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ある日、僕は全知全能になった。  作者: 暁月ライト


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全知全能と取引と契約

 輝くような銀色の髪に、黄金色の目。内側から溢れる存在感と合わせて、その美貌は正に歴史に名を遺す英雄に相応しいようなものに見えた。


「よし、僕も頑張らないと……」


 気合いを入れた僕を横目に、寧ろ女の人は溜息を吐いていた。


「……自分から死のうとする人間まで庇う趣味はありません。ここに残ると言うなら、覚悟を決めて下さい」


「勿論」


 僕は短く肯定し、そして手を伸ばした。すると、地面に無数の魔法陣が浮かび、そこからゴーレム達が召喚されていく。その数は八体。

 二メートル程の身長に、少し長い腕と大きな手。彼らのデザインで統一される部分は殆どそこだけである。そう、レプリだ。勿論、今作り出した訳では無く、元々用意していた物を呼び出しただけである。


「……退却することをお勧めしますが?」


 恐らく、レプリをサッと見てその強さを悟ったからだろう。実際、レプリは単体の強さではそこまで脅威とは成り得ない。本体の性能としてはそこまで高い訳では無く、攻撃力は基礎状態では大して高いとは言えない。戦闘に直接関与する特殊能力も、魔力と養分の吸収くらいなものだろう。


「残念だけど、断るよ」


 僕はレプリ達へと、自己複製の許可を出した。すると、彼らは直ぐに動き出して植物の塊のようなものをそこらに投げた。自己複製に必要な魔力には困らない。戦場であるこの地には、大量の死体と濃い魔力の残滓が残されているからだ。レプリの効率的な魔力吸収能力であれば、一瞬でコアの複製に必要な魔力は満たされるだろう。


「……なるほど」


 女の人が、一瞬剣を振るう腕を止めてその様を見た。さっきまでは八体しか居なかったレプリが、一瞬にして倍に、十六体へと増えていたからである。いや、それで終わりにはならない。ここから三十二体に、そして六十四体に……際限もなく、彼らは増え続けていくことになる。


「どうかな、僕も少しは手伝えそうだと思わない?」


「そういうこと、でしたか。如何様に戦うつもりかと疑問を抱いていましたが、そういったやり方であれば納得できます。ただ、単なる数だけでは……それにしても多いですが」


 そうして話している間に、レプリは僕らの周りを既に埋め尽くしていた。戦闘行動に関する許可はもう殆ど与えているから、合体してブレインやパワーへと化していく。合体レプリには余剰の魔力を利用して性能を向上させられるような改良もしておいたので、効率はそこまで良くないにしても戦闘能力の上限値も引き上げられはした筈だ。


「これで、雑魚は請け負うから少しは楽に……」


 仮面の下、にこりと笑いかけて僕がそう言った瞬間。凄まじい魔力の高まりが向こうの空から迫っていた。



「――――今すぐに、逃げて下さい」



 その気配を感じた次の瞬間には、それは僕の前に立っていた。黒みがかった肌をした、角と翼に尾の生えた筋骨隆々の男……魔族だった。


「ククッ! ……ルーシェ、まだ逃がせていない人間が居たのか? それともまさか、お前と並んで戦わせるつもりか? 何やら土塊を集めているようだが」


「……黙りなさい。貴方と話すことなど何もありません」


 ルーシェ、そう呼ばれた女の人は青い光の走る銀色の剣を構えて、その大柄の魔族へと斬りかかっていく。


「分からないか? オレの言っていることが……」


 大柄な魔族がその翼をはためかせながら大きく後ろに跳び、そして空中へと飛び上がる。


「空に逃げようと、逃がしは……ッ!」


「動くなよ、ルーシェ」


 僕の背後から沸き上がった影が、僕の体をよじ登っていた。


「……ぁ」


 体が、動かない。影に体を支配されているみたいだ。それでも何とか目線だけを動かして、出来るだけ後ろの方を向こうとすると、横に一人の男が立っているのが見えた。さっきの大柄な魔族とは違う、細身の魔族だった。燕尾服に身を包んだ、冷たい表情の若い男の姿をしている。


「さぁ、どうするッ! 仲間を見捨てて自らの命を助けるか!? それとも、自らを犠牲にそこの愚かな人間を助けるのか……元より、命は捨てるつもりでここに残ったのだろう? ならば、そうも変わるまい。ここで死んでおけ」


「……ッ」


 レプリ達が、燕尾服の魔族へと襲い掛かろうとする。だが、ルーシェの動きが止まったことによって自由になった魔物達に阻まれる。


「そうだ、取引と行こう。ここで潔く命を捨てると言うならば、軍を暫くここに待機させて島の人間共が逃げたのを見届けてからお前を殺してやろう。勿論、そこの男も見逃してやる。契約だ。ほら、契約するぞ……!」


「……それ、ならば……」


 勿論、そんなことを許す筈も無い。


「再展開」


 僕の左右に黄金色の魔法陣と黒紫色の魔法陣が花開き、そこから伸びた同じ色の炎の鎖が僕を守るように漂っていた。


「ッ!? 馬鹿な、どうやって……魔力も使えない筈だ」


「どうもこうも無いよ。種も仕掛けも無いんだよ」


 隣に立った男の言葉に、僕は投げやりにそう返した。本当のところを言えば勿論、全知全能の力を使った訳だが。


「誰だ、お前は……ッ!」


「おさ……」


 違う。この格好の時、なんて名乗ってたんだっけ。


「あ、オポッサムだ」


「ア=オポッサム……!!」


 うん。なんか、ちょっと違うかも知れない。

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