全知全能と初対面の協力戦
レイサスの時間稼ぎによって、レプリ達は自己複製の猶予を得て……僕らは、相当の有利を手にすることになった。レイサスの言う通り、無限の盾を得た訳だ。
「だが……さっきの魔術で、こちらに注意が向いたようだな」
「うん」
自身に群がって来る無限のゴーレム達よりも、遠距離から的確に妨害を決めて来たレイサスの方が厄介な存在だと認識したのか、土竜はこちらの方を向いていた。
「襲って来ますね」
「防いでおけ」
簡単に言うなぁ。まぁ、出来ないって訳でも無いんだけどさ。
(パワーを何体か作って。メインの攻撃はこっちでやるから、相手の動きの妨害と、身を挺してでも攻撃を防いで)
思念を送り付けて命令すると、レプリ達は直ぐにその通りに動き出す。土竜を取り囲んでいたレプリ達の半分程度が融合して一気に五体程のパワーに変化し、そして土竜の動きを抑え付けんと迫った。
「チィーーーーッ!!」
甲高い叫び声を上げた土竜はパワーを振りほどこうと藻掻くが、寧ろその数を増やすパワーに抵抗は無駄と悟り、土石の楔を操って宙に浮かべ、それをレイサスの方へと放とうとした。
「チィッ!?」
だが、樹状から飛び出したレプリ達がその土石の楔へと乗りかかり、楔へと自らの魔力を流し込むことでそれを妨害した。術を乱された土石の楔は力を失って地に落ち、その間にも詠唱していたレイサスは杖の先をすらりと土竜に向けた。
「『掠知探閾』」
魔力が駆け抜けていく。波のようなそれは、土竜の全身を探査するように通り抜けて行き……そして、レイサスは何かを見つけたかのように目を細めた。
「そのまま、土竜を抑え付けていろ」
「あ、うん」
頷いた僕は、レイサスの言う通りにレプリ達に土竜を抑え付けさせておいた。パワーの数も増えて来た今では、殆ど動けないように拘束することも可能であった。
「チィィ…………ッ!!」
ただ、そろそろ土竜があの大地を操る魔術でレプリ達を引き剥がそうとする気がしている。地面ごとひっくり返ったりすれば、幾らパワーと化しているレプリとは言え、拘束を続けるのは難しいだろう。
「『穿たれよ、死を以って償え』」
そんな中、レイサスの構えた杖の先に紫色の魔力が集って行く。それは濃密に圧縮されるように、輝きを増している。
「『尖魂刑』」
紫色の魔力がどろりと黒色に染まって、液体のように蠢くそれは針のような形を取り、そして土竜へと放たれた。その目には、僕には見えていないものが見ているかのように……的確に、どす黒い針は土竜を貫いた。
「チィイイイーーーーーーーッッッ!!?」
今までで最も大きい悲鳴を上げた土竜に、レイサスは冷たい表情で杖を降ろした。
「やはり、予想通りだったな」
「えっと、何がですか?」
僕の問いに、レイサスは地面に倒れ、その力を失っていく土竜を顎で指した。
「あの鱗に魔力妨害を受けない速度での攻撃なら、そしてあの鱗を物理的に無視できる攻撃であれば……攻略は可能という訳だ」
「あー、そういう……」
今の魔術は、魂を狙うような魔術だった。それで、物理的に干渉しない術式だから鱗に止められることなく、そして通り過ぎる時もその速度によって妨害による影響を最小限にとどめることが出来たという訳だろう。
「……しかし、私の魔術などどうでも良い」
「そうですね。今は、取り敢えずあの土竜が死んだかどうか……」
「違う」
僕の言葉を、レイサスは遮って答えた。
「アレは、もう死んでいる。今は、肉体の反射的な反応で動きを見せているというだけだ。もう、声も出していないだろう」
「あ、本当だ」
流石は紫杖の魔術士かなんかだ。多分、凄いんだろう。あの一撃で簡単にこのデカブツを倒してしまうとは。
「それよりも、私が聞きたいのは……お前のゴーレムについてだ」
「レプリですか?」
「名前は知らんが、あの増える奴らのことだ」
「レプリですね」
僕が頷くと、レイサスは何故かうんざりしたような表情をした。
「……その、ゴーレムについて聞きたいのだが、良いか?」
「うん、良いですけど」
あっさりと頷いた僕に、レイサスは眉を顰める。
「先に言っておくが、答えられないことは、答えられないでも良い」
「まぁ、答えられることなら答えますよ」
あれ、良く考えたらこれ同じこと言ってるね。
「あのゴーレム達は……貴様が作ったものか?」
「うん」
「……師は居るか? 構わなければ、名前も聞いておきたいが」
「ラクリオ。多分、言っても分からないだろうけど」
だって、世界が違うからね。知ってる筈がない。
「確かに、知らんな……」
「まぁでも、このゴーレムに関しては割と独力で作ったよ。一応、ああやって融合して一部の性能を特化させるようなシステムもあったりするんだけど、今はちょっと性能不足感が否めないよね。僕の想定としては、割と万能なゴーレムを目指してたんだけど……結局、限界を感じるというかなんというか。いっそ、コアだけじゃなくて全体を生体組織にして融合の自由度なんかを上げた方が良かったかなって思ってるよ」
ただ、それが出来るのは魔力が豊富な異世界とかだけになるだろうし……なんて、考えている僕の前でレイサスは怪訝な表情を浮かべていた。
「貴様、本当にメイジか」
「へ?」
「そんなにベラベラと自分の術を明かすメイジなど、普通は居ないぞ」
「いや、だってまぁ、聞かれたし……ねぇ?」
僕がそう返すと、レイサスは困ったような顔をして溜息を吐いた。




