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ある日、僕は全知全能になった。  作者: 暁月ライト


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全知全能と竜人のゴーレム

 皆が耳を疑ったアシェームの言葉。しかしアシェームは撤回する気など全くない。


「軍隊……というには、些か数が足りていないように見えますが?」


「そうだな。今は、そうだろうよ。軍隊を名乗るにゃ、数は全く足りていない」


 ルーシェの言葉に、アシェームは一見賛同したかのように頷いた。


「だが、本質的には軍そのものだぜ。この……島の地下全体に広がる、菌糸のようなゴーレム。こいつは、やろうと思えば島そのものを兵隊に変えられる」


「地下全体に広がる、菌糸のゴーレム……?」


 ゴーレムという言葉には、余りにも似つかわしくない菌糸という存在に、そして地下全体に広がっているという現実味の無い言葉に、皆が首を傾げた。


「そうとしか言えねぇんですよ。こいつは。島の地下に根を張って、魔力と養分を吸収しながら活動している。まるでキノコみてぇに、細い根を張り巡らせて」


「……それで、そのキノコのゴーレムとやらは何をしてくれるんだ?」


 リガートの言葉に、アシェームはハッと笑った。


「何をしてくれる? 逆ですよ、こいつに出来ないことを探す方が難しいくらいには、こいつはゴーレムとしては万能の類いだ。根で得たエネルギーを地表付近に送り、核を作り出してそこから槍を突き出すことも出来れば、敵を捕まえることも、地面で壁を作って仲間を守ることも出来る。根を起点に大地と一体化出来る訳なんで、この島に居る限りは攻防一体、無敵の存在って訳なんでさぁ」


「……そんな存在が、我々の地下に?」


「そうさ。俺たちの足元に居るんだぜ? こいつが敵だったなら、俺たちも今頃は養分でしょうよ。あ、いや、ルーシェ様には流石に叶わないだろうが」


「……つまり、私でも守り切ることは難しい程の相手ということですか」


 アシェームの言葉をそう解釈したルーシェは、ふむと足元を見た。確かに、言われてみれば薄っすらとその気配が息づいている。気配を隠し、息を潜め、大地の中に埋もれているが、それでもルーシェには見えた。


 島の地下に悍ましいまでに広がる、菌糸状の怪物が。


「オポッサム。貴方は、とんでもないものを残していきましたね」


「えぇ、ホントですよ。ただ、魔族の侵攻から守る為には……このくらいやってもまだ足りないくらいってのがしょうがないですが」


「ですが、他にもゴーレムは居るのでしょう。彼らは、どのような能力を持っているのですか? 私は、特にアレが……竜人の如き、鎧のゴーレムが気になっていますが」


「……あのゴーレムは、正直分からねぇんです。菌糸のゴーレムは能力を見て性能を予測出来ましたがね、こいつは寧ろ……素の性能が高過ぎて、俺にも実際どの程度なのか予測が付きませんので」


 だが、それでも竜人のゴーレムに備えられた無数の強化用の術に関してはアシェームにも伝わっていた。


「ただ、こんだけの強化用の魔術が取り付けられてる以上……それに容易に耐えうる素体と、そしてこれらの強化を活かし切れる性能を持っているということは間違いねぇでしょうよ」


「……あの、丘です」


 ルーシェの短い言葉の意図を、誰も理解出来なかった。ルーシェが示した先にあるのは、小高い丘のようなものだった。だがしかし、それは真っ二つに叩き割れてしまっており、そこに続く地面までも深い亀裂が走っている。それは、見るもの皆に魔王軍との戦闘の熾烈さを思い知らせ……


「違います。貴方達が考えていることとは」


「……そういうこと、か」


 リガートが小さく声を上げた。竜人のゴーレムから滲み出る、無骨なる強者の気配。叩き割れた小高い丘は、その証明だった。


「つまり、まさか……」


「えぇ、その通りです。あの丘を叩き割ったのは、恐らく……いえ、確実にあのゴーレムです」


 魔力の深く染み込んだ大地は、ただの地面と比べても僅かに強度が増している。魔力を用いた斬撃を受ける上では、よりその差は顕著である。

 その大地に深い亀裂を入れ、丘を叩き割り、そして今は粉々となっているが巨大な岩をも砕いている。


「……あんな細っこいゴーレムの力かよ」


「細っこくは無かろう。お前よりは大きいぞ?」


「そりゃ、メイジの俺と比べりゃぁな……そうじゃなくて、力の強いゴーレムってのは大体は見上げる程に高くて、ガタイも巨漢ってくらいにはデカいもんだぜ。腕も足も太く作って、それが強いゴーレムってのが普通だろうが……」


「ふむ。しかし、秘められた力は……ただの巨躯のゴーレムなぞと、比べ物にならんじゃろう」


 白髪の老人の言葉に、アシェームは頷く。


「そりゃぁ、当然。あんな長くまで、それも奥深くに刻まれた亀裂……俺の腕じゃあ一年かけても作れねえよ」


「ふん、そりゃそうじゃろうが」


 自嘲するアシェームを鼻で笑う老人。その二人には目もくれず、ルーシェは竜人のゴーレムにその手で触れていた。


「……私に、似ていますね」


 竜鱗の内側。そこに秘められたものに、ルーシェは気付いていた。

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