全知全能とブレイン
二つに増えたレプリ。元の方、というかオリジナルの方は石で覆われたボディになっており、複製された方は土のボディになっている。が、どちらでも別に問題は起こらない。まぁ、コアが植物だから土の体だとちょっと簡単にコアを壊される危険性があるくらいのものだ。
しかし、それも大きな問題にはならない。確かに、石の体をしている方のレプリが本物というかオリジナルではあるのだが、こちらが破壊されて複製された方のレプリが残っても、その機能的には一切オリジナルのレプリと変わりはしない。つまり、本体と言えるような概念が無いので一体さえ残れば何体壊されたって最終的には構いはしないのだ。
「念の為、もうちょっと増えておこうか。ここら辺の魔物は、イアビラ辺りと変わらないくらい強いみたいだし」
僕はそう言って、レプリに自己複製の指示を出した。レプリ達はその指示に従って、周辺の魔力を吸収してからコアを作り出し、そのコアを地面に投げて新たな自分を複製していく。倍々で増えていく彼らは、少し放っておくとあっという間に三十体程に増えていた。
「一分と経たずにこのくらいの数になれるのは良いね」
まぁ、課題と言うか問題点として、最初の自己複製が最も難易度が高いという部分がある。最初の一体の間に破壊されると、当然複製も出来ずに終わってしまうという訳である。レプリは、他のゴーレムと比べると単体の性能はかなり低くなっているからね。と言っても、流石にインスタントのゴーレムよりはちゃんと強くなっているけど。
「よし、行こう……か、って思ったけど、向こうから来てくれたみたいだね」
僕はにじり寄って来た気配に視線を向け、その正体を確かめた。そこに居たのは、光を反射しない凶悪な黒い牙が覗く、白と黒の斑模様をした豹のような姿の生き物だった。しかし、その大きさは単なる豹のそれではなく、僕の知る豹よりも一回り程大きいくらいである。
「知らない魔物だね……でも、そこまでヤバそうって感じでもしないか」
前に戦ったあの過去の魔術士の負の遺産の熊みたいな奴と比べると、全くヤバそうな気配はしない。何だっけ、あの熊。ブランブルベアか。
「レプリ。皆、好きに戦って良いよ。一応、標的は……アレだけね」
僕があの黒い牙の豹を指差すと、一斉にレプリ達は動き始めた。彼らには、特殊なシステムというか機能として、彼らだけのネットワークのようなものが存在している。彼らが戦う上で、連携力を高める為に彼ら同士で常に情報を交換し合い、まるで一つの生命体のように戦っているのだ。
「グルルルル……ッ!」
僕を獲物として狙っているようだったが、目の前に立ち塞がった数体のゴーレムを前に豹は唸り声を上げる。そして、最も近い正面のレプリに迷うことなく噛みつきに行った。
「ガ、ァッ!?」
跳躍と共に届いたその牙は、完全にレプリの頭を砕いたが……そこは、飽くまでもブラフだ。感覚系の機能はあっても、コアではない。頭を失ったレプリだが、他のレプリの視野で豹の位置は完全に確認出来ている。伸ばした両腕が豹の体を掴み、地面に押し伏せようとする。
「グルアァッ!!」
が、豹の体から白いオーラのようなものが滲み出すと、その体を掴んでいたレプリは弾き飛ばされてしまった。
「グルルルル……ッ!」
今度は深く警戒するように周囲に集まって来た五体ほどのゴーレムを睨み付ける豹だったが……その間にも、レプリは戦闘を有利に進める準備を進めていた。
「お、出来たかな」
三十体程のレプリが居た中で、十二体のレプリが集合して一つの塊と化していた。それは、人型ではなく完全に球体を取り、内部から伸びた無数の蔦や根のようなものが木々に絡み付き、地中に広がっていく。それは己をそこに固定する為のものでもあり、そしてエネルギーを吸収する為の機能でもあった。
「ブレインだ」
その名の通り、脳を意味する形態……それが、このレプリの集合体であるブレインだ。この形態になると、他のレプリ達の行動の全てを統制し、戦略的な思考を持つ司令官と化す。一応は複製も可能で、周りから取って来たエネルギーで単体の時よりも速く自己複製することが出来る。
ただ、単体と比べた時にコアの生成が速いだけであり、同じ数のレプリがそれぞれ自己複製した場合の方が圧倒的に速くはある。一応、周囲に自分を守る個体が減っている時の緊急措置用的なものとしての機能だ。
「良いね……あの魔物も割と強かったみたいだけど、結構詰みかな」
白いオーラを滲み出させてから、三体のレプリを倒したようだった豹の魔物だが、その間にも余っている十体以上のレプリは常に自己複製を続けている。魔力に富んだ異世界であれば、地中の魔力や木々の魔力から引っ張って来るだけで簡単に自己複製が出来るみたいだ。もしかしなくても、地球で運用するより異世界で使った方が強いかなぁ、これは。
「まぁでも、悪くない」
良いデータは取れたよ。なんて、マッドサイエンティストの悪役みたいだね。




