕は思っていることが一つあった。
「僕は、弱い」
弱いと言うと語弊があるか。正確に言うと、本気の出し方が分からない。いや、本気の戦い方が定まっていないと言う方が正しいだろうか。再展開を……もとい、天冥炎鎖はあまり他人に見せられるような魔術では無い。レティシアの前で見せてしまったのは、咄嗟のことで仕方なかったとは言え、少し失敗だったような気持ちもあるくらいだ。
だから、僕の中で全知全能に次ぐ最強の技である炎の鎖を封印した上での全力を、僕の中で定義しておく必要があると言う訳である。
それで、何故に僕の中で本気が定まっていない状態になっているかと言えば、選択肢が多過ぎることが原因だと思う。状況に合わせて戦い方を変えるのは当たり前だけど、フラットで何も情報が無い時のやり方が出来ていない。僕なりの必殺パターン、戦い方のようなものをやはり定めておきたい訳である。
「カモン」
天界の石畳の上に人型のゴーレムが現れる。細身をした石のゴーレムは、まるでボクサーのように構えて僕の方を睨んだ。
「……」
「ふッ」
殴り掛かって来るのを、僕は軽く回避してゴーレムの腹部に蹴り込んだ。魔力を籠めた蹴りは、ピシリと一撃でゴーレムに罅を入れて、石のゴーレムを一歩退かせた。
「しゃッ!」
そこに、僕は拳を思い切り叩き込み……ゴーレムの頭を砕いた。魔力を利用した攻撃とは言っても、僕の拳でこれだけの威力が出るなんて違和感が凄い。
「良し、取り敢えずウォーミングアップは終わり……」
ぱちり、僕は手を叩き、そこに完全なる人間型のゴーレムを作り出した。とは言っても、それは形だけで見た目は石のゴーレムである。但し、その強さはさっきまでのボクサー型とは隔絶しており……魔力を扱うことも可能で、素の性能自体も竜並みにある筈だ。勿論、あの黒龍のような強さはしていないけど。
「始めようか」
鋼鉄を超える硬度。電車より速い俊敏さ。そして、一撃で岩をも砕けるような力。陳腐な見た目とは反対に、全てを兼ね備えたゴーレムを前に僕は……先ず、身体強化の魔術を幾つか自分にかけた。
魔力の消費も考えると、覚えている限りの全てをかける訳にはいかない。安定的に使うなら、併用出来て三つくらいだろうか。それ以上は、状況に合わせて追加で身体強化を付与していくやり方を取っていくのが良いだろう。
「『流れよ、巡れ。血潮の如く』」
久し振りに、この魔術を詠唱付きで使うね。正直言って、無詠唱で使わないのは殆ど気分だけど。
「『血身魔躯』」
どちらかと言えば、これはエーテル体との結び付きが重要になる術なので、余りそっち方面を鍛えていない僕にはそこまで適性のある術じゃないんだけど、使いやすくて消費も軽いからかなり使っている。割と簡単だから無詠唱も容易だ。
「『砕けず、崩れず。劫餓の城塞』」
これは、ホントはもっと長い詠唱があるんだけど、いつもは無詠唱で使っている。詠唱込みで全力で使うと、効果はもっと高いんだけど、無詠唱でも最低限悪く無いし、詠唱込みで使うコスパを考えると無詠唱の方が現実的だ。
「『石肉鋼体』」
骨格、筋肉、皮膚と全てを魔力が高効率の術によって強化していく。耐久力を上昇させる効果が高い術だけど、これも魔力の消費が軽くて良い。というか、詠唱を長くする毎に寧ろ消費が重くなる。
「あ、そうだ。来て良いよ」
実戦で勝負と同時にかけられる強化はこのくらいだろうか。この二つは、いつもは無詠唱で使ってる魔術だからね。それに、必要に応じて魔力で直接強化するくらいだ。
「『超感覚』」
ゴーレムが踏み出し、その姿が一瞬で僕の前に現れた瞬間。僕の意識が超加速した。




