全知全能とレプリケーション
そうして、ゴーレム作りを本格的に始めた僕だったが、元の構想からは僅かに……いや、結構変わっていた。元々は単なる石をコアにして、そこら辺の石にでもコアの術式を転写することでコアを複製するようなやり方を想定していたんだけど、石を態々拾ってコアにするってなると効率が悪いし、そもそも石ころがいつでも転がっているとは限らない。
色々試したけど、流石にコンクリートやらアスファルトやらを千切ってコアにするというのはちょっと無理がある感じだった。だから、僕は方針を転換し、コアを生体素材……もとい、植物を元に形成することにした。植物を利用したコアは色々と面倒も多いけど、ラクリオから習った内容を活かせば全然作ることは可能だった。何より、コアの複製をゴーレムの体内で効率良く行えるというのが素晴らしかった。転写に関しても同型の同素材だからか、普通よりも速く行えるという利点もあった。
「よしよし、良い感じだぞ~」
僕は半ば完成したゴーレムを前に、一息を吐いた。この裏世界の天界という場所は、正に宇宙の外側とでも呼べるような空間であり、どこまでも続く石畳の床と、それを半球状に覆っているようにも見える宇宙が広がるプラネタリウムじみた空間なのだ。地球との違いはよりその宇宙がくっきりはっきりと見えるということで、無重力空間では無いけど、宇宙のただ中に居るような不思議な感覚に陥るのである。
「よいしょ、っと」
つまり、何が言いたいかというと……景色が素晴らしくて、ココアが美味しいということである。ちょっとのチョコレートとココアを頂きながら、僕はこの満天の宇宙を見上げてゴーレムの構想だのを練っていく訳である。
いやぁ、この大宇宙の前では全ての悩みも些細なことに思えてしまうよね。まぁ、この宇宙は僕が作ったんだけど。
「ある程度コアは出来たし、後はボディだけど……結局、ボディ側の術式も転写できるようにコアに組み込まなきゃいけないのが大変だなぁ」
地面にでも潜って、丸ごとポンと地面に転写できたら楽なんだけど、流石にそこまで簡単な話ではない。やはり、転写はコアを軸に行わなければ難しいのだ。
となれば、やっぱりボディ側は割と単純な構造にしてあまり機能を盛り込まない方が良さそうである。というか、術式自体も無い仕様にした方が良さそうだ。身体強化もコアを起点に行うのみに留めて、シンプルな設計にしよう。
「ま、初号機だからね……」
ここから改良を重ねて行くということも有り得るんだから、色々と要素を練り込み過ぎて複雑にするのも良くないだろう。何より、それをやって僕がこのゴーレムを今日中に完成させることは殆ど不可能である。
「程々にしとこうか」
僕はココアをちびちびと飲んで、星空の下のゴーレムを睨んでいた。
♢
そういう訳で、めでたくゴーレムは完成したのである。今は、そのお試しの為に異世界にやって来ているところであった。と言っても、僕がいつも居るようなイアビラの街では無く、そこからずっと離れた地域である。
今日はゴーレムの実験だからね、イアビラの人達……というか、僕を知ってる人たちにはあんまり見られたくないのだ。一応、イアビラで僕は星導の剣として順当にキャリアを積み上げている最中だからね。あんまり凄い力を見せて一足飛びになってしまうのは好ましくない。
「さぁ、行くのだ……名前決めて無かったね」
僕はどこかも良く知らない森の中で、召喚したゴーレムの隣で顎に手を当てた。そういえば、名前を決めていなかった。何にしようかな、名前。
「レプリ、とかで良いかな」
なんか、複製するのをレプリケーターとか言うよね、うろ覚えだけど。
「さぁ、行くのだ……レプリ、その身でこの大地を満たせ。魔のモノを殲滅せよ」
厨二的なセリフを言いながら、僕は流れるように仮面を身に付けてマントを纏った。これで、完全体厨二病の出来上がりである。問題は、実際に力を持ってしまっていることであるが。
「お、良いね。行けそうかな?」
早速空気中に漂う魔力、そして地中からのエネルギーを吸い込んだレプリは、そこで硬直して……その体から、緑色の球体のようなものがボトリと落ちて来るのが見えた。ぬめっとした液体に濡れたそれは、どこか植物で出来た心臓のようにも見えた。
「おぉ、おぉ……!」
そして、その複製された植物のコアから蔦のようなものが伸びて、大地に根差していく。それは周辺の地面を支配すると、己の体として自身に引き寄せて、人の形が現れ始めた。
「これで、複製完了ね」
コアの作成に要する時間がおよそ五秒。だけど、動きながらだと十秒程度はかかってしまうかも知れない。そして、コアを複製してからそのコアが人型に成長するまでにかかった時間がおよそ七秒……うーん、想定よりはちょっと遅いな。
「調整は色々必要かもだけど……動作は間違いなくするってことは分かったし、無問題かな」
後は、調整する前に少し実戦形式で試させて貰うとしよう。その為に、遥々ここにやって来た訳だからね。




