↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある日、僕は全知全能になった。  作者: 暁月ライト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

315/336

全知全能と無現の泥

 ディーの刃が、ぬらりと妖し気な光を帯びた。これは……素材に使ったカマキリのような魔物の力だ。触れた対象を軟化させ、全てを豆腐の如く切り裂く魔の力。


「これは……」


 益々斬られる訳にはいかない、なんてことを考えた僕を前にディーの体には更なる変化が巻き起こっていた。

 足の辺りに、いや体の各所に幾つもの縦の切れ込みが走り、また翼のような、いやヒレに近いようなものが生え、更に人の肉体から変化するように皮膚が、筋肉が、骨格が先鋭化し、どこか人間離れしたようなシャープなフォルムになった。


「斬って、やる」


 ディーの姿が、消えた。瞬間、僕の視界を白が覆った。霧、蜃気楼、これは……!


「『魔力爆発マナエクスプロージョン』」


 僕は、咄嗟に手を合わせて魔力の爆発を引き起こした。白霧に乗じて気配を消し、迫っていたディーは距離を離して爆発を避けた。同時に、霧も吹き飛ばされて視界が晴れる。


「また、増えた……!」


 そこには、再び二体となったディーの姿があった。片方は変化した肉体、片方は元の姿のまま。これは、そうか……僕の深緑地獄(グリーンヘル)を吸い尽くして自己複製の為の糧にしたのか。

 ディーだって、簡単に無制限に自分を増やせたりする訳なんて無い。それは、彼を作り上げた僕だから良く分かっている。


「……ぇ?」


 そう、思っていた。左右から迫る気配に後ろに跳ぶと、そこには二人のディーが居た。これで、合計が四人。いや、違う。まだ気配が一、二、三……駄目だ。


「……数え切れない」


 前後左右、四方八方。気付けば、ディーは数え切れない程に増殖していた。十や二十では利かない。だけど、有り得ない筈だ。こんな数の、複製……レプリとは違うんだ。レプリは単体としての性能を控えたから、アレだけの自己複製能力を得られたんだ。単体で特化した性能を持つディーがレプリ染みたような複製能力を持ってるのは、道理が通らない。


「…………いや」


 近付いて来ない。それに、良く見れば無数のディーは本体性能をそのままに複製された訳では無く……


「そういうことか」


 気付かれたことに気付いたか。一斉に襲い掛かって来たディー達、僕は魔力を刃に変えて四方八方に放ってみた。

 すると、無数の泥の体は魔力の刃に切り刻まれて原型を失い、その場に溶けて行く。やはり、そうだ。


「まんまと騙されかけたよ!」


 さっきの完全な複製を見たせいで、この大量のディーも同じタイプの複製かと誤認してしまった。けど、この粗雑な複製体とでも呼ぶべきタイプのディーは、能力で生み出した泥を下に作り出した見せかけの戦力だ。

 素の性能で言えば、レプリにすら大きく劣るだろう。しかし、その攪乱能力は厄介である。僕の超感覚のように、その正体を見破る術を何かしら持っていなければ、ずっと本体のディーと偽物のディーに惑わされることになる。


「『暗影纏い(ダークシャドウ)』」


 暗い闇をローブのように纏った僕は、更なる速度と耐久を得て偽物のディー達の中を駆け抜けた。それは泥の中を泳いでいるようなもので、彼らは僕にしつこく纏わりつこうとしたが、それでも僕は取り合わずに走り抜け……


「さぁ、勝負だ!」


 その先に待ち構えていた、異形のディーへと躍りかかった。刃と化している片腕を振るうディーに、僕は屈んでそれを避ける。


「悪手、だ」


 しかし、そこにディーは容赦なく蹴りを入れて……空振った。


「意外と、誤認するでしょ?」


「ッ!」


 闇の衣に覆われた僕は、魔力を揺らがせることで僕の位置そのものを正確に悟らせないことが出来る。蹴りが僕の横を掠めて行ったところで、僕はディーに拳を突き出した。


「ハァッ!!」


 魔力を籠めた拳。ウィーに習ったやり方で、僕は全力の一撃をディーの胸へと叩き込み……そして、竜の鱗で覆われたその胸に、あっさりと僕の拳は受け止められた。


「え、硬った……」


 呆然と呟いた僕の、首筋に刃がそっと添えられた。


「終わりで、良いな?」


「……はい」


 竜の鱗なんだ。それも、あの黒龍や黒緑色の竜なんかの素材を混ぜ合わせて再現された怪物の様な鱗だ。魔術に頼らなければ、そんなものを打ち破れる筈が無かった。勢いで拳に頼って殴り掛かったのが失敗だったみたいだ。


「まぁ、分かっちゃ居たよ。うん、分かってはいた」


 泥の体。無数の怪物の性質。それを併せ持つディーを倒すには、その圧倒的な再生力、耐久力、そして防御力。これらの全てを乗り越えなければならない訳だ。勿論、殺すまでやるつもりなんて一切無かったけど、ここまで勝ち目の無い戦いだとは思っていなかった。


「アレがないと、勝負にもならないかな……」


 黄金と紫の炎の鎖。あの魔術に頼らねば、僕がディーに勝つということはそもそも不可能だろう。全知全能には頼らないという前提を込みとするならば。


「でも、良いお試しにはなったね」


「……それには、賛同してお、く」


 ディーも自分の中の力を全く使いこなせている訳では無い。成長の為の良い一歩となったことを、願わせて貰おう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。