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ある日、僕は全知全能になった。  作者: 暁月ライト


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全知全能と杖の等級

 レイサスさんに呆れられてしまった僕だが、その技術に関しては興味を持ってもらえたようで、色々と話を聞かれていた。


「そうそう、要らなくなった分を戻す時は環境に配慮してちゃんとコアもボディも大地に還せるようにしてあるからね。凄いエコなんだよ」


「それは、まぁ、立派なことだが……そういえば、お前は杖の等級はいくつだ?」


 杖の等級?


「いや、見ての通り杖は持ってないけど……」


「違う、そうではなく……いや、そうだ。何故杖も持っていないんだ貴様は。幾らゴーレム使いとは言え、メイジであるなら杖は要るだろう。特に、こんなところを歩く以上は」


「あ、杖は無いんだけど、これが杖代わり何だよ。こっちに関しては、ちょっと秘密も多いからあんまり見せないけどね」


 そう言って、僕は指に嵌めていた黄金の指輪をちらりと見せてあげた。勿論、嘘ではあるんだけどずっと使っている話だから半分本当のようなものだ。いや、そんなことないか。


「なるほど? 指輪の魔道具を杖代わりに……聞いたことは無いが、不可能という訳でも無い、か……それに、あの非常識なゴーレムに比べればおかしな話でも無いな」


「非常識なゴーレムって」


 失礼な奴である。というか、地味に偉そうなんだよね、この人。もしかしたら、偉い人なのかな。だったら、しれっと敬語を解いてるの不味いかも知れない。でも、指摘されてないし良いか。


「アレが非常識で無ければ何なんだ……? 主の魔力を元手とせずに自己複製して、そしてお互いに思考と情報を共有し合い、効率的に敵を追い詰める。戦闘においても融合体によって有利に立ち回ることが可能で、単なる雑兵の群れで終わりでも無い……おまけに、環境にも配慮してある」


 あ、そこも入れてくれるんだ。


「私は、生まれてこの方魔術に人生を捧げて来たという自信があるが、そんなゴーレムは聞いたことも見たことも無い」


「僕も他に見たことも聞いたことも無いね」


「そうだろうが」


 口調が荒くなってますよ、レイサスさん。


「何をしたらそんな発想に……いや、どうすればそんな発想を実現できる?」


「コアを複製して、それをそこら辺の地面で覆ったらお上がりよ」


「舐めるなよ、魔術を」


「ひぃ」


 ぎろりと睨まれた僕はすくみ上り、近くのレプリを盾にした。


「やめろ、そいつを盾にするな。この状況でそれに囲まれて袋叩きなど、考えるだけで怖気が走る」


「そんなことしないよ」


「安心しろ。しようとすれば、即座に貴様の心臓を魔術で撃ち抜いてやる。このゴーレム達が動き出すよりも早くな」


 おっかないなぁ。実際、この人なら出来るんだろうけどさ。魔術の腕前も、僕よりずっと高そうに見えるし。さっきの魔術も凄かった。それに、状況に合わせて魔術をポンポン使えるなんて、どれだけ多くの魔術を習得しているのだろうか。さっきの魔術に人生を捧げて来たというのも嘘では無いんだろう。


「それで、お前の杖の等級は何なんだ」


「それなんだけどさ……杖の等級って、何?」


 僕が言うと、レイサスは眉を顰めた。


「貴様、本気で言っているのか?」


「え、うん。知らないけど」


「なるほど、少なくともティッシア皇国の生まれではない訳だな……」


 何だっけそれ、聞いたことあるんだけど。


「杖の等級というのは俗称だ。メイジの階級のことをそう呼んでいる」


「メイジの階級?」


「そうだ。ウィザードかマグスかに関わらず、承認を受けたメイジはティッシア皇国において階級を定められる」


「へぇ……あ、紫杖のメイジとか言ってたのはそれだ」


 僕の言葉に、レイサスは頷いた。


「メイジの階級は赤杖、青杖、黄杖、緑杖、紫杖、白杖、灰杖、黒杖の順になり、赤が最も未熟で黒が最も優秀であることを示す。基本的には、メイジとして活動する上では自身の階級と同じ色であるローブを身に纏うことになる」


「ふーん……」


 冠位十二階みたいな感じか。アレは逆に、黒が一番下だった気がするけど。


「にしても、レイサスで紫杖なんだ。ティッシア皇国のメイジは随分レベルが高そうだね」


「当たり前だろう。ティッシアは国民の大半が魔術教育を受けることになる。どの国よりもレベルが高い魔術を使えるのは当然のことだ」


「え、魔術が義務教育なの? 確かに、それは進んでそうだね……」


「義務教育? というのは分からんが、基本的に余程余裕のない国民以外は幼少期に魔術の教育を受ける仕組みがある。別に、義務という訳ではない筈だが」


 あ、そうなんだ。飽くまで子供なら無料で魔術学べますよ~、的なシステムってことかな。学校があるのかは分からないけど、ただ家の仕事なんかを手伝わなければ食い扶持にも困るような子供にはそういうのを学ぶ余裕も無いということだろう。力なきもの程、力を手にする機会に恵まれないというのは残酷な現実だ。


「それに、一応言っておくが紫杖というのは十分に尊敬を得るに値する階級だ。黒杖は魔術戦闘における国の最高組織に属する者とそのままイコールであり、灰杖はその組織に属することを選ばなかったものを意味する。つまり、紫杖は実質的には上から三つ目の階級であると言っても良いのだ」


 魔術戦闘における最高組織……自衛隊の特殊作戦群的なサムシングだろうか。そして、灰杖がそこに属しないだけで同じ実力を持つメイジのこと。だとすれば、紫杖は確かにエリートと言っても差し支えない階級であると言えるかも知れない。


「紫杖は国のメイジの中でも上位数パーセントの実力者だ。お前がどうしてここに居るのかは知らないが、ティッシア皇国で階級の高いメイジのことを舐めていると痛い目を見ることになるぞ」


「分かったよ。気を付ける」


 僕は頷き、素直に受け止めておいた。


「……それと、助かった。別に、私一人でも討伐は可能だったがな」


「あはは、どういたしまして」


 確かに、時間はかかりそうでも一人で倒すことは出来ていそうに見えた。それにしても、もうちょっと素直でも良いんだけど。

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